楽しい演出と機知に富んだ振付をスピード感のあるダンスで見せた、『くるみ割り人形』

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

Peridance Contemporary Dance Company
ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニー

"The Nutcracker" by Igal Perry
『くるみ割り人形』イガール・ペリー:振付

12月14日から16日まで、ペリダンス・カペッツィオ・センターのサルバトーレ・カペッツィオ・シアターで、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーの『くるみ割り人形』の公演が行われました。毎年恒例の公演です。ニューヨークで人気の高い公演のため、チケットは早々にソールドアウトしました。
私が観たのは12月15日午後の公演で、休憩なしノンストップの作品です。
ペリダンス・カペッツィオ・センターのオーナーであるイガール・ペリーは、ダンス教師として長年ニューヨークでダンス教育に尽力し、毎年、世界各地に教えに行っていて、日本でも教えていますので生徒も多く、ニューヨークの自身のダンススクールに多くの日本人を留学生としてビザを発行し受け入れてきています。イガールは、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーを創設し、芸術監督でもあります。

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© Shannel Resto.

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© Shannel Resto.

今回の『くるみ割り人形』は、イガールがコンセプト、振付、舞台セット(動画)を行いました。この舞台セットは、白い背景、動くパーテーションに動画が映し出されていて、舞台シーンが変わっていきます。動画は映像や、CGで作ったサイケデリックな模様のようなものです。
映像は、最初にニューヨークのマンハッタン上空から街並みを撮っているようなシーンから始まりました。主人公のクララや母親、ドロッセルマイヤーが登場する、舞台が始まる前の短い物語になっていました。クララと母親がニューヨーク市内(ダウンタウンのほう)を移動してペリダンスまで行くシーンをショートムービーのように映していました。その映像が終わると、実際に舞台の公演が始まりました。
出演ダンサーは、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーのダンサー男女9名と、実習生9名、子供から高校生、大人まで含めた大勢のペリダンス・スクールの学生たちでした。他に、ドロッセルマイヤー役としてトーマー・ペリー、ゲスト・アーティストとしてジョルジア・ヴィターリが出演しました。
クララ役は小学生のエミリア・パスカレリ、道化師はヴィヴァ-ク・カムシンサバス、プリンスと父親役はクレイグ・ディオンヌ、プリンセスと母親役はソヘ・キムです。カンパニーのプロダンサーと一緒に、ペリダンス・スクールの学生たちも群舞として大勢出演させていて、上手に組み合わせてダンスを披露していきました。プロダンサーのメンバーは、群舞の前方で、センターで踊っていることが多かったです。
ドロッセルマイヤーは最初のほうに出て来て、これから始まる物語の自己紹介のようなシーンがあり、手品をしてたくさんのお花を出していきました。去年とは映像や演出を変えていて、毎年新たに創りあげている作品でした。
人形の踊り(シュガードール)は実習生と学生の男女のパ・ド・ドゥでした。メヌエットはカンパニーのダンサーと実習生、男女4名の静かな踊りで、振付は独自のもので個性的でした。イガールの振付は重心の位置が動いて変わるものが多く、右回転と左回転を続けて交互に変えるところも多いため、難易度が高く、流れるようにきれいな踊りです。
途中、タップ・ダンス、ヒップ・ホップ、ディスコダンスのようなエレクトロニックの踊りも入れていて、バラエティに富んだダンスを織り交ぜていました。ヒップ・ホップでは日本人のサガラ・チサトも出演しました。
「イントゥー・ザ・ナイト、スノウ・カントリー、スケーターズ」のシーンでは、カンパニーのプロダンサーと実習生が大勢踊りました。
シアターは小さめで、観客は至近距離で舞台を観るため、ペリダンスのプロのダンサーはレベルが高いですし迫力がありました。
マザー・ジンジャーの踊りは、ディスコ風にアレンジされていました。最後にマザー役のカラフルなスカートの裾を大勢が四方へ引っ張って、それはストッキングのように長く伸びる生地で出来ているため、スカートが放射状に大きく広がってきれいでした。
中国舞踊では男性2人組がジーンズに上半身裸で、ベトナムのツバの広い帽子を使って踊りました。スピード感がある力強いダンスでした。
アラビアの踊りは男女のパ・ド・ドゥで、スプリットもありました。スペインの踊りは男女4名で、スピード感がすごくあって、ダンサーが右に左に凄い速さで踊りながら通り抜けるので、ビュンビュンと風を切るようでした。
花のワルツは、子供たちの群舞の「バタフライズ」と、大人の「スプリング・フラワーズ」の2回を違う振付内容で踊りました。

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© Shannel Resto.

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最後のクライマックスのシーンでの踊りは、プリンスとプリンセスの踊りで、クレイグ・ディオンヌ、ソヘ・キムです。リフトも多く、スプリットもあり、男性が女性を上に持ち上げてブンブンと勢いをつけて回すところもありました。難度が高くて見ごたえがあり、盛り上がりました。
フィナーレでは、全員が次々に出て来て、短く踊って消えていきました。スピードがあり、流れるように人々が出て来て踊りました。
すごい拍手に包まれました。
(2018年12月15日午後 サルバトーレ・カペッツィオ・シアター)

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