ニューヨークのダンス・スクールのCovid-19感染拡大の影響について、イガール・ペリーに聞く

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

Peridance Center:Igal Perry

ペリダンス・センター:創始者・代表イガール・ペリー

ニューヨークのペリダンス・センター(1983年創立)は、マンハッタンのダウンタウンの中心地であるユニオンスクエアの近くにあり、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーを抱え、様々なスタイルの多数のダンス・クラスを毎日開講し続けているスクール。38年間にわたり営業し続けてきて、多数の卒業生を輩出している、ニューヨークで最も重要なダンス・スクールのうちの1つです。地下も含む3階建ての歴史ある建造物を改装した自社ビルを持ち、1階には劇場も設置されています。
学生ビザを発行しているため、世界各国から留学生が集まる国際的なダンス・スクールで、長年、日本人の留学生も多く受け入れてきています。バレエ、モダン、コンテンポラリー、タップ、サルサ、ジャズ、ヒップホップ、アフリカン、ジャイロキネシス、ピラティスなど多様な内容のクラスを開講しています。

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Courtesy of Peridance.

創始者のイガール・ペリーはイスラエル出身の元ダンサーで、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーの芸術監督、振付家、現役のバレエ教師です。Covid-19感染拡大の前までは、月曜から金曜の毎朝、ニューヨークの名物クラスであるペリーのバレエ上級クラスが開講され、第一線のプロの現役のバレエダンサーたちも身体維持のためにコンスタントに通い続けていました。このペリーによる上級者向け(アドバンスド)のバレエ・クラスは現在も開講されています。
以前、インタビュー取材をした元NYCB(ニューヨーク・シティ・バレエ)の元プリンシパルで現在はスペイン国立舞踊団の芸術監督であるホアキン・デ・ルスも、現役ダンサー時代にはずっとこのペリーの朝のバレエ上級クラスに通い続けていました。他にもABTのプリンシパル・ダンサーであるジェームズ・ホワイトサイドもこのクラスに通っていました。NYCBやABTの現役プリンシパルも通い続けるほどで、ペリーの上級クラスはプロの間でも評判が高いです。
以前、ペリーとお話ししていた時に「ホアキン・デ・ルスやジェームズ・ホワイトサイドなどが生徒として通い続けてくるなんて、指導者としてごい実力ですね!」と私が言うと、「彼らは私の生徒というよりも、私は彼らをダンサーとして尊敬していますから、私にとって良き友人みたいなものだと思っています」と謙虚に言っていました。実際、ペリーは彼らから尊敬され慕われていて、スペインに引っ越したホアキンとは今でも良き友人だそうです。
そしてこの名物クラスがやっとオンラインで世界中から受講できるようになりました。現在は月金の毎週2回、質の高いこのペリー自身のクラスが日本からも受けられます。
ペリーは親日家であり、長年、毎年来日してワークショップやオーディションをしてきました。私は去年、ニューヨークのパンデミックでロックダウンの最中にもペリーに連絡して、元気で無事であることを確認して、リアルタイムでペリダンス・センターの様子をお聞きしました。ニューヨークでは、ロックダウンで劇場もダンス・スタジオも全てクローズになっていました。しかし、ペリダンスではその直後からいち早くオンライン・クラスに切り替え「ペリダンスはいまだかつてないほど忙しい」と言っていました。クラスをできる限りオンライン・クラスに切り替えるため、その仕組みを作り直したり、オンライン・クラスを生で撮影して放送するようにしたり、アメリカ政府と直接、補助金の申請をやり取りしたり、このような対応と雑務が大幅に増えたことによって今までで一番忙しくなったそうです。
ペリダンス・センターは大所帯ですので、Covid-19の危機的状況でも大勢のスタッフやダンス教師を解雇せずに済む方法を工夫して、運営を存続させて生き残るために、リーダーとして指揮し続けています。
Covid-19の影響でニューヨークでも、閉鎖や破産になったダンス・カンパニーやダンス・スクールは多いですし、プリンシパル・ダンサーたちにインタビュー取材しますと、NYCBやABTでもダンサー全員を解雇して給料を支払わなくなった様子なので、ニューヨークのダンス関係の運営は非常に悪化しています。そんな中で今でも営業を続けているペリダンス・センターは、とてもよくやっているのではないかと思います。

今回は、ペリダンス・センターのCovid-19下の状況、どのようにその危機を切り抜けていったか、どのように変化して対応していったか、現在のオンライン・クラスの内容、オンライン・オーディションなどについて取材しました。イガール・ペリーにも電話とメールで簡単なインタビュー取材をしました。

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Courtesy of Peridance.

----ニューヨークでのCovid-19のパンデミックは去年3月頃からひどくなりましたが、いまだに収束せず長引いていて、劇場は閉鎖したままですし、ミュージカルやダンス公演はすべて中止です。ダンス・スクールは閉鎖が長く続き、マスク着用してソーシャルディスタンスを守らなければならないですね。その後のペリダンス・センターの状況はいかがですか。

ペリー:このCovid-19の状況がありましたから、いまだにペリダンス・センターでも運営が難しい時期が続いています。普段どおりではない状態です。なにしろ、この状況に合わせて我々も適応しなければならなかったのです。これに適応するためには、やるべきことが山積みなので、いまだかつてないほど忙しくなりました。

----ペリダンス・センターのスクールは、オンライン・クラスに切り替えましたね。

ペリー:現在、クラスのほとんどがオンライン・クラスです。いつものスタジオ内で行うクラスは少ない人数で開講しています。こちらの大きなスタジオは普段なら40〜50名の受講者が入るサイズですが、現在はマスクを着用してソーシャル・ディスタンスを守って人数を減らさなければならないので、6〜8人だけで開講しています。スタジオのキャパシティの20パーセント以下の人数を入れてクラスをやっています。現在、当方のビルはマスクを着用しなければ入れません。
プログラム・クラス(トレーニング・プログラムズ)は限られた人々だけが受講できるコースの特別クラスのため、一般にはオンラインで公開していません。
オープン・クラスは不特定多数に公開しているので、誰でもお好きなようにオンラインで受講していただけます。ライヴのオンラインなので、時差があるため朝夜が逆となりますが日本からも受講していただくことができますよ。

----いつ頃からオンライン・クラスに切り替え始めたのですか。

ペリー:ロックダウンの後、最初の3週間は閉めていました。(ニューヨークでロックダウンが始まったのは20年3月14日)その後、4月初め頃からオンライン・クラスを開始しました。夏はずっと、サマー・プログラムを、オンラインでしなければなりませんでした。それがオンラインになったため、以前から申し込まれていた世界中の受講者たちが止めてしまい、多く払い戻しをしなければならなかったので、その対応は大変でした。実際にスタジオ内で行われる通常のクラスは好きでも、オンライン・クラスは好きでない人が多いのです。

----ロックダウン開始から3週間後にすぐにオンライン・クラスを開始し始めたことは、ダンス・スクールとしてすごく対応が早い方でしたね。おっしゃるとおりオンライン・クラスは好きではない人が多いことはよく分かります。私も好きではないです。その半面、オンラインでは渡航しなくてもどこからでも受講しようと思えば受講できますから、世界中から受講者が増えたという側面はありましたか。

ペリー:はい、例えばロンドン、チェコ、南米からはオンラインの受講者が増えました。

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Courtesy of Peridance.

----他には、オンラインでどのようなことをやり始めましたか。

ペリー:今まで世界中に旅して現地で行ってきたオーディション・ツアーを、オンライン・オーディションに切り替えて行うようになりました。この準備がやっと整いました。
今年2月から4月まで毎月、週末にオンライン・オーディションを開催中です。海外の学生を選抜する2021プログラム・オーディションです。2021プログラムスは、グローバル・サマー・ダンス(Global Summer Dance)、ブループリント・サマー・インテンシブ(BLUEPRINT Summer Intensive)、サーティフィケイト・プログラム(Certificate Program)、INDトレーニング・プログラム(IND Training Program)があります。
もう始まっていますが、今後のスケジュールのオンライン・オーディションは日本からも参加可能です。詳しくはペリダンス・センターのウェブサイトに掲載しています。
https://www.peridance.com/auditions.cfm

----ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーは、現在の状況はいかがですか。劇場が閉鎖している中、オンライン公演は行いますか。

ペリー:はい、劇場ではまだ公演できないため、現在はオンライン公演を行っています。
次のオンラインでのパフォーマンスは、もうじきバレンタインの日、2月14日に上演、放送予定です。詳しいご案内はウェブサイトに掲載しています。ぜひご覧ください。
https://www.peridancecontemporary.org/
Peridance Contemporary Dance Company (PCDC)
ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニー
Artistic Director Igal Perry's new work, "Reverie"
芸術監督イガール・ペリーの新作『夢想』。この新作のオンライン公演、バーチャル初演は、Valentine's Day, Sunday, February 14th at 5:00pm ET. 2月14日ニューヨーク時刻午後5時(日本時刻2月15日午前7時)開演。

----Covid-19の影響があってもペリダンス・センターもカンパニーも存続して運営を続けていて、よくやっていらっしゃいますね。

ペリー:はい、大変な状況の中、お陰様で無事に今のところ続けています。でも生徒は減りましたし、払い戻しも多く出ました。通常のビジネスだけでは運営を続けるのは難しかったです。特に大所帯でスタッフや講師を多く抱えていますので、私は代表としてそれだけの大人数に仕事を与えていかなければならないですから、この状況下で今までのように大人数を雇い続けるのは難しいです。幸い、アメリカ政府から補助金の助けがありましたので、運営を続けることが出来ています。それは今までの38年間、長い間ずっとペリダンス・センターを営業してきた実績の蓄積があったので、それを政府に考慮していただいた結果です。

----現在はペリーさんご自身が教えるオンライン・クラスも、日本からも受講できますね。

ペリー:はい、私はバレエの上級クラスのみ教えています。月曜日と金曜日の午前10時15分から11時30分まで週2回開講しています。
現在はオンライン・クラスも放映していますので、日本でもズームを使って受講していただくことができます。ただ、時差があるので、ニューヨークで朝の時間帯は、日本では真夜中にあたる時間帯で受けづらいかもしれませんが、よかったら受講してください。
https://www.peridancecontemporary.org/peridance-connect-online-studio
https://peridance.org/connect/online-classes/

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Courtesy of Peridance.

----ペリーさんはオンライン・クラスの撮影と放映はどのようになさっているのですか。

ペリー:はい、もちろんオンライン・クラスの放映は質の高い映像にするためには一人でパソコンを置いたままでは出来ないので、私が教えている間は、数名の助手が撮影と放映を手伝っています。他のクラスもすべて同様で、このオンライン・クラスの仕組みを作るために各クラスごとに助手が数名必要となり、スタッフが増えて多忙になりました。

----ペリーさんの授業だけでなく、ニューヨークならではの講師による、多様なジャンルのたくさんのオンライン・クラスも開講していますね。

ペリー:はい、たくさんのオンライン・クラスを開講しています。初心者クラスから上級者クラスまで、あらゆるレベルのクラスがあります。オーディションなしで受講できるオープン・クラスもたくさんあります。こちらも時差があり、ニューヨークと日本では昼夜反対になりますが、よかったら受講くださいませ。

----日本のダンサーたちへ、何かメッセージをくださいますか。

ペリー:私は日本が大好きですし、昔から日本とはご縁が深いです。毎年、年に何回かワークショップで来日し続けていましたが、Covid-19の影響で現在はなかなか渡航しづらい状況です。早くまた訪日したいです。日本が恋しいです。

----本日はありがとうございました。

Peridance Center
https://www.peridance.com/
126 East 13th Street New York, NY 10003 U.S.A.
Tel: 212-505-0886 Email: Info@peridance.com

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