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ニューヨークで活躍中のバレエダンサーに聞く その1

ワールドレポート/ニューヨーク

インタビュー/平沢あやこ(バレエピアニスト) Ayako Hirasawa

ニューヨーク、人種のるつぼと言われるこの街にはとてもたくさんのダンサーたちが働いています。ダンス・スタジオは、バレエ、コンテンポラリー、ジャズ、タップはもちろん、カリビアンからミクロネシアンなど存在するすべてのジャンルが割拠しています。あらゆるダンスが自由闊達に24時間休むことなく踊られている街ニューヨークから、バレエピアニストとして日々ダンサーたちと仕事をし、交流している平沢あやこがダンサーたちの完熟したダンス生活について、インタビューします。

ナタリア・シェプタローバ Natalia Steptalova(ゲルシー・カークランド・バレエ、ソリスト)

----バレエをどうしてはじめたのですか。
シェプタローバ 4歳の頃、絵のクラスに通いはじめたのですが、教室の隣がダンス教室でした。一目見て、どうしてもやってみたくて、母にお願いしました、そこはバレエと、ロシアの伝統舞踊を教えていて、伴奏はピアノではなく、アコーディオンだったんですよ。その後、家族でモスクワに引っ越しました。そしてボリショイ・バレエ・アカデミーのオーディションを受けて、そこから私のバレエ人生が始まりました。

----プロのダンサーになろうと思ったのはいつですか。
シェプタローバ ボリショイ・バレエ・アカデミーに入学したときですね。非常に競争率が高く、300人中15人ほどしか入学できません。入学するとプロのダンサーになるための厳しいカリキュラムが組まれていますので、自然とプロを目指す姿勢がうえつけられるのです。最高の教育を受ける側に責任感のようなものが感じられます。
私の性格的に、難しいことにチャレンジしてそれを克服することが好きなので、こういった厳しい教育の場所でトレーニングすることは、自分に合っていると思いました。

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----ボリショイ・バレエ・アカデミーは厳しかったですか。

シェプタローバ アカデミーではバレエのレッスンと普通科目の授業がありますからとても忙しく、クラスの合間に少し食べるくらいでした。そして夜7時以降は食べることも、飲むことさえ制限されていましたから、とても痩せていました。それでも2週間ごとに体重をはかられ、一定の体重を超えると翌月には退学になるかもしれないので、みんな食事にはとても気をつけていました。
今はそこまで節制していませんが、学校では栄養学も学びましたので、野菜をたくさん食べるなど気を配っていて、とても健康的な食生活です。

----アメリカではバレエ学校にスナック菓子を売っている自動販売機があってびっくりしまし
た。
シェプタローバ そうですね。アメリカ的ですね。ロシアのバレエ学校では、ジャンクフードを食べてるところを見つかったら、退学になりますからね。

----ご家族はプロのバレエダンサーになることについて、応援してくれましたか。
シェプタローバ 母はとても応援してくれました。父はエンジニアですので、娘がダンサーになることにはよい顔をしませんでした。何度か話し合いましたが、学校を卒業したあとはもう大人なのだから、自分の道は自分で決めなさいと言われました。でも父は今でも私の職業に対して、あまり好意的ではありません。

----ニューヨークに移住した後、最初の仕事はどうやって見つけたのですか。
シェブタローバ 最初はロシア人の経営する小さなダンス・スタジオで教えることからはじめました。そこから Steps on Broadwayのような、ダンスコミュニティが集まる大きなダンス・スタジオを教えてもらい、クラスを受けにいきました。そこでゲルシー・カークランドに会ったんです。 彼女はその頃、ちょうど新しい学校(ゲルシー・カークランド・アカデミー)を立ち上げているところでした。そこで教師として働かせてもらうことになり、数年間教えた後、やはり、彼女の立ち上げたカンパニーで踊ることになったのです。

----ご自分の経験から、新しい場所で挑戦したいダンサーたちへのアドバイスをお願いします。
シェプタローバ ニューヨークに来たときはなんのコネクションもありませんでした。ダンス・コミュニティを探し、人と会い、話し、履歴書を持って行って、仕事を得ました。
新しい場所では人と話すことをためらってはいけません。自分は能力が足りないとか、まだ勉強しないといけないとか、自分で理由をつけて内にこもる必要もありません。まずは試しに外に出て、自分の居場所を探すことです。

----ダンサーとしてと、教師としての仕事のバランスはどうとっていますか。
シェプタローバ 今は教師がおもな仕事です。若い頃はもっと踊りたくて、いろいろなプロジェクトに参加していましたが、カンパニーに所属しないフリーランスのダンサーは常にリサーチして、次の仕事を探していなければなりませんし、複数の仕事の間のスケジュール調整も大変です。リラックスすることができない、慌ただしい生活でした。
今は3、4か所のバレエ学校で教師として働くことで生活を支え、その合間に年10回ほど大きな公演に出演することで落ち着いています。
その他小さなプロジェクト、音楽家とのコラボレーションもあります。リハーサルなしで即興で踊ったり、クリエイティブな時間が持てます。

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----今からキャリアを積んでいく若いダンサーたちへのアドバイスはありますか。

シェプタローバ まずは自分に合ったカンパニーを探すリサーチをすることですね。どういったダンサーが求め られてるのか、振付のスタイルは自分の好きなものか、レパートリー、ツアーがある か・・。カンパニーを見つけたら、一般オーディションではなく、直接コンタクトをとることをおすすめします。自分の熱意が伝わるEメールをビデオと一緒に送るんです。何十人もの ダンサーがいっぺんに受けるオーディションでは、目に留められることは難しいですから。誰かに気づいてもらえることを期待するより、自分からそこへ行くべきです。

----ダンサーとして、辛い時もたくさんあったと思いますが、どうやって乗り越えてきましたか。
シェプタローバ 忍耐強くあること。ダンサーというのは様々な人々とつきあっていく仕事です。いろいろな性格の方がいます。例えば、ディレクターがプロジェクトが予定どおり進まなくて機嫌の悪いときもあるかもしれません。ですが、やはりプロですから、すべてをプロフェッショナルに受け止めるべきです。小さなトラブルから早まってやめてしまったり、他のプロジェクトを探し始めたりせず、落ち着いて対処することがとても大切です。難しいことですが、家に帰って落ち着いて、笑顔になってまた続けていくことがとても大事な世界です。

----すでにキャリアを積まれてますが、まだまだ高めていきたいことなどありますか。
シェプタローバ 私はボリショイ・アカデミーでトレーニングを受けましたので、例えばワガノワとはスタイルが少し違います。ニューヨークのような国際的で、いろいろなスタイルが入り交じった街でプロとして活躍していくうえで、自分のスタイルを保ちつつ、かつ柔軟に新しいものを採り入れていくのはとても大切なことです。ファッションに例えると、すでに自分の得たテクニックが生地だとしたら、スタイルはデザインみたいなものですね。自分のすでに持っているものに自信を持ちつつ、新しいことを採り入れていくべきだと思っています。

----これからの目標と言いますと。
シェプタローバ プロのダンサーが若いダンサーたちと同じ舞台で踊るプロダクションをつくってみたいです。今は、別々に練習して、パフォーマンスのときだけ一緒に公演する、というスタイルが多いですからね。すでにキャリアを積んだダンサーとまだトレーニング中のダンサーとが、もっと交われるカンパニーをつくってみたいです。
それから、私の知り合いのバンドが来年日本に行く予定ですから、ダンサーとして一緒に行って、日本で公演してみたいです!

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----バレエダンサーであることの、最も素敵なことは何ですか。

シェプタローバ 自分の好きなことが仕事であるということです。毎日、好きなことに励んでいるので、仕事という気がしません。一日中が毎日が楽しいのです。

----一番大変なことと言いますと。
シェプタローバ 自分の身体を常にメンテナンスしなければいけないということです。音楽家でしたら、楽器が壊れたら修理に出せばよいかもしれません。だけどダンサーにとっては自分の身体が全てですから、常にベストの状態に保たなければいけません。常に健康でいるというのは、決して易しいことではありませんよね。

----バレエダンサーをめざす日本の子どもたちへのアドバイスをお願いします。
シェプタローバ こちらで日本人の子どもたちを何人も教えたことがあります。とても先生に従順で、まじめですばらしいと思います。けれどもっとアーティスティックになってもいいと思いますよ。バレエを、科学や数学など学校の科目のように淡々とこなすだけでなく、もっとクリエイティブになってもいいのです。もっとリラックスして、楽しめる瞬間をみつけてく欲しいと思います。
日本の方たちを教えていて気づいたのは感情を外に出すのが苦手そうだということです。もっと枠の外に出てくればいいのに、と思います。
それから、最初についた先生のすべてを信じないこと、これは親御さんへのアドバイスでもあります。自分の子どもについてよく理解し、ふさわしい先生を見つけてあげるべきです。そして自分の身体を信じること。こうしろ、ああしろ、と言われて混乱したときは、自分の身体にも、よく聞いてみてくださいね。

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<ナタリア・シェプタローバ>

モスクワ出身。ボリショイ・バレエ・アカデミー卒業後、ロシア国立バレエ団(RNB)入団。ソリ ストとして世界中で公演する。 2010年に渡米。以来ニューヨークを中心に、ゲルシー・カークランド・バレエ団などのソリ スト、ゲルシー・カークランド・アカデミー、ジョフリー・バレエ・スクールなどの名門バレエ学校で教師として活躍中。

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