27年前にセルゲイエフを招いて上演した『シンデレラ』、藤本瑞紀、青木崇主演により第45回バレエ芸術劇場で上演

日本バレエ協会関西支部第45回バレエ芸術劇場

『シンデレラ』コンスタンチン・ミハイロヴィッチ・セルゲイエフ:原振付、田上世津子:再振付

バレエ協会関西支部が毎年この季節に行っているバレエ芸術劇場。45回目の今回は、27年前に当時のソ連、キーロフ劇場(現・マリインスキー劇場)からコンスタンチン・セルゲイエフと夫人のナタリア・ドゥジンスカヤを大阪に招いて創り上げた『シンデレラ』。なんと、この時、夫妻に振付時と本番までの2回、約1か月ずつの2回、合計2か月に渡って滞在してもらい、創り上げたのだという。旧ソ連時代のことだから、2人にとっても、そんなに長く海外に滞在したのは初めてのことだった。今回、27年前に主役シンデレラを踊った田上世津子が再振付、王子を踊った佐伯茂がバレエマスターを務めて、できるだけセルゲイエフ版に近づけて上演した。

ご存じの方が多いかと思うが、プロコフィエフに『シンデレラ』の作曲を依頼したのがキーロフ劇場。第2次世界大戦のころのことだ。そのキーロフでこの振付を任されたのがセルゲイエフだから、このセルゲイエフ版は音楽とともに創り上げられたもの(当時レニングラードは激しい戦闘で焼け野原になっていたことからか、プロコフィエフが作曲した音楽は先にボリショイで使われて別振付で上演されたのだが)。すべてのシーンの音に意味があり、それを27年前に直接教わった田上が今回のダンサーたちに伝えた。

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

今回、シンデレラを踊ったのは藤本瑞紀。アメリカのサラソタ・バレエでも活躍した経験を持つダンサーでソリスト経験豊富だが、全幕バレエの主役は初めて。派手ではないけれど、ラインの美しい、ドラマティックな表現ができるダンサーで、初々しい魅力を持って演じたのがとても良かった。特に、舞踏会に現れる場面、プロコフィエフの音楽がまさにそうなのだが「私、こんな華やかなところに来ていいのかしら?」という声が聞こえてきそうな戸惑いと嬉しさが複雑に混じる場面は、こちらもシンデレラに同化するように引きこまれた。また、青木崇は、能動的に自分の求める人を追い求める英雄的な王子像を好演。
そして、継母の瀬島五月は、さすがの迫力で関西らしいコミカルさも絶妙だった。意地悪な姉妹ズリューカ(井澤照予)とクリヴリャーカ(株田佳香)も、技術も活かして熱演。第3幕のシンデレラを探す旅の部分でのスペインの木岡多真美、エチオピアの林田まりや、東洋の松本真由美も、それぞれの魅力を活かして楽しませた。
(2018年1月27日 フェスティバルホール)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇 撮影:小林愛(テス大阪)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇
撮影:小林愛(テス大阪)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』ズリューカ:井澤照予、クリヴリャーカ:株田佳香、舞踏教師:古川満  撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』ズリューカ:井澤照予、クリヴリャーカ:株田佳香、舞踏教師:古川満
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』東洋:松本真由美 撮影:古都栄二(テス大阪)

『シンデレラ』東洋:松本真由美
撮影:古都栄二(テス大阪)

『シンデレラ』 撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』
撮影:岡村昌夫(テス大阪)

『シンデレラ』継母:瀬島五月、王子:青木崇、ズリューカ:井澤照予、クリヴリャーカ:株田佳香 撮影:古都栄二(テス大阪)

『シンデレラ』継母:瀬島五月、王子:青木崇、ズリューカ:井澤照予、クリヴリャーカ:株田佳香
撮影:古都栄二(テス大阪)

 『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇 撮影:古都栄二(テス大阪)

『シンデレラ』シンデレラ:藤本瑞紀、王子:青木崇 撮影:古都栄二(テス大阪)

ワールドレポート/大阪・名古屋

[ライター]
すずな あつこ

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