第31回こうべ全国洋舞コンクール」速報

ワールドレポート/大阪・名古屋

すずな あつこ text by Atsuko Suzuna

31回目を迎えた「こうべ全国洋舞コンクール」が5月3日から6日まで、神戸文化ホール大ホール、中ホールで行われた。バレエコンクールが関西にはなかった時代、全国でも片手で数えられるほどしかなかった時代に誕生したコンクールだ。今回、審査と昨年1位&優秀賞のエキジビジョンが終わった後、表彰式の前に、第1回〜30回の1位受賞者の映像が映し出された。今、海外で活躍するダンサーたち、日本の主要バレエ団で活躍するダンサーたちはもちろん、指導者として、今回の出場者含め優秀な後進を育てている方々などが次々と。あらためて、日本のトップの多くが通過してきたコンクールなのだと実感した(同時に、私自身、初期の頃に観客として観て、第14回からは毎年欠かさず取材させていただいていることをあらためて。30年の歴史のうち、半分以上は取材させていただいているのかと感慨深かった)。
そんな今回の新たなことは、クラシックバレエ部門女性ジュニアとモダンダンス部門ジュニアに、従来の1部、2部に加えて3部が新設されたこと。年齢の区分けを変更した形で、クラシック・バレエ女性では、10歳〜11歳をジュニア3部(小学生)、12歳〜14歳をジュニア2部(中学生、15歳〜17歳をジュニア1部、それ以上で30歳までをシニアとした。モダンダンス部門は、3部に8歳から出場できるのと、シニアの年齢に上限がないこと以外は同様の区分けだ。

そして今回も、やはりレベルの高い闘いが繰り広げられた。
新たなクラシックバレエ部門女性ジュニア3部1位は福山麗(創美バレエスクール)。『ドン・キホーテ』よりドルシネアのヴァリエーションを踊った。音の取り方が心地よい踊り、成長を期待したい。クラシックバレエ部門女性ジュニア2部1位は、中村一葉(橋本幸代バレエスクール)。『エスメラルダ』よりヴァリエーションを踊った。中学生、14歳ながら167cmの長身だ。脚が長く、迫力のある踊り。同じバレエスクール出身の先輩にやはり長身の、映画でも話題になったノルウェー国立バレエ団プリンシパル・西野麻衣子がいるが、先輩に続いての海外での活躍を目標にしている。

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クラシックバレエ部門女性ジュニア3部1位
福山麗(創美バレエスクール)
「ドン・キホーテ」よりドルシネアのヴァリエーション

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クラシックバレエ部門女性ジュニア2部1位
中村一葉(橋本幸代バレエスクール)
「エスメラルダ」よりヴァリエーション

 クラシック・バレエ部門男性ジュニア2部1位は、石川瑛也(スコレーバレエアート)。『パキータ』よりヴァリエーションを踊った。美しい脚での多回転、気持ちの良い伸びやかな踊りだった。このコンクールの第15回のシニア男性で1位になり活躍する末松大輔の元で学ぶ。13歳、同じ教室の後輩に男性が10人いるという。良い男性ダンサーが男の子たちを指導。女の子がほとんどのバレエ教室が多いけれど、今、そんな風に先生も生徒も男性が増えているのは喜ばしいこと。練習の時より笑顔で表現できたという。「末松先生が憧れ」と、表現も技術も一歩一歩、前進を目指す。

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クラシックバレエ部門男性ジュニア2部1位
石川瑛也(スコレーバレエアート)
「パキータ」よりヴァリエーション

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クラシックバレエ部門女性ジュニア1部1位
徳彩也子(地主薫バレエ団/地主薫エコール・ド・バレエ)
「ワルプルギスの夜」よりヴァリエーション

 そして、クラシックバレエ部門女性ジュニア1部1位は徳彩也子(地主薫バレエ団/地主薫エコール・ド・バレエ)、『ワルプルギスの夜』よりヴァリエーションを踊った。恵まれた長い手脚を活かした表現力豊かな大きな踊り。ノビノビとしてこの演目全体を眼に浮かばせるやんちゃな雰囲気が出たのも魅力。「辛いことがあるお客様も楽しい気持ちになることができるような踊りをしたい」という彼女。これからがとても楽しみだ。クラシックバレエ部門男性ジュニア1部1位は田中陣之介(バレエスタジオ ハイリリィ)。『タリスマン』よりヴァリエーションを踊った。妹のバレエの発表会で青木崇の踊りを観て感動し、小学校3年生でバレエを始めた。動き全体が大きく伸び伸びとして清々しい。17歳、世界での活躍を目指し、「また、観たいと思ってもらえるダンサーになりたい」。

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クラシックバレエ部門男性ジュニア1部1位
田中陣之介(バレエスタジオ ハイリリィ)
「タリスマン」よりヴァリエーション

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クラシックバレエ部門女性シニア1位
名村空(貞松・浜田バレエ団・バレエ学園)
「ジゼル」のヴァリエーション

 クラシックバレエ部門女性シニア1位は、『ジゼル』のヴァリエーションを踊った名村空(貞松・浜田バレエ団)。自然な演技で、全幕の風景が眼に浮かぶようだった。バレエ団の先輩・川﨑麻衣が同じジゼルで第21回に19歳で1位。憧れて、この演目で出場し、今年、20歳で同じ1位に。「お客様の心がゆれるような、観ている方々がその世界に入り込めるような踊りがしたい」。クラシックバレエ部門男性シニア1位は、巽誠太郎(地主薫バレエ団)。『エスメラルダ』よりヴァリエーションを踊った。23歳、プロとして所属バレエ団で踊るとともにゲスト出演もするダンサーだ。多回転のピルエットの軸の確かさ、美しいバッチュが眼に残る。これからについて聞くと「このまま地主薫バレエ団で踊りたい。作品がとても良いんです」。そして、「多くの人の心に残るダンサーになりたい」と話してくれた。

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クラシックバレエ部門男性シニア1位
巽誠太郎(地主薫バレエ団)
「エスメラルダ」よりヴァリエーション

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モダンダンス部門ジュニア1部1位
宮口真緒(前多敬子・田中勉バレエ教室)
「更紗 西へ...」

 モダンダンス部門の受賞者には、会場で話を聞くチャンスを逃してしまったのだが、ジュニア1部1位の宮口真緒(前多敬子・田中勉バレエ教室)には聞くことが出来た。石川県からの参加、『更紗 西へ...』を踊った。鳥や花が描かれた"更紗"がインドから西欧へ伝わっていくことを描いたダンス。この踊りは、彼女のために前田が振り付けたもの、ともに創り上げた。「今まで踊ってきたなかで、一番踊りやすかった」。創作の過程にともにいて創り上げたのは、とても良い経験だったと話してくれた。

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