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圧倒的な迫力で踊られたトワイラ・サープの3作品、ABTの「サープ・トリオ」

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

American Ballet Theatre "Tharp Trio"
アメリカン・バレエ・シアター「サープ・トリオ」

"The Brahms-Haydn Variations" "Deuce Coupe" "In the Upper Room" by Twyla Tharp
『ザ・ブラームスーハイドン・バリエーションズ』 『デュース・クーペ』 『「イン・ザ・アッパー・ルーム」 トワイラ・サープ:振付

6月1日に行われたABTの「サープ・トリオ」は、振付家のトワイラ・サープの3作品が2回の休憩をはさんで上演されました。
『デュース・クーペ』は今回がカンパニー初演ですが、それ以外の2作品はABTのレパートリーです。以前、ニューヨーク・シティ・センターで観ました。今回はメトロポリタン・オペラ・ハウスでの上演なので、舞台の広さがシティー・センターよりもかなり大きいのと、客席の広さや天井の高さの影響のせいか、観たことのある作品なのに多数のダンサーたちの踊りの迫力に圧倒されました。オーケストラ席から観ましたが、劇場の構造の効果が想像しているよりも大きいということを改めて実感しました。
プリンシパルとソリストが多く出演していましたが、ABTのダンサーはテクニック的にもレベルが高いので、彼らがサープの振付を踊るとよりいっそう迫力が増しました。バレエベースの振付だけでなく、コンテンポラリーやボールルームダンスの要素の多いシーンがあり、いつものABTのバレエと違った側面を見ることができ、躍動感、スピード感を十分に感じました。

1曲目の『ザ・ブラームスーハイドン・ヴァリエーションズ」 では、プリンシパルはミスティー・コープランド (Misty Copeland)とサラ・レーン(Sarah Lane)。ソリストはスカイラー・ブラント(Skylar Brandt)、ブレイン・ホーフェン(Blaine Hoven)、アロン・スコット(Arron Scott)、ジョン・ジン・ファン(Zhong-Jing Fang)、カルヴィン・ロイヤルIII (Calvin Royal III)です。その他、コール・ド・バレエが20名以上出演しました。これは2000年にABTが世界初演した作品です。
ペア、4名や数名、多数など、ダンサーたちがかたまりになりながら、次々と流れるように速いスピードで踊り、走り抜けて入れ替わっていきました。

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「デュース・クーペ」© Gene Schiavone

2曲目の『デュース・クーペ』は、ザ・ビーチ・ボーイズの14の楽曲をメドレーで使ったダンスです。19の振付で表現されていました。これは1973年にジョフリー・バレエのロバート・ジョフリーから委託されて作った振付です。
出演したプリンシパルは、ステラ・アブレラ(Stella Abrera)、クリスティン・シェフチェンコ(Christine Schevchenko)、イサベラ・ボイルストン(Isabella Boylston)、ミスティー・コープランド (Misty Copeland)、ジェームス・ホワイトサイド(James Whiteside)です。ソリストは、カルヴィン・ロイヤルIII (Calvin Royal III)、キャサリン・ハーリン(Catherine Hurlin)です。その他、コール・ド・バレエが多数踊っています。

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「イン・ザ・アッパールーム」© Marty Sohl

3曲目の『イン・ザ・アッパー・ルーム』は、フィリップ・グラスの音楽に乗って、音が反復され続けてトランス状態のようになる効果の中、迫力満点の振付作品です。グラスの反復する音楽とダンスが組み合わさって圧倒されていました。
出演したプリンシパルは、イサベラ・ボイルストン(Isabella Boylston)、デヴォン・トイスチャー(Devon Teuscher)です。ソリストは、スカイラー・ブラント(Skylar Brandt)、トーマス・フォースター(Thomas Forster)、ブレイン・ホーフェン(Blaine Hoven)、アロン・スコット(Arron Scott)、カサンドラ・トレナリー(Cassandra Trenary)、キャサリン・ウィリアムズ(Katherine Williams)です。その他、コール・ド・バレエが数名です。
大勢のダンサーが舞台の端から端まで、右から左からものすごいスピードで走り抜けて踊り続け、ダンサーが次々に代わっていきますから、メトロポリタンの広い舞台で繰り広げられるとよりいっそうの迫力がありました。瞬きもできないような、息を呑むほどの臨場感でした。プログラムの最後にこの作品を持ってきたのは良かったです。最後が一番盛り上がりました。

今回はフルレングスのバレエ作品ではなく、3つの演目のダンスのみでしたが、ダンス作品だけでこんなにだんだんと圧倒されていき、気持ちが高揚してくる経験は初めてでした。スピード感のある展開の速い、飽きさせない振付と、ダンサーの人数の多さと、劇場の造り、舞台のスモーク、オーケストラの生演奏、ダンサーたちのレベルの高さが相乗効果で圧倒されたのかもしれません。
(2019年6月1日夜 メトロポリタン・オペラ・ハウス)

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