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ニューヨーク・シティ・バレエとスクール・オブ・アメリカンバレエが新芸術監督 J.スタッフォード、副芸術監督 W.ウェランを発表

ワールドレポート/ニューヨーク

三崎 恵里  Text by Eri Misaki

ニューヨーク・シティ・バレエ(NYCB)とその養成校のスクール・オブ・アメリカンバレエ(SAB)の理事会は2月28日、新芸術監督および副芸術監督を発表した。NYCBとSABの総芸術監督を30年以上務めたピーター・マーティンス(Peter Martins)が、昨年初めに団員や生徒へのセクハラやパワハラの弾糾を受けて辞任した事件は、アメリカ舞踊界ならず世界中で注目されたが、その後任がこれで正式に決定したこととなる。

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Wendy Whelan and Jonathan Stafford at One World Observatory in New York City. © Christopher Lane

この度、NYCBとSABの新芸術監督に任命されたのはジョナサン・スタッフォード(Jonathan Stafford)、NYCBの副芸術監督にウェンディー・ウェラン(Wendy Whelan)で、それに加え現在NYCBの専属振付家でソリストのジャスティン・ペック(Justin Peck)がNYCBの芸術アドバイザーに任命された。スタッフォードとウェランはいずれも元NYCBのダンサーでSABの卒業生でもあり、アメリカのバレエ業界で相応の実績を納めた、自他ともに認める実力者達である。

NYCBにおいて、スタッフォードとウェランは新しい運営組織で職務について、90名以上のダンサーとNYCBオーケストラを含む全てのアーティストを支援し、育成する環境を提供しつつ、引き続き世界最高レベルの公演を行っていくことになる。NYCBのチャールズ・シャルフ理事長は、「この、我々自身から生まれた優秀で著名な二人を、次世代リーダーとして紹介できるのを誇りに思います。ジョナサン・スタッフォードは、カンパニーで20年のキャリアを持ち、模範的なプリンシパルダンサーとして、そして無くてはならないバレエマスターとして、これまで素晴らしい仕事をしてきました。ウェンディー・ウェランはこのバレエ団の歴史の中で最も重要な、そして最も愛されたダンサーの一人です。バレエ団を出た後、様々な団体と協働して、革新的でダイナミックな仕事をしてきました。」と新しい芸術監督たちを紹介した。

シャルフは芸術監督を選ぶための合同調査委員会がNYCBとSABの理事会のメンバーで構成されていたことを明かし、彼らの努力に感謝を述べた。委員会は220名に及ぶアーティストや従業員、大手文化団体の株主たちからの意見を聞き、公募に応じてきた候補者を審査したという。マーティンス辞任後、新芸術監督の決定に至るまでの1年余、NYCBの運営はスタッフォードに加え、ジャスティン・ペック、クレイグ・ホール、レベッカ・クローンの4名が臨時アーティスティック・チームとしてバレエ団を支えてきた。

今回のNYCBの新芸術監督のポジションには、世界中から候補者たちが公募に応じた他、様々なソースから推薦された人たちが集まった。その中から最有力候補と思われる20名が選ばれて調査委員会との面接に臨み、最終的に選抜された。外部コンサルタント機関としては、フィリップ・オッペンハイマー事務所が、非営利コンサルタント会社として参加した。

前監督のマーティンスが疑惑の追及を受けた2017年12月以来、NYCBとSABを臨時運営チームとして引っ張ってきたスタッフォードは芸術監督としての職務を即日開始し、副芸術監督のウェランは3月半ばから職務につく。

NYCBはアメリカ最大のバレエ団で、現在の年間予算は8千800万ドル(約99億円)、ダンサーを含む従業員450名を雇用している。芸術監督のスタッフォードは、バレエ団の芸術面での運営のすべてを監督し、経営面を担当する専務取締役のキャスリーン・ブラウンと協働することとなる。また、スタッフォードはカンパニークラスを教え、リハーサルを担当して公演に備えることとなる。

副芸術監督となるウェランはNYCBの年間恒例公演の考案、プランニング、新作の企画、リハーサルを担当し、クラスを教え、NYCBのレパートリーのコーチを行う。30年間のNYCBでのキャリアを持つウェランはNYCBの主な作品の殆どを踊っており、ジョージ・バランシンやジェローム・ロビンス、トワイラ・サープ、ウィリアム・フォーサイスを含む多くの振付家が直接振り付けたオリジナルメンバーでもあった。また、クリストファー・ウィールドンやアレクセイ・ラトマンスキーとも協力して、彼らの出世作となった作品を踊った。2014年に退団してからは、外部文化団体と多様な活動を行ってきた。

NYCBは今回の決定にあたり、バレエ団の専属振付家であるジャスティン・ペックを芸術アドバイザーに任命して、首脳陣にポジションを追加することになった。ペックはスタッフォードとウェランと共にプログラムや新作の制作に深く関わることとなる。ペックは昨年以来の臨時アーティスティック・チームの一人として、振付と制作の分野で主要な役割を果たしてきていた。現在、NYCBのソリストであるペックは、今年春の公演が終了後、ダンサーとしてのポジションを離れることになるという。

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Jonathan Stafford at One World Observatory in New York City © Christopher Lane

SABにおいて、芸術監督としてスタッフォードは、教師代表のケイ・マッツォーやSAB代表取締役のキャリー・ハインリッヒと共に、米国で特に優秀なバレエの生徒たちの育成に取り組んで、ワールドレベルのアーティスト、そして健康で人格的にも優れた人材を育てるスクールを目指すという。ウェランはSABの正式な代表者としては立たないものの、コンスタントにゲスト教師として教えることになるという。

リンカーンセンター内に位置するSABは現在年間生徒数約1,000人。毎年、優れたダンサーを国内外に送り出している。毎年NYCBは10名を選抜してカンパニーに採用している。
現在、NYCBの団員は2名を除いて全てSABの卒業生だ。スタッフォードは芸術監督として、スクールの質の高い訓練とカリキュラムを維持し、スカラシップや教育プログラムのために欠かせない資金調達に努力することとなる。スタッフォードはこれまでも10年以上、SABの教師として重要な役割を担ってきており、スクール内外の信頼を得ている。

スタッフォードは、「私にとってNYCBとSAB以上の優れた舞踊機関はありません。」と語っている。「私のSABとNYCBとの関わりは1996年に始まりました。それから、毎年私はここで過ごして、ここで大人になり、芸術家になりました。そして、バランシン、(リンカーン)カースティン、ロビンス、その他の貢献者の作品を保存するこの舞踊機関に深い敬意を持つようになりました。私はその芸術監督として働けることを心から誇りに思い、ウェンディー・ウェランと共に将来へ向かって力を尽くして頑張ります。」

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Wendy Whelan at One World Observatory in New York City. © Christopher Lane

ウェランは次のように語っている。「この任命は私にとっては故郷に帰ることを意味しており、NYCBに復帰できるのはとても嬉しいことです。私には、ここに居なければいけない、カンパニーにポジティブな成長と変化をもたらさなければ、という強い思いがあります。私はダンサー時代にはロール・モデルとしての役割を果たしました。そして、今、カンパニーを引っ張っていく機会が与えられたことにわくわくしています。(これまで常に男性がリードしてきたNYCBで)私が副芸術監督に任命されたことは、女性ダンサー達に、そしてすべての女性に大きな意味があり、私にとってとても重要なことです。NYCBの変化の瞬間は今です。ジョナサン・スタッフォード共々、私はその変化を歓迎することを喜ばしく思います。

「私は尊敬するジョナサン・スタッフォードとウェンディー・ウェランと組んで仕事ができることが嬉しくてたまりません。」とジャスティン・ペックは話す。「彼らとスクラムを組んでNYCBの将来のために働き、特にアーティストも観客もあっと言わせるような、革新的な新しい作品を我々のステージに上げたいと願っています。」

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