ニューヨークの冬の風物詩、NYCBのバランシン'ズ『くるみ割り人形』が開幕した

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

New York City Ballet ニューヨーク・シティ・バレエ

"George Balanchine's The Nutcracker" ジョージ・バランシン'ズ『くるみ割り人形』
Choreography by George Balanchine ジョージ・バランシン:振付

毎年恒例の、ニューヨークの冬の風物詩となっているニューヨーク・シティ・バレエのジョージ・バランシン『くるみ割り人形』が11月23日から始まりました。クリスマスまで上演しています。
今ではニューヨークだけでなく世界中からの観光客も殺到するため、毎年ソールドアウトとなります。驚くほど大人気の演目です。そのため、私は今年も早めにチケットを準備しました。私が観劇したのは初日で、客席は親子連れがたくさんいて超満員でした。

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©Paul Kolnik

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2幕で、4つのシーンで構成されている作品です。このニューヨーク・シティ・バレエ版の演目は、1幕の後半でクリスマスツリーがとても巨大に上へ横へと伸びていき、舞台の天井の高さいっぱいまで伸びて行きます、。
チャイコフスキの音楽はオーケストラで演奏され、舞台セットも豪華絢爛で贅沢な作品です。
今年のシュガープラム・フェアリー(こんぺい糖の精)はスターリング・ヒルティン、そのお相手役はゴンサロ・ガルシアです。ガルシアは身長が高く大柄のせいか、存在感があって女性役を引き立てるためにピッタリです。子たちも大勢、出演しています。
印象に残ったシーンと踊りについて書きます。

シュターバウム家で開かれるクリスマスパーティに、パーティーらしい正装、華やかな服装で大勢の親子がやってきます。やがて、黒マントと眼帯のドロッセルマイヤーがやってきて、大きなプレゼントの箱を持ってきました。まず2つの箱を開けると、男女2体の人形が出て来て踊り、また箱の中に帰っていきました。もう1個の箱を開けると、くるみ割り人形(大人の男性)が出て来て踊りました。
マリーがくるみ割り人形を持っていると、フリッツがそれを取り上げて振り回し、壊してしまいました。ドロッセルマイヤーは、くるみ割り人形にハンカチを巻いて助けてあげました。マリーはくるみ割り人形を白い小さなベッドに寝かせて、ツリーの下に置きました。
パーティーが進み、大人も子供もみんなで、舞踏会のような社交ダンスを踊りました。
パーティーが終わってみんなが帰った夜、マリーは部屋から抜け出してツリーのある居間に寝間着のまま出て来て、ツリーの元に置いてあったくるみ割り人形を手に取り、心配そうに抱き上げます。そして居間のソファーでそのまま眠ってしまいました。母親が見にきて、マリーの上にそっとショールをかけていきました。
そしてドロッセルマイヤーがこっそりくるみ割り人形を修理して帰っていきました。

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©Paul Kolnik

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やがて夜中の12時に時計の鐘が鳴ると、大きなネズミが1匹、2匹とだんだんたくさん出て来て走り回りました。マリーは怖がってガクガク震えだしました。
そこに、子供たちが扮しているおもちゃの兵隊8人とうさぎの太鼓打ち1人が出て来て、ツリーがピカピカと光ってどんどん上へ横へ大きく伸びていき、巨大なツリーとなりました。このシーンは凄い拍手で盛り上がりました。
頭が8個くらいついているネズミのキングと子分のネズミ8匹が出て来て、おもちゃの兵隊たちと戦いました。そしてくるみ割り人形がネズミのキングと一騎打ちで剣で戦って、キングを倒してその王冠を取って上にかかげて外に歩いていきました。

みんな去り、屋外の雪が降る林のシーンに変わっていきました。マリーが寝ている白いベッドも動いて外へ出ていきました。そこにくるみ割り人形がネズミ・キングの王冠を持って出て来て、早変わりで衣装が変わり人形からスーツ姿の人間の少年の姿になり、その王冠をマリアの頭に着けてプレゼントしてあげました。そして2人で歩いて去っていきました。

雪が降り始め、雪の精たちが一人、また一人と通り過ぎていきました。だんだん大勢でてきて、雪の精の踊りが始まりました。白いシフォン地のパニエと上が水色のドレスを着てティアラをつけた女性たちの群舞で、第一幕で一番盛り上がる有名な美しいシーンです。吹雪が激しくなる中で凍えるようなシーンですが、幻想的で美しく、印象に残ります。何度もニューヨーク・シティ・バレエの雪の精の踊りを見ましたが、今回も、とても美しくて感動しました。音楽もコーラスの声のようなシンセサイザーの音も使っていて、さらに幻想的な雰囲気を加えていました。
途中、両手に白い大き目のボンボンが先について扇子状に広がったものを持って、大勢のダンサーたちが踊ります。8人、5人ずつくらいのグル-プで踊り、だんだん吹雪が激しくなり、踊りも速くなりました。

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休憩をはさんで第二幕は、お菓子の国のシーンです。ここもおなじみの有名な踊りがたくさん出てくるので、何度見ても楽しくて嬉しいものです。
最初、子供たちが大勢、オルゴールのエンジェルのように白い美しい裾の長い衣装で出て来て、上下の動きなく床をすべるように速いスピードで踊り、そのかわいらしさ、美しさに感嘆して、客席はわーっと声をあげて大きな拍手がありました。
そしてシュガープラム・フェアリーの踊りをヒルティンが優雅に踊りました。体の軸が安定していました。
次々に招待客たちが来場しました。そして最後にマリーとくるみ割り人形の男の子が、かわいらしい舟で到着して、こんぺい糖の精に導かれて舞台後方の奥にあるイスに座りました。

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ホットチョコレートの踊り、コーヒーの踊り、お茶の踊りなどが続きます。
特にコーヒーの踊りは女性のソロのアラビア風のもので、とても盛り上がりました。ダンサーはジョルジーナ・パスコーギンです。両足首に鈴をつけていて動く度に鈴が鳴り、手には小さな楽器を持っていて時々チンッと鳴らしながら踊りました。ジャンプして床に180度スプリットしてそのままポーズを取り、チンッと手で鳴らして、終わりました。これはすごい拍手でした。
キャンディーケーンの踊り、マジパンの踊り(葦笛の踊り)、マザージンジャーと子供たちの踊りが続きました。
花のワルツは、群舞とソロのデュードロップの踊りです。今回のデュードロップはブリタニ―・ポラックで、特に一段と踊りにキレがあり、もともと身体能力が機敏で素速いダンサーです。ポラックは表情も豊かでニコニコとしながら踊りました。将来はプリンシパルになりそうで楽しみです。

踊りの最後は、こんぺい糖の精と付き添いの王子のパ・ド・ドゥです。ペア、ソロのヴァリエーション、回転やジャンプなど大技が続きました。ヒルティンは可憐で可愛らしく上品な雰囲気で、役にピッタリ合っていました。ヒルティンをガルシアが抱え込んでリフトのままポーズをとり、すごい拍手でした。

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フィナーレでは全員が出て来ました。子供のマリーとくるみ割り人形の少年と、大人のこんぺい糖の精と王子がそれぞれ重なっていきました。
そしてマリーとくるみ割り人形の少年の2人はそりに乗って、宙へ、右下から左上へと上がっていき、手を振っているところで幕が閉じました。
(2018年11月23日 David H. Koch Theater)

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