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ディラン・トマスの詩の朗読により力強く明確な解釈で踊られた、クリストファー・ブルースの『Ten Poems』ほか

Scottish Ballet スコティッシュ・バレエ

"Sinfonietta Giocosa" by Bohuslav Martinu、"Motion of Displacement" by Bryan Arias、"Ten Poems" by Christopher Bruce
『シンフォニエッタ・ジオコサ』 クリスタファー・ハンプソン:振付、『モーション・オブ・ディスプレースメント』 ブライアン・アリアス:振付、『Ten Poems』 クリストファー・ブルース:振付

スコットランドの国立バレエ団、スコティッシュ・バレエがニューヨーク公演を行った。英国バレエの強い影響を感じるカンパニーではあるが、スコットランドという独特の国の事情を感じさせた舞台であった。

まずは、芸術監督のクリストファー・ハンプソン(Christopher Hampson)の作品、『シンフォニエッタ・ジオコサ(Sinfonietta Giocosa)』で幕開けした。ボホスラフ・マルティヌー(Bohuslav Martinu)の同名の曲を踊りで視覚化した作品である。12人の男女ダンサーは全員黒ずくめの衣裳。特に女性は黒の胸のカットが深く見えるレオタードに薄い黒タイツ、黒のポアントという、セクシーないで立ちだ。
振付はオーセンティックなクラシック・テクニックで、ダンサーたちは良くトレーニングされ、全員非常に美しいラインを持っている。きびきびとした動きを全員がユニゾンで踊ると、美しい迫力があった。音楽の視覚化だが退屈させない強いテクニック、シンプルだが美しい照明、良くオーガナイズされ、リハーサルされた作品で、上品な幕開けとなった。

次に上演されたのは、ブライアン・アリアス(Bryan Arias)振付の『モーション・オブ・ディスプレースメント(Motion of Displacement)』。日本語で言うと、「外れた形の動き」という意味だ。 男女それぞれ5人ずつで踊られた。暗闇の中に三つの裸電球の様な照明が落ち、白いトップとグレーのパンツの10人のダンサーが群像の彫刻のように立っている。二組に分かれて女性のソロがリードして踊りが展開する。ソックスで踊っているダンサーたちは皆、美しいラインだが、ダンスのタイトルを象徴するかのように、ダンサーに限界を要求するコンテンポラリーの振付だ。困難で奇妙な動きもあるが、良く踊りこなしている。ソロやデュエットが展開した後、女性は白いレオタード姿になる。改めてクラシック・トレーニングの行き届いた、本当に美しい体のダンサーたちと分かった。無音で動く部分も意識を逸らせないほどダンサーの集中力が凄い。奇妙な動きが優れたダンサーたちに消化されて、美しい動きに変化していく。最後に元のポーズになり一番端の女性が歩き去って終わった。

Sophie Martin and Victor Zarallo in Bryan Arias' Motion of Displacement Photo by Andy Ross

Sophie Martin and Victor Zarallo
in Bryan Arias' Motion of Displacement
Photo by Andy Ross

最後に演じられたのはクリストファー・ブルース(Christopher Bruce)振付の『Ten Poems(10の詩)』であった。これは詩人ディラン・トマス(Dylan Thomas)の詩10作に、全く音楽を交えず、詩の朗読だけで振付けた、非常に個性的な作品であった。
3人の女性が紙をまき散らしながら後ろに向かって歩く。それを男性たちが拾って読みながら消える。一人の男性が朗読される詩に対して踊る。後ろの幕が開くと、黄緑色の背景になるが、全体的に暗い照明だ。詩の内容に応じて、次々と踊りが展開する。言葉の助けがあるせいか、ダンサーたちの解釈も明確で、力強く踊られている。特に印象的だったのが、"The Hunchback in the Park"の場面。hunchbackに扮したジャミエル・ローレンス(Jamiel Laurence)はコートを着て踊ったが、別に背中を丸めるわけではないが一見して背骨の不自由を理解させる振付だ。彼をかばう女(マージ・ヘンドリック/Merge Hendrick)と彼をからかう若者たちの物語が展開する。ヘンドリックはグラハム・ダンサーを想像させるような、美しいスタイライズされた動きが印象的だった。「ラメント(Lament)」と題された場面では、酔っぱらいの男(ヴィクター・ザラーロ/Victor Zarallo)の3人の女たちとのずさんな関係を描いている。その後に続く場面は、男女が戦争のために別けられる様を描いた。男性のみが踊る軍事的なイメージが表現され、「死は領土を持たない(Death shall have no dominion)」で倒れる男たちを前に嘆く女たちが描かれる。領土問題に苦しむスコットランド独特の事情を感じさせた。一切音楽はないが力強く演じられ、振付にニュアンスを持たせる大切さを感じさせる作品であった。

全体を通じて非常にまじめで深刻な作風で、欲を言えば、アメリカ人の様な観客はユーモアのセンスがあるともっと受け入れられる。しかし、これもその国の特徴を描いているもので、それはそれで尊重すべきであると思われた。
(2017年4月7日夜 Joyce Theater)

Christopher Harrison, Thomas Edwards, Andrew Peasgood and Eve Mutso in Christopher Bruce's Ten Poems     Photo by Andy Ross

Christopher Harrison, Thomas Edwards, Andrew Peasgood and Eve Mutso in Christopher Bruce's Ten Poems Photo by Andy Ross

Eve Mutso and Jamiel Laurence perform The Hunchback In The Park in Christopher Bruce's Ten Poems    Photo by Andy Ross

Eve Mutso and Jamiel Laurence perform The Hunchback In The Park in Christopher Bruce's Ten Poems Photo by Andy Ross

ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
三崎恵里

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