鮮烈なダンスで近年、注目を集めるカイル・アブラハムのバレエベースのコンテンポラリー・ダンス

ワールドレポート/ニューヨーク

ブルーシャ西村
text by BRUIXA NISHIMURA

Kyle Abraham/Abraham.In.Motion カイル・アブラハム/アブラハム・イン・モーション

"Pavement" by Kyle Abraham/Abraham.In.Motion
『ペイヴメント』カイル・アブラハム/アブラハム・イン・モーション:振付

11月2日から5日まで、BAMのFishman Spaceでカイル・アブラハム/アブラハム・イン・モーションによる『ペイヴメント(舗装道路)』の公演がありました。私は11月2日に観劇しました。
BAMの新しい施設、BAM Fisher内のFishman Spaceでは、新しいダンス・カンパニーや実験的、新鋭的なパフォーマンスが行われているので気になっていました。初めてこの劇場で観劇しましたが、今は財政難でクローズしてしまったジョイス・ソーホー(Jyoyce SOHO)のような雰囲気でした。少人数のこじんまりしたカンパニーや、タップダンスの公演にもピッタリなスペースです。
この作品は、休憩なしで、ノンストップで55分間のものです。ダンサーは女性1名、男性7名です。白人男性2名以外は、黒人ダンサーたちでした。
カイル・アブラハムは、近年、頭角を現して注目を浴びている振付家です。今年2016年にドリス・デューク・アーティスト・アワード受賞、2015年にシティーセンター・コレオグラファー・イン・レジデンスなども受賞しています。
80年代〜90年代初頭に全盛期だったアフロアメリカンのヒップホップ・カルチャーのど真ん中で育った世代のカイル・アブラハムは、ペンシルバニア州ピッツバーグで、1970年代後半生まれです。ピッツバーグのヒルディストリクト(Hill District:アフロアメリカン文化の歴史的な場所)にある高校へ通っていたそうです。

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

パフォーマンスを見る前は、ブラックカルチャーやヒップホップを前面に出した作品なのかな、と想像していましたが、実際はしっかりしたバレエベースのコンテンポラリーの振付で、ダンサーたちのレベルが高かったです。アラベスク、アチチュード、パッセを続けたり、ピルエット1回転してジャンプしたり、アチチュードで後ろへ1回転してパッセしたりしていました。つま先と指先は伸びていました。全員、回転が速くてキレがあってよかったです。
みんな身体がしなやかでバネがあり、鍛錬を積んで鍛えあげられていました。カイル・アブラハム本人も踊ったり演技しました。
音楽はバッハやヴィヴァルディ、坂本龍一の曲や様々なヒップホップの曲を、たくさん連続でつないでいました。無音のシーンも多くはさまれていました。
衣装は全員、普段着で、舞台後方にバスケットボールのゴールがついていて、そこがスクリーンになっていて、映像が流れていました。ストリートで起こっている出来事を表現している様子でした。
ダンサーたちは、ソロ、2〜3人、4名、6〜7名などで、次々にストーリーとダンスがつなげられていきました。男女がロマンティックな踊りをしたり、様々なシーンがバラエティーに富んで入れられていました。ダンスは、スピード感があり、メリハリを強調していて、キレがありました。
ダンスも振付もしっかりしていて、見ごたえがありましたが、途中でところどころ、ダンス以外のものをはさんでいました。ジョギングして何週もぐるぐる周ったり、セリフを言ったり、喧嘩する演技をしたり、ポテトチップストルティーリャチップスの袋持ってでてきてバリバリ食べたり、ダンサーのスニーカーを別のダンサーが脱がして裸足にしたりしていました。
客席と舞台が近距離だったので、迫力があってよかったです。
(2016年11月2日夜 BAM、Fishman Space)

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

Photo (C) Carrie Schneider

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