カルヴィン・ロイヤルIII が『アポロ』のノーカットヴァージョンを見事に踊った

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

American Ballet Theatre アメリカン・バレエ・シアター

"Balanchine, Bennett & The Beach Boys"
「バランシン、ベネット&ザ・ビーチ・ボーイズ」
"Apollo" by George Balanchine、"Some Assembly Required" by Clark Tippet、"Let Me Sing Forevermore" by Jessica Lang、"Dance Boupe" by Twyla Tharp
『アポロ』ジョージ・バランシン:振付、『サム・アセンブリー・リクアイヤード』クラーク・ティペット:振付、『レット・ミー・シング・フォーエバーモア』、ジェシカ・ラング:振付、『ダンス・クーペ』トワイラ・サープ:振付

10月16日から27日まで、ABTの秋のシーズン公演がニューヨークのデヴィッドH・コーク・シアターにて開催されました。
全部で4演目上演されましたが、まず今月号でインタビューした黒人ダンサーであるABTのソリスト、カルヴィン・ロイヤル IIIが踊った、ジョージ・バランシン振付『アポロ』を観ました。音楽はイゴール・ストラヴィンスキー、1928年に初演されています。他のプリンシパルは、テレプシコーレ役はヒー・セオ、ポリュヒュムニア役はクリスティン・シェブチェンコです。ダンサーは7名が出演しました。

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カルヴィン・ロイヤルIIIの「アポロ」 Photo: Rosalie O'Connor.

舞台後方に階段がついている大きな台が置いてあり、その上で女性1人が座ったままで動いていましたが、台の下に向かってライトがつくと、そこにアポロ役のカルヴィンが立っていました。彼の両腕には白い大きな布がグルグル巻かれていました。
女性が二人出てきて、アポロの腕と胴体のあたりに巻かれている白い布の端を持ってほどいていきました。そして白いタイツをはいたアポロが現れました。アポロ誕生のシーンです。女性2人がアポロに金色の竪琴を手渡し、アポロのソロが始まりました。有名なアポロの踊りのシーンです。金色の細長い竪琴を持って、右手を伸ばしてグルグルと回して奏でている様子を表す振付です。
女性ダンサー3名が登場し、アポロは3名それぞれに小さな竪琴、本、マスク(お面)を授け、彼女たちは一人ずつ踊りました。アポロのソロの踊りがあり、ヒー・セオ、シェブチェンコのソロ、パ・ド・ドゥも続きました。様々な動きがアポロの威厳を表現していました。カルヴィンは本当に神であるかのように、静かに表現力豊かにそしてエレガントに踊りました。
最後はアポロと女性3名が歩いていって、後方にある台の階段を1人ずつ1段1段登っていきました。これもよく知られた、アポロがパルナッソスの山へと登っていくエンディングです。カルヴィンは次のシーズンではプリンシパルに昇格すると言われていますが、それを予告するような堂々とした踊りで、途中シーンが切り替わるごとに何度も拍手が起こり、最後も大きな喝采で終わりました。

他に印象に残った作品は『レット・ミー・シング・フォーエバーモア』。ジェシカ・ラングの振付です。プリンシパル・ダンサー2名、イサベラ・ボイルストン、ジェームズ・ホワイトサイドが踊りました。ブロードウェイのミュージカル風のシアターダンスのような感じで、軽快な音楽に乗って、元気いっぱいに楽しそうな踊りでした。ホワイトサイドの表情と表現がとても明るくて豊かでした。
最後の『ダンス・クーペ』は、トワイラ・サープの振付で1973年初演です。群舞も含めてとても多くのダンサーが踊り、早い動作と移動が続き、スピード感があって迫力がすごかったです。サープらしい素速い展開、次々にダンサーたちがそれぞれ違う振付を重ねていき、踊りが入れ替わっていきました。
(2019年10月24日 デイビッドH・コーク・シアター)

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