ユース・アメリカ・グランプリ ニューヨーク ファイナルがディヴィッド・H・コーク劇場で後半が行われた

ワールドレポート/ニューヨーク

針山 真実 Text by Mami Hariyama

4月12日から始まったユース・アメリカ・グランプリ ニューヨーク ファイナルも後半となりました。
参加者たちは日々マスタークラス、グランド・デフィレのリハーサル、そしてスカラシップ・クラスに参加し有意義な時間を過ごしているようです。
私もいくつかのマスタークラスを見学しましたが、どの先生も共通して仰っていたのは顔と首回りの緊張を無くすこと。「固くならずバレエは楽しんで見せなくては」と、どの先生も言っておられました。コンクールを共にする参加者たちはライバルでもあり、また有名教師に指導を受けられることもあって緊張してしまいますが、レッスンから表情をリラックスさせることが大事だと言われていました。
またグラン・デフィレのリハーサルは、毎日3時間ほど夜遅くまで行われました。それでもダンサーたちはとても楽しそうに過ごしています。リハーサルを指導する先生たちは300人ほどの参加者たちをまとめ、手の向き、顔の向きなど細かい部分まできっちり指導していました。グラン・デフィレは18日、19日に開催される20周年ガラで披露されます。

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プリコンペティティブ部門マスタークラス

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プリコンペティティブ部門マスタークラス

そして17日はニューヨーク・マンハッタンのリンカーンセンターにあるディヴィッド・H・コーク劇場で、最終的に選ばれたジュニアとシニアのファイナルラウンドが行われました。今年はジュニア女子30名、男子12名、シニア女子23名、男子20名がファイナルラウンドに選ばれました。

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ファイナルラウンドが行われるリンカーンセンター

選ばれたダンサーたちを見て共通していると感じたのは、どのダンサーも歩き方が美しいこと、そしてパとパの間、ポーズとポーズの繋ぎが丁寧であること。軸が強く真っ直ぐでポワントで立った時の芯がしっかりと出来ているのでバランスが安定していて、ポーズ一つ一つがしっかりと印象強く見せられること。またそのポワントで立ったポジションから降りるときに、足の裏をしっかりと使ったロールダウンを使っておりるので、床との衝撃が無く柔らかな動きが出来ること。アームスの動きは固まらず指先も繊細に動き、首や顔の付け方もよく出来ているので、動きに間が空いたり隙がありません。
また正確なポジションと角度を理解したうえで、自分の身体を使って美しく見せられる角度も良く理解しているので、ポーズがしっかり美しい位置に入ります。ですのでアクロバットやテクニックに走らず、正当にクラッシック・バレエを踊れるダンサーが選ばれていました。中には5回転、6回転ピルエットをポワントで回って会場を沸かせたダンサーもいましたが、彼女らは無理なく回れる余裕があったので感心しました。

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シニア・メンズマスタークラス

シニア・メンズマスタークラス・指導マリインスキーバレエ芸術監督ユーリー・ファテーエフ.jpg

シニア・メンズマスタークラス・指導マリインスキーバレエ芸術監督ユーリー・ファテーエフ

男子の部もほとんど同じことが言えますが、特に男性ヴァリエーションはジャンプや回転技が多く入るので、テクニックを重視してしまいがちになるかもしれませんが、ファイナルラウンドに進んだダンサーたちは、まず基礎が良く出来ていて、つま先の使い方、顔の付け方、アームスの出し方、ジャンプの着地のポジションなどが美しく出来たうえで、テクニックも素晴らしかったです。今年のファイナルラウンドも大変見応えがあり感心しました。

そしていよいよ19日、結果が発表されました。
ユース・アメリカ・グランプリに選ばれたのはシニアの部はガブリエル・フィゲレド18歳、ジュニアの部のグランプリはダリオン・セルメン14歳、プリコンペティティブ部門のホープアワードはコルビン・ホロウェイ11歳が受賞しました。どの部門もトップを受賞したのは男子をいう結果でした。日本の出場者からはプリコンペティティブ男子部門で佐藤可惟さんが2位、アンサンブル部門からくるみダンスファクトリーが3位を受賞、またトップ12にシニア女性から原田菜緒さん、ジュニア女性から塚田絢子さん、小田那奈さんが入賞しました。

ジュニアのグランプリに選ばれたダリオンは足先がとても美しく伸び、上半身の使い方は優雅でしなやか。予選で見たコンテンポラリーの踊りも表現力豊かな踊りでよく印象に残っているし、ファイナルで踊った『白鳥の湖』の王子のヴァリエーションもしなやかで美しく、王子の切なさをよく表現して踊りました。同じくシニアの部でグランプリに選ばれたガブリエル、彼は今年のローザンヌ国際バレエコンクールでも受賞していて予選の時から注目されていました。マスタークラスでも彼の美しさは一際目立っていて、私の印象はバレエ界の貴公子と言われたウラジーミル・マラーホフの二世が出てきたと思いました。彼の素晴らしさは長い手足と美しい足先を使った一つ一つの美しいポーズラインはもちろん、上半身のしなやかさ、優雅さ、やわらかなアームス、そしてバランスコントロールが素晴らしく、動いている節々にふと浮いているかようなバランスにもため息が漏れます。

ジュニアの部で入賞した塚田絢子さんはドルシネアのヴァリエーションを踊り、足のアンデオールが美しく、特に前半のアチチュード・デリエールと後半のアラベスクのパンシェの強さと美しさ、バランスは大変印象的でした。同じくジュニアの部で入賞した小田那奈さんは『ハレキナーダ』のヴァリエーションを踊りましたが、ポイントも美しく踊りはしなやか。何より彼女はピュアなバレリーナという印象でやりすぎず、無駄なことをせず、純粋なクラシック・バレエの美しさに好感を持ちました。シニアの部で入賞した原田菜緒さんの印象はプロフェッショナル。踊り方、見せ方、コントロールも彼女は既にプロフェッショナルな踊り。原田さんは『パキータ』のヴァリエーションを踊りましたが、美しいアラセゴンドとイタリアンフェッテも印象的でした。

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20周年記念ガラで披露されるグランドデフィレリハーサル

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