ジョイスシアターで開催されたケビン・オヘアによる「バレエ・フェスティバル」

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

A Joyce Theater Foundation presents ア・ジョイスシアター・ファンデーション・プレゼンツ

Ballet Festival Program C バレエ・フェスティバル プログラムC
"Then and Again" by Gemma Bond、"Somg of a Wayfarer" by Mourice Bejart、 "Elite Syncopations" by Kenneth MacMillan
『ゼン・アンド・アゲイン』 ジェンマ・ボンド:振付、『さすらう若者の歌』モーリス・ベジャール:振付、『エリート・シンコペーションズ』ケネス・マクミラン:振付

8月6日から18日まで、ジョイスシアターでア・ジョイスシアター・ファンデーション・プレゼンツとして、バレエ・フェスティバルが開催されました。芸術監督はケヴィン・オヘア(Kevin O'Hare)英国ロイヤルバレエ団芸術監督です。プログラムAからDまで4種類の演目があり、それぞれキュレーターが違います。すべて小品でした。
英国ロイヤルバレエ団、ABT、NYCBなどのバレエダンサーたちが連日出演し、個性的な振付の踊りで普段と違う表情を見せてくれました。ヴァケーションシーズンにもかかわらずチケットはソールドアウトでした。

プログラムCは8月13日から15日までで、キュレーターは舞台セット&衣裳デザイナーのジャン・マルク・プイサント(Jean-Marc Puissant)です。私は8月14日に観に行きました。
プイサントはパリ・オペラ座バレエ学校を卒業し、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団とシュトゥットガルト・バレエ団で踊っていました。その後、ロンドンのモトリー・シアター・デザイン・コース(the Motley Theatre Design Course)に学び、舞台セット&衣裳のデザイナーに転身しました。プイサントは、舞台セット&衣裳デザイナーとして受賞歴が多く、ローレンス・オリヴィエ賞、英国批評家協会賞などを受賞し、世界的に活躍しています。

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"Then and Again" アナベル・カツネルソン photo/Maria Baranova

プログラムCは休憩をはさんで3演目でした。
最初は『ゼン・アンド・アゲイン(Then and Again)』、ジェンマ・ボンド(Gemma Bond)振付です。音楽はアルフレッド・ピアッティ(Alfredo Piatti)の12 Caprices for Solo Cello,Op.25です。
出演ダンサーはエレス・ミラテン(Erez Milatin)とABTのダンサーたちです。ジミー・コーカー(Zimmi Coker)、トーマス・フォースター(Thomas Forster)、アナベル・カツネルソン(Anabel Katnelson)、ベッツィー・マクブライド(Betsy McBride)、コートニー・シーリー(Courtney Shealy)、カサンドラ・トレイニー(Cassandra Trenary)、ステファン・ウィリアムス(Stephane Williams)です。
最初、ヴァイオリンの曲に乗って、女性がトウシューズで、ソロでゆったりと踊り始め、男性ダンサーが加わりしばらく3名で踊りました。さらに女性4人が加わり、男性ももう一人出て来て男女ペア2組と女性4人が踊り、女性4人が去り、やがて女性がソロで踊りました。とても速いリズムのヴァイオリン曲に乗って、走り回るように踊りました。バレエベースのコンテンポラリーの振付です。
ゆったりしたリズムの曲で、しばらくダンサーは2名や3名のグループで踊っては消えて、次々に入れ替わって踊っていきました。最後は女性ソロの踊りでした。風のように軽やかな動きでした。
数人のダンサーが舞台上で踊り、去ってはまた別のダンサーへ入れ替わっていき、場面や振付が変わり、それが続いて行くという流れが印象的なダンスでした。

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「さすらう若者の歌」ジョセフ・ゴードン photo/Maria Baranova

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「さすらう若者の歌」デヴィッド・ホールバーグ photo/Maria Baranova

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「さすらう若者の歌」ジョセフ・ゴードン、デヴィッド・ホールバーグ photo/Maria Baranova

2曲目は『さすらう若者の歌(Somg of a Wayfarer)』、モーリス・ベジャール(Mourice Bejart)振付、ステージングはメイナ・ギールグッド(Maina Gielgud)です。音楽はグスタフ・マーラー(Gustav Mahler)の「交響曲第1番」("Symphony No.1"; Lieder eines fahrenden Gesellen)です。
出演ダンサーは男性2名で、ABTプリンシパルのデイヴィッド・ホールバーグ(David Hallberg)、NYCBプリンシパルのジョセフ・ゴードン(Joseph Gordon)です。この演目が、この日で一番印象に残りました。
踊りながら会話しているような感じの振付でした。最初、ゴードンがソロで踊り、2番ポジションのグランプリエで両手を合わせて顔の横に置いて、横に傾いて眠るようなポーズをしていました。
そしてホールバーグが加わりました。2人とも背が高く大きく、似た体形でしたが、ややホールバーグのほうが背が高いです。
速い曲でソロで二人が交互に踊り、陰と陽のようなイメージの組み合わせの振付でした。
ゴードンが横たわり、三角座りになってうずくまって膝をかかえていて、ホールバーグがゆったりと踊ったりしていました。全体的に、2番ポジションのグランプリエとアチチュードでポーズするところが多かったです。
2人で手をつないでいて、ホールバーグがゴードンを片手で引っ張って舞台後方へと歩いて去っていきましたが、ゴードンは舞台の前、客席の方を振り返って、名残惜しそうに後ろ髪を引かれつつ、手を伸ばしているところでライトが消えました。このシーンはとても幻想的で美しい終わり方で感心しました。凄い拍手が起こりました。拍手は鳴りやまず、終演後にもカーテンコールが続き、すごい拍手で盛り上がっていました。

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「さすらう若者の歌」photo/Maria Baranova

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「さすらう若者の歌」photo/Maria Baranova

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「エリート・シンコペーションズ」photo/Maria Baranova

3曲目は『エリート・シンコペーションズ(Elite Syncopations(Divertissement))で、ケネス・マクミラン (Kenneth MacMillan)振付です。
音楽は多数の曲でスコット・ジョプリンの「サンフラワー・スロー・ドラッグ」などで、速い曲からゆったりした曲まであり、振付もバラエティーに富んでいました。
出演ダンサーは、サラ・ラム(Sarah Lamb)、ロマニー・パイダク(Romany Pajdak)、カルヴィン・リチャードソン(Calvin Richardson)、マルチェロ・サンべ(Marcelino Sambe)、ジョセフ・シセンス(Joseph Sissens)、カサンドラ・トレナリー(Cassandra Trenary)です。女性はトウシューズで踊りました。
男女のペアが多く組み合わせられていました。
強く印象に残っているのは、男性が女性の片足首を手に持って、足首を上に上げたり、グルグル回したり、開いたりしているところでした。ユニークな振付なので、客席では受けていて大勢笑っていました。
女性たちは、コケティッシュな雰囲気の踊りやセクシーな踊りなど、楽しいものが多かったです。
男女が向かい合って、社交ダンスのような振付の踊りもありました。
英国ロイヤルバレエ団の黒人ダンサー、ジョセフ・シセンズは、かなり長くソロで踊り、ひょうきんで面白い表情の踊りを見せて、観客は喜んで凄い拍手を贈っていました。
最後はダンサー全員が一列に横に並んで踊り、前に進んで来て、ライトが消えて終わり舞ました。
(2019年8月14日夜 ジョイスシアター)

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「エリート・シンコペーションズ」ロマニー・パイダク、ジョセフ・シセンス
photo/Maria Baranova

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「エリート・シンコペーションズ」ロマニー・パイダク、ジョセフ・シセンス
photo/Maria Baranova

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「エリート・シンコペーションズ」
photo/Maria Baranova

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