私のハート、魂、ダンスへの愛、そしてバレエの旅を支えてくれた家族や友人を代表して踊っています。

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

カルヴィン・ロイヤル III Calvin Royal III(ABT ソリスト)インタビュー

----どのようにバレエをやり始められましたか。

カルヴィン・ロイヤル III 私はジョージアで生まれ、父が軍隊で働いていたため10歳頃に一家でフロリダに移転しました。そしてフロリダのパフォーミング・アーツ・ハイスクールで14歳からクラシック・バレエを習い始めました。
ユース・アメリカ・グランプリ・スカラシップ・コンペティションに参加し、2006年4月にニューヨークに来てファイナリストとなりました。そこでABTのジャクリーン・ケネディ・オナシス・スクール(the Jacqueline Kennedy Onassis School at American Ballet Theatre)のスカラシップを得て学ぶことになり、私がバレエを始めてから3年後にニューヨークに引っ越してきました。
そしてABTのスクールでトレーニングを受けスタジオカンパニーに入り、2010年にABTのメインカンパニーへ入団しました。それから7年後、私はABTのソリストとなりました。

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photo/Johnny Rozsa

----バレエを始めてたったの2〜3年で、ユース・アメリカ・グランプリでスカラシップを得てニューヨークへ引っ越してきたなんて、天才的な才能ですね。
今年のABTガラ公演では、カルヴィンがたくさんフィーチャーされていました。大きく映された舞台上のスクリーンの映像にもカルヴィンのインタビューが流されましたし、ガラ公演のいくつかの演目でも踊りましたね。

カルヴィン はい、今年のガラ公演で私はたくさんフィーチャーされました。常任振付家のアレクセイ・ラトマンスキーが私をたくさん抜擢したのです。ありがたいことに、ラトマンスキーは私がABTに入団した初期の頃からずっと特別に注目し続けて、チャンスを与えました。

----あなたはいつもバレエで何を表現したいと思っていますか。

カルヴィン いつも舞台で表現する時は、私のハート、私の魂、私のダンスへの愛と、私がここまで歩んで来きたバレエの旅を支えてくれた私の家族や友人を代表しているということです。彼らへの愛も含めて表したいと思っています。

----尊敬している先輩ダンサーいますか。

カルヴィン 私はABTに参加してから、そこで素晴らしいダンサーたちと知り合うチャンスがありました。例えばマルセロ・ゴメス、イーサン・スティーフェル、ホセ・カレーニョなどです。素晴らしい男性ダンサーたちからたくさん刺激を受けました。一時期を共に過ごせた彼らは、私をアフリカン・アメリカンの男性ダンサーとして、とても勇気付けてくれて、応援してくれました。彼らには感謝しています。

----あなたのようにメトロポリタン・オペラ・ハウスなどの大舞台で、バレエを踊っているアフリカン・アメリカンの男性ダンサーは、世界でも珍しいです。あなたは黒人ダンサーたちのパイオニアです。今後は、他の黒人男性ダンサーの後輩たちもあなたの後をついて来てもらいたいですね。

カルヴィン おっしゃるとおり、アフリカン・アメリカンの男性ダンサーは大きなバレエ団では見かけないです。メトロポリタン・オペラ・ハウスやリンカーン・センターなどの大きな舞台で見かけないです。その大舞台で私がバレエを踊ることによって、このギャップを埋める橋渡しをしたいと思っています。
次の世代の黒人ダンサーたちが私の後に続いてやって来るように、私は彼らへオープンでいたいです。これは大事なことです。そして私はヨーロッパ、アジアなどへも広くツアーして踊っていきたいです。

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photo/Johnny Rozsa

----あなたのダンスを通じて、観客にどんなことを感じてもらいたいですか。

カルヴィン 私のダンスを劇場へ観に来てくださる時、人々にはその瞬間は、ストーリーやダンスをトータルした舞台の世界へとエスケープしてもらいたいです。

----あなたにとってダンスとは何ですか。

カルヴィン フリーダムです!ダンスとは、自由、マイホーム、安らぎです。世界へ旅して公演して、言葉が通じない人々ともダンスを通じて理解し合えます。私にとってダンスとはかけ橋なのです。

----あなたの好きなバレエの役柄は何ですか。

カルヴィン 好きな役柄ね・・・。私はいつもロミオ役を踊りたいと夢見ています。ドラマチックだし、情熱的だし、私のやってみたいことがすべて詰まっています。

----あなたはダンスのテクニックだけではなくて、同時にアクティング(演技)も素晴らしいですね。例えばあなたが舞台で踊る前には、役柄の演技に入りこむために気持ちを切り替えたりとか、何か特別なことをなさっていますか。

カルヴィン 私はいつも役柄のキャラクターを発展させています。バレエはスポーツではないと私は思います。バレエにはストーリーがありますから。アスレチックな面もとてもエキサイティングだけれども、それだけではなくストーリー性があるのだから、ダンスの動作を通じて演技も上手く表現することによって、さらにパワフルなバレエ表現を創ることができると思っています。
私は子供の頃から映画が大好きでしたので、その感覚を自然に培えたのだと思います。私はストーリーを浮かび上がらせることが出来るし、その感覚を私のバレエにも適用することが出来ます。
ABTの練習以外に、私にはアクティングの先生から学んでいて、「役を演じること」について準備をしてきました。今もそのレッスンを続けています。

----元ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパルで、現在ジュリアード音楽院学長のダミアン・ウォーツェル(Damian Woetzel)は、ベール(Vail)・ダンス・フェスティバルの芸術監督をしていますね。あなたはもうすぐ、今年の夏(2019年8月)、そこに招聘されてアポロを踊りますね。

カルヴィン はい。ダミアンは私を選んでいつも応援してくれていて、彼は私のメンターでもあり、コーチもしてくれています。信じられないです。
彼は私の夢の1つだったベール・ダンス・フェスティバルで踊る可能性を実現してくれています。今年、私は初めてジョージ・バランシンの『アポロ』を踊ります。ABTでもこの『アポロ』を踊るチャンスがあるかもしれません。

----日本のファンへ一言、お願いします。

カルヴィン 近い将来、ぜひ日本で公演して、日本の皆さんの前で踊りたいです。ABTでもいいですし、何か他の公演でもいいです。日本の観客の皆様の前でパフォーマンスして観に来ていただけることを楽しみにしています。
(以上は2019年7月、ベール・ダンス・フェスティバル直前に収録)

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photo/Johnny Rozsa

----ダミアン・ウォーツェル(Damian Woetzel)が芸術監督をしている、ベール・ダンス・フェスティバルで、『アポロ』を踊りましたね。いかがでしたか。

カルヴィン はい、今年の8月にベール・ダンス・フェスティバルに招聘されて、ジョージ・バランシン振付の『アポロ』を踊りました。
芸術監督ダミアンの奥様であるヘザー・ワッツ(Heather Watts,元ニューヨーク・シティ・バレエのプリンシパル)と2人でコーチしていただき、『アポロ』の抜粋をニューヨーク・シティ・バレエのユニティー・フェラン(Unity Felan)と踊りました。
本番の2〜3ヶ月前くらいから、ダミアンとヘザーの2人がニューヨークで、私が役柄を学ぶために教えてくれて練習しました。へザーが女性のヴァリエーションを踊り、私は私のヴァリエーションを練習しました。振付だけではなく、もっとアポロのキャラクターについてや、彼が何を象徴しているのかなどをたくさん話し合いました。そしてABTの春のシーズン中にはリハーサルの後、ダミアンが学長をしているジュリアード音楽院へ練習に通いました。

----ダミアンは、あなたに特別な才能を感じて抜擢したと思いますか。

カルヴィン はい。ダミアンは長い間ABTの公演をずっと観に通っていて、私に目を留めてくださったのです。それでダミアンが私を去年のベール・ダンス・フェスティバルに招聘してくださって、私の自己紹介のから始まり、ダンサーとしての私についてや、考え方や価値観、私が将来踊ってみたい演目についても語りました。『アポロ』がその中の1つだったのです。

----ABTの今年の秋のニューヨーク公演でも『アポロ』を踊りましたね。

カルヴィン ABTの秋の公演では抜粋ではなくすべて上演しました。アポロの誕生のシーンから始まるノーカットヴァージョンです。布に包まれたアポロが登場するところからですね。現在、ニューヨーク・シティ・バレエをはじめ他のカンパニーでも、『アポロ』をこのようにすべての振付を上演することは非常に少ないです。ほとんどはあの有名なアポロが手に持っている竪琴を奏でるシーンから上演しています。ベール・ダンス・フェスティバルでもそうでした。
今回のABTの公演では、アポロの誕生のシーンも含めて、バランシンの振付をすべて上演したのです。バランシンの歴史的な振付の『アポロ』の作品全体を、バランシンのハウスであったニューヨーク・シティ・バレエの劇場で、私が踊ることができてとても光栄に思っております。
しかも、黒人の男性ダンサーが、バランシン振付の『アポロ』のノーカットヴァージョンをバランシンの劇場で踊るのは、私が初めてだと思います。おそらくバレエの歴史で初めてだと思いますが、私はこれについて後でチェックしなければならないと思っています。
(2019年11月 ABT秋のニューヨーク公演後に収録)

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