モーツァルト・フェスティバルでマーク・モリスの3つの小品が上演された

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ 西村 Text by BRUIXA NISHIMURA

Mostly Mozart Festival   Mark Morris Dance Group
モストリー・モーツァルト・フェスティバル   マーク・モリス・ダンス・グループ

" Love Song Waltzes ", " I Don't Want to Love ", " The Trout "by Mark Morris
『ラブ・ソング・ワルツ』『アイ・ドント・ウォントゥー・ラブ』『ザ・トラウト』マーク・モリス:振付

7月12日から8月12日まで、リンカーン・センターが主催する、毎年恒例の「モストリー・モーツァルト・フェスティバル」が開催されました。作曲家モーツァルトがテーマで、音楽のコンサートや、ダンス公演、演劇が特集される大きなフェスティバルです。
8月9日から12日まで、マーク・モリス・ダンス・グループが招聘されて、ジャズ・アット・リンカーン・センターのローズ・シアターで上演しました。
私は8月11日夜の公演を観劇しました。「モストリー・モーツァルト・フェスティバル」のマーク・モリス・ダンス・グループの公演は、いつもチケットがソールドアウトするので、今年は早くからチケットを入手して楽しみにしていました。
マーク・モリスはダンサー、振付家でありながら、同時に音楽の造詣も深く、自身のカンパニー専属のMMDGミュージック・アンサンブルを持ち、自らが指揮をする時もあります。ですからマーク・モリスは、ダンス公演の音楽を録音ではなく、クラシックの生演奏をあわせて上演しています。ダンス・カンパニーを持ち、クラシック音楽の指揮もする振付家は貴重な存在だと思います。マーク・モリスはニューヨークを拠点にしていて、「天才」とも称されている振付家です。文化的にも稀有な存在ではないかと思います。
モーツァルトをはじめ音楽の知識が豊富なので、マーク・モリスは、2002年以来この「モストリー・モーツァルト・フェスティバル」に招聘されおり、今ではこのフェスティバルに欠かせないカンパニーのひとつとなっています。

私が見た公演は3つの小品集でした。
出演ダンサーは16名、MMDGミュージック・アンサンブルの音楽家達は12名、ピアニストとベーシスト2名です。
踊りは全体的に、マーク・モリスらしく自由でオリジナリティーのあるものでした。舞台上で様々な方向から、ダンサーたちが立体的に見えるように良く練られて配置されていました。映画のシーンのように美しくダンサーたちが動いていきます。舞台の真ん中でダンサーが踊っている時にも、舞台の端や他の位置で別のダンサーたちも動いていることが多く、次々に重なって踊られ、移動していくシーンが続きます。

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" Love Song Waltzes "「ラヴ・ソング・ワルツ」Photo by Stephanie Berger

最初に上演された『ラブ・ソング・ワルツ』は、1989年初演のやや短めの作品でした。音楽はブラームスです。ソプラノ、メゾソプラノ、テノール、バリトンの4名の歌手が生で歌い、音楽もとても質が高くて良かったです。
ダンサーたちは、ソロ、3〜4名、5〜6名、9名で踊ったり、そこに一人が通り過ぎて行ったり、次々に素速く入れ替わる踊りが展開していきました。ペアでオルゴールの人形のようにワルツを踊るところもありました。
3人手をつないで輪になって引っ張りあったりして踊るところもありました。基本的にワルツのリズムで社交ダンスのような振付がベースとなり、そこから自由にふくらませて付け加えていて伸び伸びとした踊りでした。

2曲目の『アイ・ドント・ウォントゥー・ラブ』。音楽はモンテヴェルディでワルツが多いダンスでした。こちらもソプラノとテノールの歌も入り、中世の楽器ハープシーコードの生演奏もありました。
全体に同じ振りが繰り返されることはなく、常に振付が変化しながら流れるようななめらかな動きで、自由で開放感のある伸び伸びとしたダンスでした。祈りを込めたような踊りもありました。

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" I Don't Want to Love "「アイ・ドント・ウォントゥー・ラブ」Photo by Stephanie Berger

3曲目の『ザ・トラウト』はシューベルト。ヴァイオリン、チェロ、ビオラの弦楽器とベース、ピアノの演奏で踊りました。
ダンサーたちは次々に歩いて登場し、立ち止まったり、通り過ぎていったりしまいた。そして、1人ずつ歩いは2〜3人くらいで踊りながら、舞台の端から真ん中へ現れ、通り過ぎて行きました。舞台中央あたりまで踊りながら出て来て、また戻っていくなどの流れがありました。あるいは9人のダンサーたちが倒れて、床に寝ころびました。そしてだんだん一人ずつ起き上がって、踊り始めるところもありました。
すごく速いスピードで動き、全体に、ダンサーたちの配置が素晴らしかったです。
(2018年8月11日夜 ローズ・シアター)

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" The Trout "「ザ・トラウト」Photo by Stephanie Berger

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