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コチェトワをめぐる会話も公開されたジョイスシアターの「キャッチ・ハー・イフ・ユー・キャン」

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

A Joyce Theater Production ア・ジョイスシアター・プロダクション

"Catch Her If You Can" Maria Kochetkova 『キャッチ・ハー・イフ・ユー・キャン』マリア・コチェトコワ
"Rachel, Nevada" by Drew Jacoby
『レイチェル、ネバダ』ドリュー・ジェイコビー:振付 他

7月16日から21日まで、ジョイスシアターでマリア・コチェトコワの公演、「キャッチ・ハー・イフ・ユー・キャン」がありました。
コチェトコワは、掛け持ちでABTのプリンシパル・ダンサーでもあったので、退団後はどうするのか気になっていました。彼女は2007年から2018年までサンフランシスコ・バレエのプリンシパルでした。
彼女はダンスカンパニーの一員として踊るのは卒業し、今後はアーティストとして自由になりたいそうです。ダンサーとしては現役で踊り続けることでしょう。

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Photo by ErikTomasson

ロシア生まれのマリア・コチェトコワはボリショイ・バレエ・スクールで学び、2002年にローザンヌ国際バレエ・コンクールでゴールドメダルを獲得、その後も受賞歴多数で、世界中を飛び回って踊っています。小柄なので可憐な役がよく似合います。
大きなサイズの劇場で踊っていたコチェトコワが、コンテンポラリーの殿堂であるジョイスシアターで公演するため、至近距離で観ることが出来るのを楽しみにしていました。

出演ダンサーはコチェトコワも入れて5名でした。サンフランシスコ・バレエのプリンシパルのカルロ・ディ・ランノ(Carlo di Lanno)、ニューヨーク拠点のインディペンデントでフリーランス・ダンサー&振付家であるドリュー・ジェイコビー(Drew Jacoby)、デンマーク・ロイヤル・バレエのソリストのセバスチャン・クロボー(Sebastian Kloborg)、サンフランシスコ・バレエのプリンシパルのソフィアン・シルヴ(Sofiane Sylve)がそのメンバーです。
1回休憩をはさんで8演目が上演され、コチェトコワは4作品を踊りました。ウィリアム・フォーサイス、デビット・ドーソンなど、様々な現代の振付家によるものです。出演ダンサーでもあるドリュー・ジェイコビーの振付で世界初演の作品もありました。
コチェトコワがソロで踊った作品は『デグニーノ(Degunino)』。スペイン人振付家のマルコス・モラウ(Marcos Morau)の振付で、音楽はアレクサンドル・クナイフェルの"O Heavenly King"です。バレエベースでトウシューズですが、コンテンポラリーの要素が強くて、個性的な不思議な世界観の振付でした。鳥が羽ばたくような動きをしていました。180度開脚が所々、何度も出てきました。床に寝転がったり座っていて、床で動いて踊るシーンも多かったです。最後は床から上に立ち上がって終わりました。

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Photo by Magnus Unnar

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Photo by Rachel Neville

ジェイコビー振付は、の『レイチェル、ネバダ(Rachel, Nevada)』世界初演コチェトコワとジェイコビーが2人で踊りました。これは一番印象に残っています。作曲とディレクションはサム・スピーゲル(Sam Spiegel)です。
エレクトロニックの音楽にのって、照明が点いたり消えたりし続けていて、まるで稲妻のような効果もありました。その照明の点滅の中で2人のダンサーが動いて、明かりが点いた瞬間に動いた残像が見えていきました。コチェトコワは小柄で、ジェイコビーは身長が高く身長差が大きいため、女性2人のペアとはコントラストが強く感じられます。2人の個性が際立って見えて、効果的でした。途中からリズムの速さが速くなっていきました。
最後は、コチェトコワが少しソロで踊り、舞台後方に彼女のスマートフォンの画像が映し出されて、直前の友だちとのチャットの内容が次々にスクロールされました。
そのおおよその内容は、コチェトコワのダンサー人生の浮き沈みや心の葛藤などの会話でした。
某バレエスクール時代に受けた冷遇のことや、サンフランシスコ・バレエとABTをフルタイムで掛け持ちして飛び回っていたことや、ダンスカンパニーの一員であることをやめることなど。また、これから何をやりたいのか、どうしていきたいのかまだ分からない、というような会話も続いていきました。かなり際どいことまで会話の文字が画面に映し出されて、観にきていた観客だけが知ることができる内容です。自身の内面、心情を吐露している内容だったため、観客がどよめいたり爆笑したり大騒ぎとなりました。これは、今までと今後の彼女の活動を見守るファンと気持ちを共有したかったのかもしれません。面白い演出だと思いました。
(2019年7月16日夜 ジョイスシアター)

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Photo by Rachel Neville

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Photo by Rachel Neville

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