ユース・アメリカ・グランプリ アメリカ予選(2月22日、23日)を見てきました

ワールドレポート/ニューヨーク

針山 真実 Text by MAMI HARIYAMA

PepsiCo Theater, SUNY Purchase Performing Arts Center

1999年に創立され今年20周年を迎えるユース・アメリカ・グランプリではアメリカをはじめ世界有数のダンススクールで奨学生として学ぶ機会が与えられ、9〜19歳のダンスを学ぶ生徒が出場できます。日本では既に昨年10月末に行われた予選が現在全米各地で行われています。その中のニューヨーク州で行われた予選会に行ってきました。

会場はニューヨーク郊外にある大学内のシアターで、 大学付近はビルや建物は見当たらず、大学の入り口を入ってから会場までも車でしか移動するほかないほどの広さで、アメリカの大きさを感じます。大学内とは言え舞台の大きさも舞台裏の設備もそこそこしっかりしていました。4月に行われる当コンクールの決戦も一部このシアターで行われます。

会場には参加者と指導者たち、保護者たち、そしてスクールを応援するサポーターが集まり興奮が高まっていました。アメリカのコンクールで日本と違うところは、スクールからのサポーターが集まり出場者に声援を送るところで、少しスポーツ観戦と似ているところがありますが、自分のスクールのダンサーが舞台上に出てくると歓声が送られます。舞台裏へ行くと指導者と最終確認をする生徒、ウォームアップをする生徒、それぞれ本番に臨むため準備する姿が見られました。

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コンクールが始まると各部門15分ずつ舞台上での場当たり時間が与えられ、生徒たちが各々に自分の踊りを確認します。指導者たちは一般的によくリノリウムと言われる、舞台上のダンス専用フロア内に入ることを固く禁止され、少し離れたところから生徒たちを見守り、遠目から指示を出す指導者たちの姿が見られました。舞台上でも会場スタッフがダンサーたちに松脂を使わないように、また舞台以外の場所を歩くときはシューズカバーを付けるようになど、ダンサーたちに頻繁に注意を促していました。舞台の大きさは大ホールといったところでしょうか、横幅も奥行きもしっかりあります。

コンクールはプリ・コンペティティブのコンテンポラリー・9歳から11歳の部門から始まりました。全米でも最も知名度のあるコンクールというだけあって、コンテンポラリーが始まると唖然としてしまいました。身体は小学生なのですが動きは大人顔負けです。特にコンテンポラリーの審査に関しては好みが左右すると思うのですが、私個人の感想としては音楽も振付も大人な雰囲気の作品が多く、動きには新体操的な要素が入ったものが多く見られました。振付家・指導者はこの子たちに近年の時代の流れに沿った指導と振付をしていると思いましたし、過去の入賞者を勉強して振付指導されているのかも知れませんが、何故か動きや音楽の系統が似ている子が多いことと、 これだけの動きを小学生が出来ることには感心し驚きはしましたが、果たして年相応なのかと感じ、またこの子たちがこの先どうなっていくのだろうかという疑問を持ちました。

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昨年からユース・アメリカ・グランプリでは、ポワントを履く年齢が低年齢化する傾向について、それが子供たちの成長に危険を及ぼす可能性があると懸念し、また正しいドゥミポアントのやり方も学ばぬうちからヴァリエーションを踊ってしまっているということで、9歳と10歳の生徒のポワントでの参加を禁止とし、11歳の生徒もポワントをなるべく避けるようにという内容を発表しました。そのためプリ・コンペティティブ部門のクラッシック・バレエではほとんどの生徒がバレエシューズで参加しました。審査員のチェックリストにはあらゆるチェック項目があり、生徒たちにもっと努力が必要とする部分にはチェックが入り、また努力出来ていると感じられる部分にもチェックが入ります。ジュニアの部門ではニューヨーク州の隣のニュージャージー州のダンスアートアカデミーからの出場者が多く入賞し、シニアの部はニューヨークシティで実績を上げているエリソンバレエが上位をほぼ独占しました。

記憶によると昨年までは審査の点数が95点以上あるとニューヨーク・ファイナルに進出出来たのですが、今年はファイナルに進めるのは96点以上と発表されて、さらに狭き門になったのだと思いました。ジュニア・シニアの部門になると指導者は舞台袖に行くことが禁止され、生徒のみが舞台へ向かうため、その間に別のスクールの生徒同士で励まし合ったり、友だちになってコンクールでネットワークを広げているようでした。

舞台で見ていて残念だったのは音源の質の悪い出場者が多くいて、中には手拍子が含まれた音源を使っている生徒もいました。音源探しを生徒にさせているスクールもあるようで、まだ経験も少ない生徒の力では良い音源が探せなかったのだろうと思いますが、それを最終的に確認して許可するかは指導者に責任があると思いました。バレエは踊りだけではなく音楽と踊りが融合して美しく完成する芸術ですから、音楽をもっと大切にしてほしいと思いました。

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