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ドレスデン歌劇場バレエ団がニューヨーク公演で4人の振付家によるコンテンポラリー・バレエ4作を上演した

Dresden Semperoper Ballett ドレスデン・ゼンパーオーパー・バレエ

"5" by David Dawson 、 "The Night Falls Quietly" by Joseph Hernandez、 "On the Nature of Daylight" by David Dawson 、 "Vertigo Maze" by Stijn Celis
『5』 デーヴィッド・ドウソン:振付 、 『夜は静かにふける』 ジョセフ・ヘルナンデス:振付 、『陽光の本質』 デーヴィッド・ドウソン:振付、『ヴァーティゴ・メイズ(迷路)』 スティジン・セリース:振付

ドイツ、ドレスデンの歌劇場のバレエ団、ドレスデン・ゼンパーオーパー・バレエのニューヨーク公演が行われた。ゼンパーオーパーは歌劇場という意味で、ドレスデンを州都とするザクセン州の州立オペラハウスである。創立は1825年で、レパートリーは古典とモダンダンスとあるが、コンテンポラリー・バレエと言った方が近い。現芸術監督はカナダ人のアーロン・S・ワトキン(Aaron S. Watkin)、カンパニーを構成する60名のダンサーたちは世界23ヵ国から集まっているという。その中には、もちろん日本も含まれている。

この日はイギリス人振付家、デーヴィッド・ドウソン(David Dawson)の『5』で幕を開けた。これはドウソンが古典の『ジゼル(Giselle)』を独自の解釈で振付けた作品からの抜粋である。音楽は、アドルフ・アダン(Adolphe Adam)のものだが、古典を見慣れた観客には耳新しいものだ。5人のダンサーによって踊られ、男性は黒のTシャツに白っぽいグレーのタイツ、女性は白いチュチュにポアントで快活に踊った。クラシック・テクニックに基づいた振付で、ターンも多く採り入れたコンテンポラリー・バレエだ。全体に女性も男性も体格ががっちりしているという強い印象を得た。女性はポアントで立ったまま床を滑ったり、男性と組んでのピルエットで男性が女性の胴から手を放しても女性はそのまま回転を続けるなど、非常に強いテクニックとバランスを誇示した。速い、テクニカルでエネルギッシュな振りで、非常に健康な若者たちの踊りというイメージは伝わったが、一方でデリケートさをあまり感じない作品とも感じた。

Gina Scott, Alice Mariani, Zarina Stahnke and Michael Tucker in David Dawson's 5 at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu.

Gina Scott, Alice Mariani, Zarina Stahnke and Michael Tucker in David Dawson's 5 at The Joyce Theater.
Photo © Yi-Chun Wu.

『夜は静かに更けて(Ganz Leise Kommt Die Nacht/The Night Falls Quietly)』は、アメリカ人振付家のジョセフ・ヘルナンデス(Joseph Hernandez)の作品。男女4名で踊られたコンテンポラリー・ダンスだ。普段着でステージ手前に後ろ向きに立った4人が左右に身体を揺らせながらゆっくりと奥に向かって歩くところから始まる。一人の男性がエキセントリックともいえる動きをする。女性の一人が加わってユニゾンになって踊る。やがて二組のカップルになって踊り出す。暗い音楽で、葛藤を表現するような動きが続く。もめる一組をもう一組がなだめる様だ。時に男は男を、女は女を慰めるかのように見える。これはコンテンポラリー・ダンスで、強いテクニックのダンサーたちは、早く複雑な振りをこなしている。やがて一組のカップルのみとなり、ゆっくりと暗くなる。人はそれぞれ何かを抱えて生きているが、それでも夜は静かに更けていく、というお話であろう。

Ayaha Tsunaki, Francesco Pio Ricci, Aidan Gibson and Jón Vallejo in Joseph Hernandez's Ganz leise kommt die Nacht at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu

Ayaha Tsunaki, Francesco Pio Ricci, Aidan Gibson and Jón Vallejo in Joseph Hernandez's Ganz leise kommt die Nacht
at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu

デーヴィッド・ドウソンの『陽光の本質(On the Nature of Day Light)』は、純粋な愛とソウルメイトをテーマにした作品。アリス・マリアニ(Alice Mariani)とクリスチャン・バウチ(Christian Bauch)のデュエットであった。心の底からストレッチするような情熱的な動きとリフトが連続する美しい作品だ。ポアントで踊ったマリアニは美しい長いラインで非常に強いテクニックを持っている。ロマンチックというよりは、ニーズを感じさせる踊りと見えた。この日の舞台で最も美しさを感じさせ、印象に残った作品であった。

最後はベルギー人振付家でセットデザイナーのスティジン・セリース(Stijn Celis)の作品『ヴァーティゴ・メイズ(Vertigo Maze)』で締めくくった。一人の女性の音無しのソロで始まり、しばらくダンサーたちが全くの音無しで動く。3人の男性が身体を丸めたまま歩く様な奇妙な形で出て来て、そのまま舞台を横切る。デュエットになった時に音楽(Johann Sebastian Bach)が始まった。抽象的な、奇妙なくねるような動きや円運動が取り入れられており、時に乱暴ともいえる動きだ。非常に奇妙な動きなのだが、不思議な統一感がある作品であった。そんな振りをダンサーたちはするすると動く。凄いとは思うが、見ていて快感もダンサーの美しさも感じさせなかった。非常に難しい筋肉を使う動きで、こうした動きはダンサーの体型にも影響するのではないかと伺われた。

なお、今回の公演はカンパニーから選抜されたメンバーで行われたが、その中に綱木彩葉(Ayaha Tsunaki)と藤本かな子(Kanako Fujimoto)の二人の日本人ダンサーが、そして竹島由美子(Yumiko Takeshima)が衣裳デザイナーとして参加していた。
(2017年11月3日夜 Joyce Theater)

Ayaha Tsunaki in Stijn Celis's Vertigo Maze at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu

Julian Amir Lacey and Alice Mariani in David Dawson's On the Nature of Daylight at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu.

Ayaha Tsunaki in Stijn Celis's Vertigo Maze at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu

Ayaha Tsunaki in Stijn Celis's Vertigo Maze at The Joyce Theater. Photo © Yi-Chun Wu

ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
三崎 恵里

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