ダンサーたちが優れたテクニックと美しいラインを誇示した、コンプレクションズ・コンテンポラリー・バレエ
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掲載
Complexions Contemporary Ballet コンプレクションズ・コンテンポラリー・バレエ
"GUTTER GLITTER" "SO NOT A... " "STAR DUST" by Dwight Rhode、Desmond Richardson
『ガター・グリッター』、『So Not A...』、『スター・ダスト』 ドワイト・ローデン、デズモンド・リチャードソン:振付
ドワイト・ローデン(Dwight Rhoden)とデズモンド・リチャードソン(Desmond Richardson)が主宰するコンテンポラリー・バレエ・カンパニー、コンプレクション・コンテンポラリー・バレエが恒例のニューヨーク公演を行った。
今年のローデンの新作、『ガター・グリッター/貧民街の輝き(Gutter Glitter)』は、「コラージュ・シリーズの第一場面」というサブタイトルが着いている。
かなり長い作品で、様々な音楽が使われ、多くの男女ダンサーたちによって踊られるが、作品に物語性はなく、あくまでもこのカンパニーのシンボルである、強いバレエ・テクニックにフォーカスが当てられていると思われた。プログラムにはロシアでトレーニングを受け、マリインスキー劇場やエイフマン・バレエで踊った経験を持つナティア・ケゼヴァゼ(Natiya Kezevadze)を中心とした作品と言及されていた。だが、作品全体を通じて芯を取って踊ったターク・ウオーターズ(Terk Waters)の方が目立つ構成になっており、ケゼヴァゼはむしろウオーターズの相手役に見えた。この二人を始め、カンパニー・メンバーは全員素晴らしいダンサーで、確かなテクニックと美しいラインを誇示した。残念なのは、この作品に続いて第一幕を構成した『So Not A...(Gutter Glitterの終幕の一つ)』と共に、テクニックを追及するのみで、難しい振付を見事にこなすダンサーたちは素晴らしいが、観客に届けるものがほとんどなかったこと。また、新作のせいか、リハーサルが行き届いておらず、ユニゾンで踊るところがばらばらになっていたのも残念であった。
Complexions 2017 Photo Moira Geist
Terk Waters, Natiya Kezevadze Photo Moira Geist
次はアメリカのシンボル的なシンガーソングライター、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)の曲にインスピレーションを得た作品、『スター・ダスト(Star Dust)』(A Ballet Tribute To David Bowie)で、これもローデンの振付。舞台の後ろから放射状のライトの照明をいくつも当てた中にダンサーたちが立っているところから始まる。ダンサーは全員、奇妙な化粧を施している。デヴィッド・ボウイの曲、9曲に振付けられた作品をリードするダンサーが口パクで歌いながら、後ろの群舞と共に踊る。
女性たちはポアント・シューズを履いて踊った。最初はダンサーが口パクで歌うのが奇異にも、安っぽくも見えたが、4番目の『Space Oddity』で男性の一人がポアントを履いて踊った作品で、上半身裸のため素晴らしい筋肉が見え、観客の意識が口パクから踊りに移った。
Terk Waters in "Str Dust" Photo Breeann Birr
ポアントで立ってステージを歩いたり、他の男性たちが彼をリフトしたり、サポートしながら踊ったが見せる物を持つダンサーだ。この辺から口パクをすることでダンサーの個性が出るようになった。この作品に観客をしっかり巻き込んだのは、その次の曲、『1984』で、黒の短いジャケットを羽織ったグレッグ・ブラックモン(Greg Blackmon)がこの曲を歌うボウイそのものになって激唱しながら踊った場面であった。ショーダンスの様になったが、観客を熱狂的な雰囲気にした。
リードダンサーそれぞれが与えられたテーマとソロを熱演しているのと、後ろでサポートしながら踊るダンサーたちも非常に楽しんでおり、親しまれた曲の数々と共にこの作品を成功に導いた。音楽とダンスの楽しさを伝えると同時に、ダンサーたちの顔が見える作品であった。
(2017年1月27日夜 Joyce Theater)
Sergio Arranz Photo Ani Collier
Company in "Star Dust" Photo Breeann Birr
2017 Company Photo by Rachel Neville
ワールドレポート/ニューヨーク
- [ライター]
- 三崎恵里