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オーディションを勝ち抜いたシャーロット・ネブレスが黒人少女として初めてマリー役に、NYCB『くるみ割り人形』

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ

George Balanchine's "The Nutcracker"
ジョージ・バランシン'ズ『くるみ割り人形』

11月29日から1月5日まで、ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)のジョージ・バランシンの『くるみ割り人形』の公演がありました。ニューヨークでは毎年恒例となっていて地元のニューヨーカーだけでなく観光客も観劇に訪れて、年々ますます人気のためいつもチケットは完売します。この演目は、子ども連れので観劇できる昼公演や夕方からの公演も用意されています。
音楽はチャイコフスキー、振付はジョージ・バランシン。私は12月17日夜の公演を観ました。

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© Erin Baiano

今回のジョージ・バランシン版『くるみ割り人形』では、1956年初演以来、初めての黒人少女が主役のマリー役を演じることとなり、世界中にニュースが流れ、"ニューヨーク・シティ・バレエ史上初のブラック・マリー" と話題になっていました。バレエ界にも多様性の波が押し寄せていて、世界の主要バレエ団の主役に黒人ダンサーの活躍が少しずつ増えてきています。
このマリー役を180人以上のオーディションで勝ち取った黒人少女は、スクール・オブ・アメリカン・バレエ(SAB)の生徒で、11歳のシャーロット・ネブレス(Charlotte Nebres)です。シャーロットは、ニューヨーク・タイムズに「私が舞台で演じているのを小さな男の子や女の子たちが観て、"これは私にも出来る!"って思ってもらいたいです」と語っていました。彼女に刺激を受けてバレエを身近に感じると、さらにバレエを始める黒人の子どもたちが後に続いて出てきてくれることでしょう。
アメリカン・バレエ・シアター(ABT)でミスティー・コープランド(Misty Copeland)が初の黒人女性プリンシパルになった時、シャーロットは6歳で、自分と同じような黒人女性の舞台を観て刺激を受けたそうです。コープランドの存在に勇気づけられ、その影響も大きかったようです。

この日の他のキャストは、マリーの相手役の少年フリッツはリード・キメット(Reed Quimet)、金平糖の精はインディアナ・ウッドランド(Indiana Woodward)、その相手役の王子はアンソニー・ハクスリー(Anthony Huxley)、デュードロップはテレサ・レイクレン(Teresa Reichlen)です。
125名もの多くの子どものダンサーが出演しました。この演目には、衣装は150着以上も用意されていて、150名以上のNYCBのバレエ・ダンサーとオーケストラ団員が出演し演奏しています。そして、最後のフィナーレでは1億ワット以上の照明が費やされていて、NYCBの演目の中で最も電力消費量が多いのです。それほど、舞台セットや衣装、照明にも一番予算がかけられた、NYCBで年に1度の舞台作品です。
舞台装置も大掛かりで、クリスマス・ツリーが大きく伸びるところが有名です。このツリーの装置はなんと1トンもあり、夜中の12時になるシーンでは、12フィート(3.7m)から40フィート(12.2m)へあっという間に伸びていきます。

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© Paul Kolnik

シャーロットは感情表現が豊かで、踊りだけでなく演技も上手でした。少女なのにもかかわらず大きな存在感があったので、主役に選ばれた理由が分かる気がしました。
このNYCBの演目は毎年のように何度も観ているので、シーンも踊りも同じなのですが、少し変えていたところもあり、若干の変化も加えられているようでした。例えば、第一幕で、ネズミのキングがくるみ割り人形との戦いに敗れて倒れた時、周りのネズミがキングに心臓マッサージをして観客は爆笑しました。これは新しく加えられた演技だと思います。

第一幕の美しいシーンは雪の精の踊りで、群舞の女性ダンサーたちは両手に白いボンボンを扇子状に持って踊り、上からは紙吹雪が降り続けます。音楽はエコーがかかったシンセサイザーも使われているようで現代的です。このシーンはとても美しく、冬らしい雰囲気で盛り上がります。
第二幕のお菓子の国での結婚式では、各国の踊りも、衣装もカラフルで美しく、ダンサーたちの実力も高くて見ごたえがあります。
プリンシパルの見せ場は、ウッドランドとその相手役の王子のハクスリーのパ・ド・ドゥ、花のワルツの中でデュードロップのレイクレンがソロで踊るシーンもありました。やはり踊りは安定していて拍手も多く盛り上がりました。
フィナーレのシーンでは、一番最後に子供のマリーとフリッツが馬車に乗り、宙づりで上って行き終わりました。
この演目は観る度にきらびやかな舞台のシーンが目に焼き付いて幸せな気持ちになり、素晴らしい余韻が残ります。オーケストラ演奏のレベルが高く、音楽としても楽しめて満足します。
(2019年12月17日夜 David H.Koch Theater)

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© Paul Kolnik

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