クイーンズランド・バレエ史上初!日本人プリンシパルダンサー、吉田合々香(ねねか)60周年記念ガラ公演で発表された

ワールドレポート/オーストラリア

岸 夕夏 Text by Yuka Kishi

Neneka Yoshida has been promoted to the principal rank of the Queensland Ballet.
The announcement was on the stage of the 60th anniversary Gala program.

オーストラリア第3の都市ブリスベンを本拠地とするクイーンズランド・バレエ団は1960年に創立され、団員数は59名。60周年記念ガラ公演で日本人初のプリンシパルランクに昇格した吉田合々香を含めて4人の日本人ダンサーが所属している。クイーンズランド・バレエ団はダンサーを育成するクイーンズランド・バレエ・アカデミーを併設し、昨年完成したばかりのビル内にはアカデミーの6つのスタジオ、ジム、医療チーム、教室などを備えている。これはクイーンズランド・バレエ団が地域社会と密接に繋がり、財政的にも上手くいっている証しだろう。

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Queensland Ballet " Don Quixote" Neneka Yoshida Photo by David Kelly

クイーンズランド・バレエ団の現芸術監督はリー・ツンシン。彼の自伝『小さな村の小さなダンサー(原題Mao's last dancer) 』は世界中で出版され、映画化もされた。2012年にツンシンが第5代目芸術監督として就任して以来、バレエ団の定期会員数とチケット収入は格段に増大した。2019年は95公演が行われ、全幕物語バレエを含めて16の新たな作品が制作された。この中にはアカデミーのガラ公演や英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団との共同制作も含まれる。(2019年クイーンズランド・バレエ団の年次報告書より)

吉田合々香は2013年ローザンヌ国際バレエコンクールのファイナリスト。審査員であったツンシンからスカウトされ、2014年に入団した。新型コロナウイルスにより1年延期された60周年記念ガラ公演で吉田が特に高く評価されたのは、『ドン・キホーテ』の結婚式のパ・ド・ドゥ。
オーストラリアの著名な舞踊評論家デボラ・ジョーンズは「吉田合々香の演技は際立っていた。安定した軸で素晴らしいフュッテを軽々とこなし聴衆を魅了」と有力全国紙「ジ・オーストラリアン」で評している。また、アート誌「LIMELIGHT 」は「吉田合々香は昨年末より芸術的な開花を見せた。生き生きとした表現に確かな技術のキトリは、プリンシパル昇格を発表するにふさわしい演技だった」と称賛している。

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QB "Cloudland" Neneka Yoshida & Camilo Ramos © David Kelly

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" Giselle" Neneka Yoshida & Joel Woellner

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QB " Études " Neneka Yoshida and artists of the Queensland Ballet Photo by David Kelly

60周年記念ガラ公演は5人の歴代芸術監督の貢献を讃え、プログラムは次の通り。7つの演目のうち4作品が3人の過去の芸術監督の振付作品だ。
『ショパン パ・ド・ドゥ』(Charles Lisner /初代芸術監督)、『Cloudland』 パ・ド・ドゥ『リトルマーメード』(François Klaus /4代目)、『椿姫』パ・ド・ドゥ(Harold Collins / 3代目)、『カルミナ・ブラーナ』(Jacqui Carroll)、『ドン・キホーテ』結婚式のパ・ド・ドゥ(Marius Petipa)、『エチュード』(Harald Lander)

吉田はガラ公演では、『ドン・キホーテ』の他に、『エチュード』『Cloudland 』『椿姫』の4作品に配役され、1日に2公演ある日は、昼と夜の部で4役を踊ることもあった。

ガラ公演最終日の翌日に、プリンシパル昇格発表時の心境などについて電話でお話を伺った。

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Announcement of promotion to Principal artist Photo: Courtesy by the Queensland Ballet

----プリンシパル昇格の発表を聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか。

吉田 『エチュード』の大役を踊り終えた安堵と達成感を味わっているカーテンコール中に、突然ツンシン芸術監督が舞台に登場しました。誰かの昇格発表らしくて、最後に自分の名前が読み上げられた時、信じられないくらい驚きました。バレエを始めた時からの夢だったプリンシパルダンサーになった喜びと、小さな頃から支えてくれた家族への感謝の気持ちがこみ上げてきました。

----ターニングポイント、または自身を大きく変えた出来事はどんなことでしたか。

吉田 ヨーロッパで学んだ先生のほとんどがパリ・オペラ座の元エトワールで、芸術面や基礎は叩き込んでいただきました。バレエダンサーにとって一番大切なのは観客の心に伝わるような踊りだと思いますが、それが自分には足りないことをオーストリアにきて実感しました。初めて演技を伴う大きな役は『ラ・バヤデール』のニキヤでした。演技をするのではなく、舞台上でその人物になりきって生きなくてはならないということを、リハーサルと舞台を通して実感しました。最近では『ジゼル』もダンサーとして成長できた作品です」

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Announcement of promotion to Principal artist Photo: Courtesy by the Queensland Ballet

----クイーンズランド・バレエ団の特色を話していただけますか。

吉田 クラシックの演目をとても大切にしていまして、1年を通して多くのクラシック作品を上演します。たくさんの国籍のダンサーが所属しています。皆がお互いを温かくリスペクトして支え合っています。これはもちろん舞台でも変わりません。一人ひとりはどんなに小さな役を踊っていても、それに全身全霊を込めて演じるエネルギーがあります。コール・ドであっても自然に学んで受け継がれているバレエ団です。

----新型コロナ禍でも心身を支えることができたものはなんでしたか。

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写真は本人提供

吉田 4ヶ月のスタジオ閉鎖はショックと同時に恐怖でもありました。でも開き直って、4ヶ月後に絶対上手くなってやろうと自分で決心しました。家族もいないので孤独な時間でしたけれど、4ヶ月を無駄だったとは思いたくなかったのです。
生身の自分と向き合い、ダンサーとしての質を上げるための良い機会でした。技術の改善のために自宅の小さなスペースで練習する自分を撮って、これまで気づかなかったたくさんのことに気づくことができました。目標を持って日々の小さな改善を楽しみに変えていくことができたので、4ヶ月間それほどネガティブにならずに過ごすことができました。

ロックダウンが行われ、心身ともに閉じ込められた期間を吉田はこのように語った。困難な状況をポジティブに捉え、逆境に打ち勝って得られた自信、それがプリンシパル昇格へと結実したのだ。
クイーンズランド・バレエ団は2008年に初来日公演を行なっているが、その時の上演演目は、今回のガラ公演でも上演された『リトルマーメイド』。吉田はカンパニーの日本公演で舞台に立つ夢も語っていた。
(2021年3月21日電話インタビュー)


吉田合々香(ねねか)
金沢市出身。宮西圭子に師事の後、Dominique Khalfouni、Victor Ullateの下で学ぶ。パリ・コンセルヴァトワールでClaude de Vulpianらに師事し、ディプロマを取得して卒業。2013年ローザンヌ国際バレエコンクール、ファイナリスト。審査員であったQueensland Balletの芸術監督Li Cunxinにスカウトを受け2014年に入団。今年3月6日にプリンシパルに昇格した。これまでに『シンデレラ』や『ジゼル』、『ラ・バヤデール』など多くの作品で主役を務める。

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