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ボサノヴァとタップダンスを融合したフェリペ・ガルガンニの素晴らしいショー

Felipe Galganni & Company フェリペ・ガルガンニ&カンパニー

"TAP & TOM" Felipe Galganni
「タップ&トム」フェリペ・ガルガンニ:プロデューサー、芸術監督、振付、アイデア

4月21日、ザ・プレイヤーズ・シアターでブラジル人タップダンサーのフェリペ・ガルガンニ&カンパニーによる"タップ&トム"の公演がありました。世界初演でチケットはソールドアウトでした。アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノヴァの生演奏に乗って、フェリペ・ガルガンニの振付のタップダンスでした。ブラジルで活躍中の受賞歴がある著名な音楽監督カルロス・バウジズをニューヨークに招聘して、本場のブラジル音楽の質にもこだわって作り上げた公演です。素晴らしい音楽のコンサートとタップダンスの公演で、音楽とタップダンスの両方を相乗効果で味わえる良い機会でした。

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

"タップ&トム"のトム(Tom)というのはアントニオ・カルロス・ジョビンのことで、ブラジル本国では一般的にトムかトム・ジョビンと呼ばれているそうです。今年は、トム・ジョビン生誕90年、ボサノヴァ誕生60年にあたるので、それを祝うタイミングでトム・ジョビン作曲のボサノヴァ音楽だけを使って、バンドの生演奏、歌とダンスの豪華なショーを上演しました。

バンドとダンサーたちのキャストは14名で、タップダンサーは4名(Felipe Galganni, Christina Carminucci, Alex MacDonald, Samara Seligsohn,)、ミュージシャンは5名(Tony Romano, Vitor Gonçalves, Josh Davis, Xavier Del Castillo, Wallace Stelzer)、ヴォーカルは5名(Jackie Ribas, Alice Reys, Juliana Suaide, Chikako Iwahori, Pedro Coppeti)です。スペシャルゲストはMax Pollakです。音楽監督のカルロス・バウジズ自身も、途中、ボディ・パーカッションとして舞台に少し出演しました。

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company
Photo by William Van Dyke

フェリペ・ガルガンニは、元々、ブラジル本国では成功して世界で知られているダンサー、振付師で、ブラジルのミュージカルを振付けたり、ダンサーとして出演したり、テレビ番組や映画にも出演してきました。ブラジルからニューヨークに活動の拠点を移して、活発に活躍中です。ニューヨークの主要なダンススクール(Steps on Broadway、Broadway Dance Center、American Tap Dance Foundation、Joffrey Ballet School)で講師を務め、様々なタップダンスのショーに出演し続けています。 フェリペはブラジルのサンパウロ出身で、9歳からダンスを学び始め、ジャズダンスやクラシック・バレエを学んでいました。そして15歳の時にタップダンスに出会い、これが一番好きだと自分で分かり、その後はタップダンスにのめり込んでいき、タップダンサーとなりました。バレエ経験がある珍しいタップダンサーなので、独自の振付にもそれが垣間見られて、踊りの基礎がしっかりしています。
イタリア系ブラジル人なので顔立ちや体型はイタリアンで、顔が小さくて身長も高いため時々モデルも務めているほどです。品の良い雰囲気の美しいタップダンサーなので、パフォーミング・アーツの世界では大変プラスの要素となり、舞台では抜きん出て見栄えがします。そのうえ、多くのクラスで教える以外も毎日の鍛錬を欠かさず続けているため、数年前からすでにあちこちのタップダンスのショーに引っ張りだこです。American Tap Dance Foundation(ATDF)でも抜擢され、振付を任されたり、"Tap It Out"のチーム・リーダーを務めてきました。
世界的タップダンスの総本山といえるニューヨークで、華々しい活躍を続けているフェリペが手掛けた世界初演のタップダンスのショーということで取材しました。
http://www.felipegalganni.com/
この"タップ&トム"は、フェリペ自身が企画、キャスティング、資金調達も全て行っているプロデューサーでもあります。そのうえ、すべての12作品を振付し、指導し、芸術監督を務め、ご本人もタップダンサーとして舞台に出演しました。

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

ブラジル人音楽監督のカルロス・バウジズは、フェリペの友人でもあり、ブラジル本国で様々なミュージカルなどを手掛けて大活躍している方です。作曲、編曲、教育もできます。 カルロスについて、いかに輝く才能に満ちあふれた素晴らしい音楽家であるかということを、フェリペからお聞きしました。10年前頃、フェリペが真夜中に突然目覚めて、このショーの構想を思いついた時、カルロスにすぐに打ち明けて意気投合したそうです。そしてこのショーのために、カルロスがブラジルからニューヨークに来て滞在し、ミュージシャンと歌手たちを指導して、ニューヨークの現地でブラジル音楽の生演奏を作り上げました。ブラジリアン音楽を知り尽くした気鋭の音楽監督カルロスによるアレンジのお陰で、本場のボサノヴァ音楽をニューヨークの現場に持ってきて再現することができ、ニューヨークのミュージシャンと歌手たちを使ってリハーサルを重ねて実現しました。
http://www.carlosbauzys.com/

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

"TAP&TOM" Felipe Galganni & Company Photo by William Van Dyke

ショーは休憩なしで1時間くらいでした。ジョビンのボサノヴァの名曲が12曲、つなげられて演奏が続きました。演奏と歌から始まり、タップダンサーは4人全員で踊るところ、2名のペアで踊るところ、ソロなど、バラエティーに富んでいて、ダンサーたちの踊りは入れ替わっていきました。
振付は、ボサノヴァやサンバのリズムに合わせて、今までのリズム・タップに無かったような新しい独特のステップとリズムの取り方をしていて、他に似ていない独自の個性が表れていてよかったです。基本的には、タップダンスをリズムを刻む楽器のように使って踊ります。 小さな舞台上を右へ左へ、大きく空間をできるだけ使ってのびのびと踊り、上半身や両手もたくさん使って優雅に動かして踊りました。
ヴォーカルたちは歌いながら、各自手に様々な打楽器やトライアングルを持って演奏していました。その演奏、ハーモニーが見事でした。生演奏は音が分厚く重ねられていて、美しい旋律で素晴らしかったです。ヴォーカルの5人だけで、アカペラで様々な音階に分かれてはもって歌うところもありました。とても歌が上手な女性歌手がソロで歌うところもありました。
フェリペのソロのダンスも用意されていて、盛り上がりました。
全体に、ミュージシャンたちもヴォーカルたちも、ダンサーたちもとっても楽しそうでました。
「あっ」という間に終わってしまったと感じるくらい、素晴らしい公演でした。
公演は大成功したので、この"タップ&トム"はまた来年のショーの計画が決まったそうです。これから毎年、公演が重ねられていくことになるでしょう。独自のタップダンスとコンサートの活動をしているフェリペは、引き続き、独特の個性を大事にした作品を作り続けていくそうです。
初演を見届けることができて、よかったです。これから先が楽しみです。
(2017年4月21日夜 ザ・プレイヤーズ・シアター)


インタビュー=Felipe Galganni フェリペ・ガルガンニ
インタビュ/ブルーシャ西村

Q:どのようにこのショーを準備しましたか。

A:私がまだブラジルにいる頃、10年前くらいから、常にこのショーをやりたいというアイデアがあって、頭の中で考え続けていました。そして去年の10月から、このショーのために具体的に準備をし始めました。私は振付を考え始めましたが、このカンパニーのタップダンサーたちはよく海外へ仕事で出かけるためニューヨークに不在のことが多いので、私は一人で出来ることから準備を進めました。例えば、このロゴ("TAP & TOM")を自分でデザインしましたし、劇場を探してブッキングしたり、音楽監督のカルロス・バウジズに国際電話をして話をすすめて、ニューヨークで地元のミュージシャンたちを探して集めたり、同時平行で様々な段取りを1人でやりました。カルロスはアメージングな音楽家です。私はプロデュースをしました。

Photo/Ignacio Andaur

Photo/Ignacio Andaur

Q:あなたはブラジルにいた頃からタップダンサーでしたか。

A:はい。ブラジルでもタップダンサーでした。ダンススクールでタップダンスをたくさん教えていました。また、振付もたくさんしていました。ミュージカルの振付をたくさんして出演もしました。でもブラジルではその頃は、私自身のプロジェクトの振付をしているわけではありませんでした。私は、誰か別の芸術監督の下で、依頼された振付をしていました。その後、私は自分がやりたいショー、自分自身のプロジェクトで振付作品を作って上演したいと思いニューヨークに引っ越してきてからは、少しずつやりたいプロジェクトを実現してきました。ニューヨークで、私はタップをさらに学び続けながら、私自身のタップのスタイルを模索して作り上げてきました。そして、一つの短い作品をいくつか振付して上演しましたが、私のフルレングスのショーをやりたかったのです。フルレングスだと、様々な側面から私の作品作りのアプローチができて表現できるからです。そして今回、私のフルレングス・ショーが初めて実現できました。

Q:ブラジリアン音楽を使ったプロジェクトですか。

A:はい。私はブラジル人なので、ブラジルで生まれ育つ中で、幼少時からいつもブラジリアン音楽を聴いてきて、特にトム・ジョビンの音楽、ボサノヴァが大好きです。今年はトム・ジョビンの生誕90年で、ボサノヴァが誕生して60年の節目でもあるので、それを祝うことも兼ねて、このショーを実現することを決めました。

Q:あなたはブラジル本国では、すでに元々、成功していて知られているダンサー、振付師でしたよね。

A:はい。ブラジルでは、タップダンスのクラスをたくさん教えていたし、多くのミュージカルをたくさん振付しました。プロの振付家として振付し始めたのは19歳からです。プロのダンサーとして仕事をし始めたのは15歳からです。私はいつも、ダンス(振付)をクリエイトすることが大好きだったのです。

Q:ブラジルで有名だったのに、なぜニューヨークに引っ越してきて、チャレンジして一からやり直すことを選んだのですか。

A:ブラジルでは、振付はタップダンス以外にもジャズダンスとかミュージカルとか、他のジャンルのダンスも作っていましたが、それは仕事で依頼を受けて作っていたもので、私が本当にやりたいスタイルではなかったからです。私はタップダンスがやりたかったのです。私は他のダンス教育も受けてきたので、クラシック・バレエ、ジャズダンス、ヒップホップなど、他のジャンルの振付も出来ます。元々、私のベースはいろいろ踊れるダンサーで振付師ですが、でもタップダンスが一番好きなのです。私はタップダンサーなのです。他のダンスも学んで知っていることは、違う表現が出来ることにつながるので、タップダンサーとしても様々な側面から役に立っていますから、やっておいて良かったです。
また、ニューヨークに来た理由は、ブラジルではもうタップについて何も学ぶものが無いので、さらにタップを学んで発達していきたいからです。私はブラジルにいた頃から、タップについてさらに学ぶべき情報がニューヨークにはあると分かっていました。タップダンスの分野は、ニューヨークが世界一なのです。タップダンスは、ニューヨークで発達していったものなのですから。ここにはタップの最高の先生が大勢いますし、最高の環境です。

Q:ニューヨークにはいつ引っ越してきましたか。

Photo/Ignacio Andaur

Photo/Ignacio Andaur

A:2010年に、22歳の時にニューヨークに来ました。ブラジルで自分の車を売ってお金を作って、誰も知っている人がいない状況で、一人で来ました。そして少しずつ、タップダンサーの友だちを作っていきました。

Q:あなたのタップダンスのスタイルはどんどん進化していっているように感じます。練習はハードにこなしていますか。

A:はい、私のタップはさらにどんどん進化して、発達していっています。練習はハードに毎日欠かさずやっています。タップはクラスで教えることも多いですが、その自分のクラス以外に自分自身の練習時間も設けて、毎日練習を続けています。

Q:ヨガにも通っていらっしゃいますよね。

A:はい、ヨガはタップダンサーにとって大切な身体のケアだと確信しています。タップダンサーはいつも同じ動きをするので、放っておいたら身体のストレッチを全くしないため、タップばかりをやるのは肉体的には良くないです。タップダンサーは、ストレッチになるヨガを意識的に毎週やることが大事だと思うのです。ヨガは精神にも良い作用があって、ピースフルですし、自分の中心に意識を置くことができます。

Q:あなたの振付は独特で、オリジナリティーがあります。リズムタップといえば、元々は黒人のタップダンサーたちがファンク音楽やヒップホップのリズムでステップが発展していったものが主流ですが、あなたのステップは独自に開発したもので、他のタップダンサーの振付と似ていないので、素晴らしいと思います。

A:私のタップの振付はオリジナルのムーヴメントです。ブラジリアン音楽からサンバ、アフロサンバなどから、リズムを引き出して私のタップに融合させています。私のタップは、ブラジリアン音楽のリズムから発生しています。リズムによって身体が自然に動き、ムーヴメントが生まれて、タップのステップが生まれます。音楽、リズム、身体、タップはすべてが、つながっているのです。

Q:どのように振付しましたか。

A:この作品はとても早く振付できましたよ。10月から毎週1回、3時間のリハーサルだけだったので、その時にダンサーたちが集合して、週1回だけで短期間で集中して振付を12曲分、完成させなければならなくて、クレイジーでした。集合して、キャストの4人で踊りながら、みんなでその場で振付を完成させていくやり方で作りました。短時間で振付を完成させなければならなかったという制約の中で、私が選んだ振付方法は、「考えすぎないで、どんどん振付を出す」ということで、私は「ただ振付をクリエイトしただけ」でした。他の分野のアーティストも、時には、このように作品をクリエイトする場合もあるものです。

Q:今回のショーの音楽もとても良かったです。

A:音楽は、音響を一流のサウンド・エンジニアにやってもらったのです。Brendan Delaneyというブロードウェイ・ミュージカルのサウンド・エンジニアなのです。音が違ったでしょう、素晴らしい音響だったでしょう?
ミュージシャンたちは、ニューヨークの人たちを集めました。ブラジル人は1人だけです。でもそれ以外のミュージシャンも、以前、ブラジリアン音楽を演奏した経験がある人たちばかりです。ショーのための音楽は、リハーサルを重ねなければならないため、譜面を読めて音楽理論が身についているミュージシャンである必要があるので、大学で音楽を専攻していた人たちばかりです。譜面が読めない自由なストリート・ミュージシャンはショーのための音楽は演奏できないからです。

Q:将来の活動でしていきたいことはどんなことですか。

A:タップダンスの自分の振付を作り続けて、自分自身のショーをクリエイトし続けて、ただただクリエイトすることばかりやっていきたいです。このまま、今のような活動をし続けていくことです。今回のような自分のショーを上演することは、舞台上にミュージシャンもダンサーも含めて14名もいるし、ステージ・マネージメント、サウンド・エンジニア、照明など多くのスタッフを必要としますし、劇場を借りたり、予算がかかります。今は私がすべてオーガナイズしていますが、少しずつ様々なヘルプや寄付を集めつつ、工夫しながら創作活動をし続けていきたいです。
(2017年5月23日 グリニッジビレッジ)

ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
ブルーシャ西村

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