ニューヨークのジャパン・ソサエティーの芸術監督、塩谷陽子がベッシー賞を受賞

ワールドレポート/ニューヨーク

三崎 恵里  Text by Eri Misaki

2019年1月6日、ニューヨークの米国民間非営利団体で、全米最大の日米交流団体のジャパン・ソサエティーの芸術監督・塩谷陽子が、ニューヨーク・ダンス&パフォーマンス賞(通称:ベッシ―賞)より、傑出したキュレーターに贈られる最優秀キューレート賞(Bessies Presenter Award for Outstanding Curating)を受賞した。ベッシー賞代表のルーシー・セクストンは選考理由として、「塩谷陽子氏は鋭い鑑識力で、文化の違いを超えて重要な舞台芸術を紹介し、ニューヨークのダンス界にすばらしい貢献をしている」と述べている。

ベッシー賞(正式名称「New York Dance and Performance Award」)は、振付家やダンサーをはじめ、作曲家やデザイナーなど、ダンスおよび先駆的な舞台芸術において秀でた作品づくりに貢献したニューヨーク市のアーティストに贈られる賞。1983年、当時ニューヨークの実験的舞台制作の牽引役となっていた非営利団体、ダンス・シアター・ワークショップ(Dance Theater Workshop)によって設立され、モダン・ダンス教師として尊敬されたベッシー・ショーンバーグ(Bessie Schornberg)にちなんで名づけられた。審査は、毎年ニューヨーク舞台芸術界の専門家からなるグループによって行われ、ニューヨーク・タイムズ紙は「ベッシー賞は舞台芸術界のアーティストにとって極めて重要な賞」と評している。受賞者にはビル・T・ジョーンズ(1986年受賞)、アンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケル(1987)、ロバート・ウィルソソン(1987)、ウィリアム・フォーサイス (1988)、ミハイル・バリシニコフ(1997)などがいる他、日本人ではエイコ&コマ、中馬芳子、勅使河原三郎、山崎広太、折原美樹などが受賞している。

今回、塩谷に授与されたベッシー最優秀キューレート賞は、2017年から始まったカテゴリーで、ニューヨーク市において観客やアーティスト並びに舞台芸術界に多大な影響を与えたプログラムを構成しているキュレーターやプレゼンターに贈られる賞。塩谷の受賞は、初回受賞者のジョディー・ハッシー・テイラー氏(Danspace Projectのエグゼクティブ・ディレクター)、昨年の受賞者ジョセフ・V・メリロ氏(BAM:ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージックのエグゼクティブ・プロデューサー)に続く三人目。
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この度の受賞について、塩谷は次のように述べている。
「このような重要な賞をいただいたことを大変光栄に思います。ここニューヨーク市には数多くのプレゼンターや優秀なキュレーターが活躍していることを思うと、受賞の嬉しさは格別です。一方、私の仕事が舞台芸術の世界の都、ニューヨークで評価されたということは、とりもなおさず、日本の舞台芸術作品の層の厚さ・質の高さ、その創造の豊かさを示すことでありましょう。」
塩谷陽子は1960年東京生まれ、東京芸術大学音楽学部楽理科を卒業。1988年の渡米を機に朝日新聞をはじめ多くの活字メディアに芸術文化の定期コラムや舞台芸術批評を執筆した。2003年ジャパン・ソサエティーの舞台公演部部長に任命され、2006年に舞台芸術部門と映画部門を統括する芸術監督に就任した。以来、日本の舞台芸術の公演をジャパン・ソサエティーの劇場にて主催する他、北米ツアーのプロデュース、非日本人アーティストへの新作委嘱、現代戯曲の英語リーディング・シリーズなど新規事業を立ち上げる。トヨタ・コレオグラフィー・アワード、ロックフェラー財団MAP助成、ニューヨーク・ベッシー賞、ローレックスMentor & Protégé Arts、ハーブ・アルパート芸術賞など、舞台芸術に関する様々な表彰や助成プログラムの審査員などを歴任。著書に『ニューヨーク:芸術家と共存する街』(1998/丸善ライブラリー)、共著に『なぜ、企業はメセナをするのか』(2000/メセナ協議会)などがある。

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