デヴィッド・ホールバーグ新芸術監督による2021年オーストラリア・バレエ団の年間プログラムが発表された

ワールドレポート/オーストラリア

岸 夕夏 Text by Yuka Kishi

The Australian Ballet 2021 season program was announced by the new Artistic Director David Hallberg

デヴィッド・ホールバーグ新芸術監督の正式な就任より、一足早い2020年12月1日に、オーストラリア・バレエ団の2021年シーズンプログラムが発表された。
「新たな時代」と題した2021年プログラムの冒頭挨拶で、ホールバーグは前任者のデヴィッド・マカリスターの20年の功績を称え、自身が世界中で培った経験をダンサーに伝えてゆき、世界中の最高のダンスをオーストラリアに招くとともに、オーストラリア・バレエ団を世界中に紹介していく意気込みを語っている。

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David Hallberg with Principal Dancers of The Australian Ballet © Pierre Toussaint

昨年3月にオーストラリア中がロックダウンされた後、オーストラリア・バレエ団は一度も舞台に戻ることができなかった。オーストラリアでは各州の政府が新型コロナウイルス対策の直接の指揮をとり、どの州政府も対応はかなり迅速だ。例えば昨年12月にシドニー北部郊外で17人のクラスターを確認したその48時間後には、罰金を伴った一部地域のロックダウンが施行された。政府のコロナ対策を念頭に、今年の演目は様々な状況を想定した綿密なプログラムが組まれたと思われる。
およそ1年ぶりとなる今年最初の公演地は、マーガレット・コート・アリーナ。テニスの国際4大大会の一つである全豪オープンの会場である。(収容数7500人)

6つのそれぞれのプログラムには、新芸術監督ホールバーグの思いや視点が記されている。

「バレエー夏のひととき」

「私の芸術監督最初のプログラムでは、カンパニー全体の才能をガラ公演にします。多彩な技と芸術性の双方が発揮できるレパートリーを組み、新たな気持ちで舞台に復帰します。これらのモダン、クラシック・バレエは彼らの生命線であり、舞台で表現するダンサーの、まさに彼らの存在理由なのです」

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「バレエー夏のひととき」
The Australian Ballet "Summertime at the Ballet" Amber Scott © Pierre Toussaint

「ニューヨーク ダイアレクト」

「観る点においても、バランシンの『セレナーデ』以上に私を満足させるバレエはありません。透明な輝きがあれば複雑である必要がない、というクリエイティブの信念の好例です。
洞察力があり、オリジナリティに溢れ、現代の最も知的なクリエーターのひとり、それがパム・タノウィッツです。彼女の新作は、私がオーストラリア・バレエ団で最初に委嘱した作品になります。カンパニーの豊かな作品群の中に、もう一つ素晴らしいレパートリーが加わるのです」

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「ニューヨーク ダイアレクト」
The Australian Ballet "New York Dialects" Ako Kondo and Amber Scott © Pierre Toussaint

「カウンターポイント」

「伝統と華麗さを融合させたプティパの『ライモンダ』。フォーサイスはこの歴史を「模倣」して新解釈を加え、ダンサーと観客がともに圧倒される作品を創作しました。独創性に富んだこの2作品は並列して互いを完璧に引き立て合い、そのコントラストが際立つのです」

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「カウンターポイント」The Australian Ballet "Counterpointe" Brett Chynoweth © Pierre Toussaint

『アンナ・カレーニナ』

「ボリショイ・バレエで10年間踊ってきた私にとって、"ロシアの魂" はとても親密です。ユーリ・ポソロフが再創作したこの悲劇は、魂が舞台で奥深くこだまします」

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「アンナ・カレーニナ」
The Australian Ballet "Anna Karenina" Robyn Hendricks © Pierre Toussaint

『ロミオとジュリエット』

「私がロミオ役で踊っている時、どのシーンでも観客は私とともにいました。彼らもまた、バレエの一部になっていたのです。愛すること、高揚感、究極の死に、私は没頭しました。舞台で主人公が心を砕かれる思いをしたように、観客もまた同じ気持ちで舞台から立ち去るのです」

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「ロミオとジュリエット」
The Australian Ballet "Romeo and Juliet" Ako Kondo and Chengwu Guo © Pierre Toussaint

『アレルキナーダ』

「ニューヨークのアメリカン・バレエ・シアターで、アレクセイ・ラトマンスキーと私は、プティパのノーテーションを基に、悲しく、物憂いピエロに命を吹き込みました。オーストラリアでこの役を演じるダンサーに私の経験を伝えることを楽しみにしています」

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「アレルキナーダ」The Australian Ballet "Harlequinade" Adam Bull © Pierre Toussaint

昨年アメリカン・バレエ・シアターで予定されていた、ホールバーグのダンサーとしての最終公演はパンデミックによりキャンセルされた。世界のスーパースター・ダンサーであるホールバーグの最終公演が気になるファンも少なくないだろう。
昨年12月2日付オーストラリアの有力全国紙 "ジ・オーストラリアン" にホールバーグは次のように語っている。「プロのダンサーとしては舞台で "さようなら"を言うことができればと願ってる。とくに私がこれからを築き上げていく街でね」

以下のリンクから、オーストラリア・バレエ団2021年プログラムのダイジェスト版を見ることができる。
https://www.youtube.com/watch?v=VJTRcOEZOfA

オーストラリア・バレエ団の2021年プログラムの詳細は以下のサイトより。
https://australianballet.com.au/season-packages

「バレエー夏のひととき」(Summer time at the Ballet)
『ラ・バヤデール』より"影の王国" 振付:マリウス・プティパ(Kingdom of the Shade from La Bayadère )
『フィリグリーと影』より"トリオ" 振付:ティム・ハーバー(Trio from Filigree and Shadow)
『モルト・ヴィヴァーチェ』パ・ド・ドゥ 振付:スティーブン・ベインズ(Pas de deux from Molt Vivace )
『チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ』振付:ジョージ・バランシン(Tschaikovsky Pas de deux)
『ドン・キホーテ』第3幕パ・ド・ドゥ 振付:ルドルフ・ヌレエフ(Act 3 Pas de deux from Don Quixote)
『メリー・ウィドウ』よりワルツ 振付:ロナルド・ハインド(Waltz from The Merry Widow)
『スパルタクス』第1幕より抜粋 振付:ルーカス・ジャービス(Excerpts from Act 1 of Spartacus)
『テーマとバリエーション』よりパ・ド・ドゥとフィナーレ 振付:ジョージ・バランシン(Pas de deux and finale from Theme & Variations)

2月25〜28日 会場:メルボルン、マーガレット・コート・アリーナ

「ニューヨーク ダイアレクト」(New York Dialects)
『セレナーデ』振付:ジョージ・バランシン(Serenade)
『フォー・テンペラメンツ』振付:ジョージ・バランシン(Four temperaments)
パム・タノウィッツ振付による新作、オーストラリア・バレエ団世界初演 ( New Work by Tam Tanowitz)
4月6〜24日 会場:シドニーオペラハウス
6月3〜12日 会場:アーツセンター・メルボルン

「カウンターポイント」(Counterpointe)
『アーティファクト組曲』振付:ウィリアム・フォーサイス(Artifact Suite)
『ライモンダ』第3幕 振付:マリウス・プティパ (Raymonda Act 3)
4月27〜5月15日 会場:シドニーオペラハウス

『アンナ・カレーニナ』(Anna Karenina)振付:ユーリ・ポソホフ
6月18〜29日 会場:アーツセンター・メルボルン
7月9〜15日 会場:アデレード・フェスティバルセンター

『ロミオとジュリエット』(Romeo & Juliet )振付:ジョン・クランコ
8月27〜9月4日 会場:アーツセンター・メルボルン
11月5〜24日 会場:シドニーオペラハウス

『アレルキナーダ』(Harlequinade)振付:アレクセイ・ラトマンスキー
9月10〜18日 会場:アーツセンター・メルボルン
11月30〜12月18日 会場:シドニーオペラハウス

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