スピーディな動きと幻想的な演出、そしてメンデルスゾーンの音楽が素晴らしい舞台を創った、NYCB『真夏の夜の夢』

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ

"A Midsummer Night's Dream" by George Balanchine
『真夏の夜の夢』ジョージ・バランシン:振付

ニューヨーク・シティ・バレエの春のシーズン公演の『真夏の夜の夢』を観ました。
シェイクスピア原作の喜劇、メンデルスゾーンの音楽を基にした1962年初演の作品で、バランシン版のバレエは2幕6場で構成されています。この演目も人気があり、チケットは連日完売。子ども連れの家族も多く見受けられました。

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アンソニー・ハクスリー(オベロン) Photo/Paul Kolnik

ティターニア役はテレサ・ライクレン(Teresa Reichlen)、オーベロン役はアンソニー・ハクスリー(Anthony Huxley)でした。
第一幕は、アテネ近郊の森、真夏の夜のシーンです。幕が開くと、子供たちの妖精がたくさん出てきて可愛らしかったです。大人の妖精たちも出てきました。舞台セットは幻想的で美しい森の中でした。薄明かりの舞台の上で、とてもスピーディに踊りが展開していき、次々とダンサーたちが踊り、過ぎ去っていきました。
いたずら好きの妖精パック(ロマン・メヒア Roman Mejia)が、全体を通じて舞台のアクセントになっていて、笑いをたくさん誘い、良いスパイスになっています。それを踊りと動き、表情で表現していて、すばしっこく動いています。
コール・ド・バレエも大人数で、羽のついた妖精の衣装は幻想的で、ダンサーが舞台上に大勢で踊りを繰り広げていて大迫力でした。
次々にシーンと踊りが変わり流れていくうえ物語の展開も速く、大笑いするところも多いので飽きないですし、あっという間に時間が過ぎていきました。
舞台セット、衣装、照明とも、全体で幻想的な森と妖精たちの世界を表現していて、色彩の組み合わせもブルーとグリーンを基調とした中にオレンジや白、赤などを入れていて、とても美しく、夢か絵本の世界の中にいるような錯覚になりました。そして、この演目は以前から何度も観ていますが、舞台セット、衣装とも、今回はまた新しくデザインされたものでした。

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テレサ・ライクレン(ティターニア) Photo/Paul Kolnik

プリンシパルたちの踊りもレベルが高く、ソロやパ・ド・ドゥがあり、リフトも多くて見ごたえがあります。グラン・フェッテなど、客席は拍手で何度も盛り上がりました。踊りだけでなく、ダンサーたちの演技も上手でした。

第二幕は結婚式の曲とシーンでした。ラヴェットとヴェイエットのパ・ド・ドゥがありました。やがて、第一幕の最初の音楽がまた流れ始め、たくさんの妖精たちが出てきました。舞台セットは薄暗く、夜中を表現していて、豆電球のような小さなライトが動き、蛍が光っている様子に見えました。ここでも客席には歓声とどよめきが起こりました。効果的なシーンでした。
最後は、妖精パックが舞台上をだんだん上へ、宙に飛んでいって終わりました。

全体の舞台と衣装などの色彩も美しく、妖精たちの羽がたくさん揺れて幻想的で、メンデルスゾーンの音楽と相乗効果を生んでいました。
(2019年5月31日夜 デイヴィッド・H・コーク・シアター)

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エミリー・キクタ(ヒポリタ)Photo/Erin Baiano

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ロマン・メヒア(パック)Photo/Erin Baiano

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