関典子、素我螺部により舞台上の舞台で踊られた個性的なダンス
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掲載
ワールドレポート/大阪・名古屋
- すずな あつこ
- text by Atsuko Suzuna
神戸文化ホール「STAGE ON STAGE ♯1」
『瀕死の白鳥』関典子:振付、『鞄女』サイトウマコト&関典子:振付、『Black Tomato』今津雅晴:振付、『SELL OUR BODY 2』素我螺部(SCARABE):作
公共ホール主催のダンス公演はまだまだ少ないが、今回、神戸文化ホール主催でオリジナリティ溢れる公演が実現した。出演したのは2グループで、前半は関典子、後半は素我螺部(SCARABE)。神戸文化ホール中ホールの舞台上に舞台と客席を設け、普段とは違った角度からダンスを観る試みだ。
まず、先に登場したのは関典子で、濃密な3作品を立て続けに踊った。『瀕死の白鳥』は、あのサン・サーンスの曲に関がオリジナル振付したもの。4月末に兵庫県立芸術文化センターで、薄井憲二バレエ・コレクション『瀕死の白鳥』舞踊譜展の関連企画として、ロビーでパフォーマンスが行われた際に初演された作品。黒い布一枚のような衣裳の関が柔らかさと緊張感を使い分け、緩急を持って踊る。"死"が、向こうの世界に行く喜びに見えるのが印象深い。
『瀕死の白鳥』関典子
撮影:山下一夫(すべて)
続いてはサイトウマコトとの『鞄女』。さえない男がぞんざいに扱う鞄から手が出て、足が出て......、背徳感が漂う、一度観たら頭から離れない作品、食い入るように観てしまった。毎回、場所や状況によって演出が少しずつ変わるのだが、今回は観客のいない本来の客席も使っての上演。関の最後は、今津雅晴振付、富士山アネットの長谷川寧監修の『Black Tomato』。電球の明かりがつくる影を効果的に見せながらの集中度のとても高いダンスだった。
『鞄女』関典子
『鞄女』サイトウマコト、関典子
『Black Tomato』関典子
『Black Tomato』関典子
後半の素我螺部(SCARABE)は、Noismで活躍した藤井泉、宮原由紀夫、篠原未起子や、堤悠輔、平間文朗、斉藤綾子などのダンサーと、ミュージシャン・原大介によるダンスグループ。
上演された『SELL OUR BODY 2』は、「ホントにこの人たちカラダ売ってるわ?と、思わずつぶやいてしまう作品だった。もちろん、"カラダ売っている"というのは俗語的な意味ではなく、理想でいえばダンサーみんなそうであるべきともいえるのだけど、ちゃんと身体を、考え得る限りのさまざまな方向から精一杯に使って、と言えばいいのか。舞台機構、映像、照明、音楽、言葉、あらゆるものを駆使した何でもありと思えるメチャクチャ感も楽しい作品。そして、関西らしい笑いのセンスもなかなか良い感じ。篠原が子どもとともに出演というのも、上手く活かされた構成だった。
関も素我螺部も、"表現する意欲"が溢れているように感じられ、「さすが!」と思いながら帰途についた。
(2015年11月17日 神戸文化ホール)
『SELL OUR BODY 2』素我螺部(SCARABE)
撮影:山下一夫
『SELL OUR BODY 2』素我螺部(SCARABE)
『SELL OUR BODY 2』素我螺部(SCARABE)
『SELL OUR BODY 2』素我螺部(SCARABE)
撮影:山下一夫(すべて)