ブラジル人によるボサノヴァとタップダンスを融合した素晴らしいショーがニューヨークで開催された

Felipe Galganni & Company フェリペ・ガルガンニ & カンパニー

"Tap & Tom" by Felipe Galganni「タップ&トム」フェリペ・ガルガンニ:プロデューサー、振付&コンセプト

2月23日、24日に、14th Street Yにて、ニューヨーク・ベースで活動しているブラジル人タップダンサーの、フェリペ・ガルガンニ&カンパニーによる「タップ&トム」の公演がありました。今回は2回目ですが、3公演ともソールドアウトでした。
ブラジル本国ではトム・ジョビンと呼ばれているボサノヴァの巨匠アントニオ・カルロス・ジョビンの名曲を厳選して、バンドの生演奏に乗ったタップダンスのショーというコンセプトです。振付はすべて、フェリペ・ガルガンニです。
ブラジルで活躍している著名な音楽監督カルロス・バウジズをニューヨークに招聘して、ニューヨークのミュージシャンたちを指導して本場のブラジリアン・ミュージックを作り上げました。
バンド演奏と歌もあり、素敵な音楽とタップダンスの両方を味わえる貴重な公演でした。
バンドとダンサーたちは13名で、タップダンサー4名(Felipe Galganni, Christina Carminucci, Alexander MacDonald, Samara Seligsohn,)、ミュージシャン5名(Josh Davis, Xavier Del Castillo, Wallace Stelzer, Wesley Amorim, Felipe Viegas)、ヴォーカル4名(Jackie Ribas, Alice Reys, Chikako Iwahori, Pedro Coppeti)という構成です。スペシャルゲストはBruno Khilkin Secchesです。

フェリペ・ガルガンニはブラジルのサンパウロ出身で、元々、ブラジル本国で成功しているダンサー、振付師です。2010年に、ブラジルから世界的タップダンスの本場であるニューヨークに活動の拠点を移して活動しています。
バレエ経験があるタップダンサーで、振付にもバレエベースが垣間見られます。

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

この"タップ&トム"は、フェリペ自身がプロデューサーとして企画、キャスティング、資金調達もすべて行っています。今回の14作品を振付、芸術監督を務め、ご本人もタップダンサー兼シンガーとして舞台に出演しました。そして今回の公演がフェリペの歌の初披露でした。「タップダンスは音楽の要素が大切なので、いつかタップダンスだけでなく歌も歌って総合的なパフォーマンスをしていきたい」と語り、去年から歌のレッスンを受け始めて準備をしていたのです。今回の公演では、フェリペ本人が1曲歌ってタップダンスも入れた作品を披露しました。その曲は、エリス・レジーナとアントニオ・カルロス・ジョビンの共演アルバム「エリス&トム」(1974年録音)の中から『アグア・デ・マルソ』でした。フェリペは、ご両親がエリス・レジーナとトム・ジョビンのファンだったので、いつも彼らの曲が家で流れていたと話しています。きっといつも幼い時から聴いて育った思い出の曲を、公演で初めて歌う曲として選んだのでしょう。この曲はエリスとトムが交互につぶやいて会話するようにかけあって歌っていくものなのですが、フェリペは一人で二役をやってポルトガル語で歌いました。

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

ショーは休憩なしで1時間ちょっとでした。ジョビンのボザノヴァの名曲14曲が続けて演奏されました。去年の初演よりも曲数も増え、振付もさらに発展して、タップのステップが難しく複雑になっていました。初演の時も素晴らしいと感じましたが、今回観た公演の振付はサンバのステップをベースに入れて、ファンク・タップの複雑なステップもさらにたくさん盛り込んでいて、難しいリズムの速打ちを増やしていて、タップダンスの最先端のレベルに仕上がっていました。そして、全体にメリハリをつけていて、スローで静かなところ、激しく大きな音で速打ちのところを交互に入れて、盛り上げていました。
フェリペが独自に研究開発して編み出した、ブラジリアン・サンバやボサノヴァのリズムのタップダンスのステップが中心なので、今までのリズムタップには無かった新しいステップです。ただ黒人のリズムタップを真似るだけではなく、自分独自のルーツと個性を大切にして自分の中から独自のステップを引き出すというフェリペの方法は、素晴らしいと思いました。

舞台のサイズは初演よりも広くなっていて、舞台後方にバンドがいて、さらに4人のダンサーたちが大きくのびのびと縦横無尽に踊っていました。4人で踊るところ、ペアで踊るところ、歌手がソロで歌うところなど、盛りだくさんでつなげられていきました。
フェリペ自身がソロで踊るシーンも初演よりも増えていました。
『おいしい水』(Agua de Beber 1963年)をヴォーカル4人がアカペラで歌ったところも、すごく美しい旋律でよかったです。ここは一番盛り上がって、美しいアカペラの音階とハーモニーには、鳥肌が立ちました。音楽監督のバウジズの才能が表れていたと思います。

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

「Tap & Tom」(C) William Van Dyke

原曲はすべてボサノヴァですが、静かな曲調ばかりではなくてサンバやアフロサンバなど原住民発祥の激しいブラジルのリズムも融合させて、パーカッシヴなリズムを上乗せして迫力のある音楽の演出でした。
音楽の選曲は素晴らしいですし、ミュージシャンもダンサーたちもとても楽しそうにパフォーマンスしていたので、観ている観客も楽しく乗ってきました。タップダンスの上手な小さな少年がゲストで出演して、可愛らしかったです。

最後にメンバー紹介があり、アンコールで踊り、盛り上がりました。そして大拍手に包まれました。。
フェリペに、「初演よりもステップが進化して、さらに良くなってました」と言うと、「もちろん!ショーは成長していっているよ!」と。
ニューヨークでの今後の活躍が楽しみです。
(2018年2月4日夜 14th Street Y)

ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
ブルーシャ西村

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