リモン・ダンス・カンパニーが創立70周年アニヴァーサリー公演で初期の秀作を上演

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ西村
text by BRUIXA NISHIMURA

Jose Limon international Dance Festival
ホセ・リモン・インターナショナル・ダンス・フェスティバル

Lion Dance Company リモン・ダンス・カンパニー
Carla Maxwell:Artistic Director カーラ・マックスウェル:芸術監督

今年はリモン・ダンス・カンパニーの創立70周年アニバーサリーの企画として、「ホセ・リモン・インターナショナル・ダンス・フェスティバル」が開催されました。このフェスティバルは、ジョイスシアターで10月13日から25日まで2週間にわたり、例年よりも大規模な公演でした。出演したのはリモン・ダンス・カンパニーを中心にして、世界7ヵ国から様々なダンスカンパニーが招聘され、リモンの名作15作品を上演しました。

リモン・ダンス・カンパニーは1946年に、ホセ・リモンとドリス・ハンフリーによって創立された、地元ニューヨーク・ベースのモダンダンスのカンパニーです。リモンはモダンダンスの教育にも力を入れてきたパイオニアで、従来のクラシック・バレエとは異なる表現方法のリモン・テクニークを確立しました。リモン・テクニークは今では世界のダンス界へ広まり、スタンダードとなりました。例えば、副芸術監督のロクサーヌ・D'オリンズ・ジュストは、ピナ・バウシュのヴッパタール舞踊団などへ、ゲスト・ティーチング・アーティストとして招聘されています。モダンダンス、コンテンポラリーの分野では、リモン・テクニークが後世のダンス界に影響を与えています。ニューヨークでは、以前、インタビューもしましたイガール・ペリーが率いるぺリ・カペッツィオ・センターにて、リモン・ダンス・カンパニー認定の講師によるリモン・テクニークのクラスが常時、開講されています。
http://limon.org/contact-us/www.peridance.com
リモン亡き後、現在の芸術監督カーラ・マックスウェルは1965年からリモン・ダンス・カンパニーに参加し、間もなくプリンシパル・ダンサーとなり活躍し、1978年に芸術監督となりました。

photo/Nico Guerrero

photo/Nico Guerrero

リモン・ダンス・カンパニーの出演が多い10月24日のプログラムDを観ました。休憩を一度はさんで、4つの作品が上演されましたが、初期の作品が多かったです。
『オルフェオ』は1972年初演で、振付はホセ・リモン、音楽はベートーヴェンの「弦楽四重奏曲第11番ヘ短調Op.95」、ステージングと監督はフランシスコ・ルバルカバ、カーラ・マックスウェル、ローラ・グレン、ニーナ・ワットです。主な出演ダンサーはリモン・ダンス・カンパニーより、オルフェオ役はマーク・ウィリス、エウリディーチェ役はエリス・ドゥリュー・レオン、他は黄泉の国の番人たち3名(女性)です。
今回は、この日に見た才能あふれるダンサーについて書きます。主役のマーク・ウィリスは身体能力に優れ、スタイル抜群で手足がとても長いうえ、美しく柔らかい上質な筋肉に覆われている恵まれた身体のダンサーです。この驚きは、以前、ABTに入る前に見たダニール・シムキン(現プリンシパル)を見た時と同じくらいの衝撃です。ウィリスのように身体に恵まれた素晴らしいダンサーは、なかなか見つけられません。ウィリスはまだ今年リモン・ダンス・カンパニーに入ったばかりの、ニューヨーク出身の若者です。なるほど、カンパニーに入っていきなり、主役に抜擢されるはずだと思いました。リモン・ダンス・カンパニーは、しのぎを削るダンサーたちが世界中からオーディションを受けに来るカンパニーの一つで、優秀なダンサーが集まります。マーク・ウィリスは、要注目の旬のダンサー、これからもウィリスには期待したいです。
この日、他にも才能あふれる気になる女性ダンサーたちが出演していました。リモン・ダンス・カンパニーのダンサーはレベルが高いです。エウリディーチェ役のエリス・ドゥリュー・レオンは、『ダンシーズ・フォー・イザドラ』にも出演。身体にも恵まれていて、手足も長く、とても美しいダンサーです。今年、2015プエルトリカン・デー・パレーズのパフォーミングアーツのライジング・スターに選ばれています。

『ダンシーズ・フォー・イザドラ』 photo/Beatriz Schiller

『ダンシーズ・フォー・イザドラ』
photo/Beatriz Schiller

『ダンシーズ・フォー・イザドラ』に出演したクリステン・フッテも目立っていました。2000年からこのカンパニーに所属しているダンサーで、2005年には「ダンスマガジン」誌で<観るべきトップ25人>に選ばれています。現在、2つの財団がスポンサーとしてサポートしています。

『シャコンヌ』は1942年初演で、振付はホセ・リモン、音楽はバッハの「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ」第2番から「シャコンヌ」、ステージングと監督はロクサーヌ・D'オリンズ・ジュストです。出演ダンサーは、他の招聘されたダンス・カンパニーのコレオアルテの1名です。シンプルな振付ですが、ダンサーの感情表現が素晴らしく、気持ちの高まりを表情に込めて、劇的な踊りでした。エシャッペで飛び上がって宙で回って着地したり、アティチュードが多く、パッセを交互にしながら一歩一歩歩いていくところが多かったです。
『ダンシーズ・フォー・イザドラ』(5・エボケーションズ・イザドラ・ダンカン)は初演1971年で、振付はホセ・リモン、音楽はショパン、生演奏ピアニストはマイケル・チェリー、監督はロクサーヌ・D'オリンズ・ジュスト、カーラ・マックスウェル、ジェニファー・スキャンロンです。出演ダンサーは、リモン・ダンス・カンパニーより、エリス・ドゥリュー・レオン、ロクサーヌ・D'オリンズ・ジュスト、クリステン・フッテなどです。のびのびとした自由な踊りでした。振付は、音楽のリズムと抑揚にピッタリ合っていました。ダンサーたちの感情表現も激しかったです。
『ザ・トレイター』は初演1954年で、振付はホセ・リモン、音楽はガンサー・シュラ―の「シンフォニー・フォー・ベース・アンド・パーカッション」、ステージングと監督はポール・デニスとクレイ・タリアフェロです。出演ダンサーはリモン・ダンス・カンパニーより男性8名で、リーダー役は前述のマーク・ウィリス、主役のザ・トレイター役は1996年からこのカンパニーに所属している中心メンバーのフランシスコ・ルバルカバ、などです。演劇的で、物語性がある作品でした。
(2015年10月24日夜 ジョイスシアター)

photo/Nico Guerrero

photo/Nico Guerrero

『ザ・トレイター』 photo/ Beatriz Schiller

『ザ・トレイター』
photo/ Beatriz Schiller

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