映像を駆使しスピーディな展開で魅せた『くるみ割り人形』の現代版、ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニー

Peridance Contemporary Dance Company
ペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニー

" The Nutcracker;A Contemporary Look"  Conceived and Choreographed by Igal Perry
『くるみ割り人形;ア・コンテンポラリー・ルック』イガール・ペリー:芸術監督、創作&振付

12月9日から11日まで、ペリダンス・カペッツィオ・シアターでペリダンス・コンテンポラリー・ダンス・カンパニーによる、『くるみ割り人形;ア・コンテンポラリー・ルック』の公演があり、5回上演されました。日本人留学生も多く受け入れてきているペリダンス・スクールを創立、経営しているイガール・ペリーが率いるカンパニーで、1984年に創立されました。この作品は、ニューヨーク・タイムズでは、「ニューヨークで観るべき『くるみ割り人形』6つ」のうちの一つだと評されています。イガール、ペリダンスの公演は時々取材を続けてきましたが、まだ『くるみ割り人形』は見たことがありませんでした。
音楽は主にチャイコフスキーです。さらに加えた音楽は、ヨハン・シュトラウス、レ・タンブール・ドゥ・ブロンクスです。
コンセプト、振付、舞台美術はすべて、芸術監督のイガール・ペリーによるものです。イガール・ペリーについては、このダンスキューブでインタビューをしたことがありますが、とてもアーティスティックな雰囲気の方で、素晴らしい振付の才能があふれています。そのうえ、ダンス教育に力を入れていて多くのプロ・ダンサーを育成しており、ダンス・カンパニーも率いて、ニューヨークをベースに大活躍しています。毎年、日本やヨーロッパでもワークショップを行っています。

Photo/ Darial Sneed

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このイガールによる『くるみ割り人形』は、ア・コンテンポラリー・ルックというサブタイトルのとおり、クリスマス時期におなじみのクラシック作品の『くるみ割り人形』の現代版で、オリジナルの創作を加えています。
ドロッセルマイヤーにはイガール・ペリー自らが扮していました。クララの子供役はルシア・フランク、プリンセスとマザー・フィギュアはムゲ・バヤモグル、プリンスとファザー・フィギュアはクレイグ・ディオンヌ、道化師はケヴィン・ガルシア・モントウトです。カンパニーの出演ダンサー14名の中には日本人(ノナカ ミドリ、スギムラ エリコ)もいます。
ゲスト・アーティストは、タップ・ダンサーのケイレブ・タイシャー、マイク・エスペランサ。その他の出演ダンサーは、ペリダンス・サーティフィケイト・プログラムの生徒23名、中に日本人のスギムラ エリコがいました。他は、ペリダンス・ユース・アンサンブル18名、ペリダンス・プレ・プロフェッショナル・コア・プログラム31名の中に日本人のハシモト サヤがいました。出演ダンサーの人数は多く、大掛かりな公演でした。

Photo/ Darial Sneed

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3階建てのペリダンスのビル1階にある舞台は小さめなのですが、舞台美術、舞台セットは、白い大きめの衝立のようなスクリーンを何枚も置いて、そこに舞台背景としての映像が映されて画面が次々に変化していき、スクリーン自体も移動が続けられました。その空間が、最大限に舞台として生かされる工夫が感じられ、素晴らしいアイデアだと思いました。スクリーンに映し出される映像は、イガール自身が制作していて、現代のニューヨークの街並み、グランドセントラル駅周辺などが映り、そこからイーストビレッジにあるペリダンスへと移動していきました。
イガールが扮しているドロッセルマイヤーが、大きな長いマントを羽織っていて、そのマントを一振りひるがえすと、舞台のシーンが変わっていきました。ここではドロッセルマイヤーは、人差し指を立ててマントでシーンを変えていく魔法使いのような役割で、次の出演ダンサーを紹介、つなげる大事なスパイス役でした。このお陰で、大勢のダンサーたちを次々に出演させながらシーンを切り替えていくことがスムースにできており、これも面白いアイデアでした。イガールは、ドロッセルマイヤーがピッタリはまり役で、似合っていました。
振付は、クラシックバレエの『くるみ割り人形』とは全く違っていて、すべてオリジナルの踊りでした。音楽は同じものを使い、振付はバレエベースですが、バレエシューズだけでなくトウシューズも使う独自の踊りでした。ヒップホップ、タップダンスなども採り入れられ現代的な雰囲気がでていました。

Photo/ Darial Sneed

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マザージンジャーは、ゲスト・アーティストのマイク・エスペランサです。大柄で太めの男性ダンサーで、高いハイヒールでカラフルな衣装で、ドラッグクイーンのようでした。周りの子供たち、ダンサーたちは、途中でエスペランサの衣装のミニスカートの端をそれぞれが持って引っ張ると、それはストッキングのように伸縮性の強い素材で、スカートの長さは5倍くらいに伸びて、カラフルな伸びたスカートを持ったままエスペランサを囲うようにダンサーたちが周りをぐるぐる回って踊りました。ディスコ風の音楽と踊りでした。これは、なかなかスパイスの効いた演出でした。
中国の踊りは、上半身裸で下はジーンズの2人組のアジア人の男性でした。スピード感と迫力がある踊りでした。
スペインの踊りは男女ペアで、バレエシューズで踊りました。イガールの振付は全体的に、右回転、左回転が次々に入れ替わり、回転も多く、スピード感があり、美的センスの良いバランスの取れた踊りです。
特に踊りが上手で目立っていたのは、道化師はケヴィン・ガルシア・モントウトでした。身体能力が高く、踊りには余裕があり、かなり稽古を積んでいることが伺えました。

Photo/ Darial Sneed

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最後も、映像がスクリーンに映り、ドロッセルマイヤーと道化師がペリダンスの建物の壁からスッと幽霊のように抜け出てきて、そのマントをはためかせると全部消え、クララ役の女の子だけその場に残り、終わりました。すべてクララの幻だったといような演出でした。
大勢のダンサーたちを出演させて、オリジナルの独創的な振付で、楽しくカラフルにまとめていました。
(2016年12月9日夜 ペリダンス・カペッツィオ・シアター)

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ワールドレポート/ニューヨーク

[ライター]
ブルーシャ西村

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