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「モストリー・モーツァルト・フェスティバル」にヤン・リーピンが登場、見事なヴィジュアルと気鋭のダンスで圧倒した

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

Yang Liping Contemporary Dance
ヤン・リーピン・コンテンポラリー・ダンス

"Under Siege" by Yang Liping
『アンダー・シージュ(十面埋伏)』 ヤン・リーピン:振付

ヤン・リーピン・コンテンポラリー・ダンスが今回、「モストリー・モーツァルト・フェスティバル」に招聘され『アンダー・シージュ(十面埋伏)』を8月8日から10日まで上演しました。
中国古代の伝統的な物語を題材にした舞台で、項羽と劉邦の戦い、項羽と虞姫(虞美人)の悲恋の物語「覇王別姫」を表現しています。休憩無しの4幕構成で1時間40分でした。

この作品の振付、芸術監督はヤン・リーピンで、中国雲南省大理の白(ペー)族出身。『孔雀の精霊』"Peacock Dance"で知られています。少数民族の中で育ち、祈りと感謝を表現する歌と踊りが暮らしと共に常にあったので、ヤン・リーピンは一度も舞踊教育を受けたことがないにもかかわらずプロのダンサーとなったそうです。リーピンの天性の才能は国内外で認められ、世界的な舞踊家となりました。今回はリーピン本人は出演しませんでした。

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© DING Yi Jie

ヴィジュアル・ディレクター(舞台セット&衣装デザイン)は、アカデミー美術賞受賞のティム・イップ(Tim Yip)。舞台全体と衣装が赤と黒、白を基調にした色彩の中、明暗のコントラストがとても強いドラマチックな照明使いで、劇的で大胆なイメージの舞台を作り上げていました。闇の中に登場人物が浮かび上がるような感じで、その照明の明暗の強さがメリハリの強いイメージとなり、目に焼きつきました。劇的で激しい戦国の世とそれぞれの運命が、舞台セットと衣装、照明だけでも十分に表現されて素晴らしかったです。現代的なデザインで、斬新で洗練された美術面の仕上がりで驚きました。
天井から無数の、2万丁ものハサミがつり下げられていました。刃が開いたままの無数のハサミは、殺伐とした戦いの世を表していました。同時に、ハサミに照明が乱反射してキラキラ光っていて、舞台上方が暗闇の中で鈍く輝いていて、なにかキラキラ光って華やかだなと思って、よく見ると大量のハサミなので、美しい中にもゾッとして恐ろしく感じます。ハサミが今にも下にバサッと落ちそうで、戦国時代の大量の兵士を表現しているようにも観えて、効果的で良いアイデアでした。

舞台の上手の前方には、公演が始まる前から最後まで、切り絵師のワン・ヤン(Wang Yan)が床に座ったまま紙を切り続けていました。折りたたんだ白い紙をしばらく切ってくり抜いて、観客に向けて広げると、絵や4文字熟語などの文字が現れてきました。その紙で「十面埋伏」などストーリーにちなんだ文字が次々と最後まで示され続けました。彼女の周りには切り続けて出来上がった文字の紙が無造作に積み重ねられ、埋め尽くされていきました。

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© DING Yi Jie

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© DING Yi Jie

主な役は6名、群舞のパフォーマーは11名での構成です。項羽はGe Junyi、劉邦はZhu Fengwei、虞美人はHu Shenyuanです。中国の伝統舞踊、武術(カンフー)、バレエ、モダンダンス、コンテンポラリーなどのダンサーたちが出演しました。弦楽器の奏者が舞台上で演奏するシーンもありました。
戦いのシーンが多いせいか、アクロバティックな中国の武術の要素が強い男性的な踊りが多かったです。群舞もスピード感と迫力があって、圧巻のダンスでした。
京劇の要素も採り入れられていて、男性が虞美人を演じ、項羽との壮絶な愛を表現していました。虞美人をリフトで逆さまにかついだまま、ゆっくりと舞台上を歩き、群舞もスローモーションで動きました。
終盤では、天から吹雪のように赤い羽根が大量に舞い降りてきて、床を埋め尽くしました。そして床に敷き詰められたかのような赤い羽根の上で、羽を床から吹き上げながら踊りました。
カンフーの要素も採り入れられていて、身体能力が高い気鋭のダンサーたちの踊りは難易度が高いうえ、気持ちの表現力もあって素晴らしかったです。
舞台セット、衣装、振付も一体になっていて、舞台全体が素晴らしい作品として昇華されていました。
(2019年8月10日夜 David H. Koch Theater)

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© DING Yi Jie

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