アリスを踊ってブノワ賞にノミネートされたオーストラリア・バレエ団プリンシパル、近藤亜香(あこ)に聞く

ワールドレポート/オーストラリア

インタビュー / 岸 夕夏

----ブノワ賞にノミネートされた時、どのようなお気持ちでしたか。

近藤 最初に聞いたときは信じられませんでした。日本ではバレエ界のアカデミー賞って言われるくらい大きな賞というのはわかっていたので、まさか自分がノミネートされるなんて思ってもいませんでした。ここまで来たんだという思いと、ちょっとやったなという嬉しさと、信じられない気持ちがずっと続いていました。ウェブサイトに公式に発表されたときに、ノミネートされたという実感が湧きました。 一番憧れているスヴェトラーナ・ザハーロワの名前が一緒にあったのが、何よりも嬉しかったです。

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ブノワ賞ガラ公演『シンデレラ』でケヴィン・ジャクソンと © Jack Devant

----ご自身としてはダンサーとしてどのような点が評価されてノミネートされたと思いますか。

近藤 アリス役でのノミネートだったので、表現力と普段の技術が評価されたのだと思ってます。

----ガラ公演ではラトマンスキーの『シンデレラ』パ・ド・ドゥをケヴィン・ジャクソンと踊られました。いかがでしたか。

近藤 『不思議の国のアリス』を踊りたかったのですが、音の関係上『シンデレラ』になりました。ケヴィンはとても良いパートナーだったし、ふたりでボリショイ劇場っていう素敵な、特別な場所で踊れて感極まりました。一番最初に、走ってランオンしてエントランスなのですが、ちょっと涙がでちゃいました・・。ウルウルってしたのを覚えています。

---- ボリショイ劇場で踊られた感想を聞かせてください。

近藤 オーケストラじゃなくて録音だったのですが、良かったですよ。ロシアらしい拍手から、タンタンタンになって、「あ〜、ここロシアだ、ロシアのお客さんが見てる」って。観客もとても盛り上がってました。

----以前、あるインタビューで近藤さんはスヴェトラーナ・ザハーロワを憧れのダンサーに挙げられました。ザハーロワは今回のガラ公演で踊らなかったようですが。

近藤 そうです、来られませんでした。今回ブノワ賞を取ったセウン・パクちゃんと「ザハーロワとノミネートされただけでも光栄だよね、自分たちがそこまで来たってすごいね」ってふたりで話しました。ガラで踊らなくても、授賞式には来るのかなって思っていたのですが、そこにも来なくて・・。残念ながら会えませんでした。それだけが悲しかったです。でも、タマラ・ロホやニコラ・ル=リッシュとか、そうそうたる人たちがいたので、ザハーロワはいなかったですけれども、そういう方たちとお会いできて、お話しできたのでとても特別な日になりました。

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ブノワ賞ガラ公演、授賞式の後で© Jack Devant

----ブノワ賞授賞式、ガラ公演を含めて、モスクワで強く印象に残ったことや感銘を受けたことなどお聞かせください。

近藤 やはりバレエダンサーが世界中からやって来るので、いろいろな人のスタイルやその人の踊りを見られたことです。ポリーナ・セミョーノワは以前から好きだったのですが、生で、目の前で見て、バレエというのは芸術、表現力、表現者なのだ、と彼女が思い出させてくれました。。彼女は『ロミオとジュリエット』を踊ったのですが、かなり刺激を受けました。帰ってきてからも、より一層表現力を磨こうと思いました。彼女は本当に素晴らしかった! クラスではシーンとして、自分の中で集中してこっそり踊っている感じだったんです。でも、舞台にでたらキラキラしていて、目の使い方とか、音の取り方とか、呼吸の仕方とか素晴らしくて! この人はトップにいる人なんだなって思いました。

----ノミネートされたダンサーも舞台に出られる方も皆クラスを受けてましたか。

近藤 みんな一緒にクラスを受けました。タマラ・ロホが教えてくれたクラスを受けてとか。他のダンサーを見る機会がいろいろとあったので、それが一番刺激的でした。

近藤 

----『不思議の国のアリス』についてですが、第一キャストに選ばれたとき、以前近藤さんはとても驚いと
おっしゃってました。その時の気持ちは。

近藤 できたらいいなくらいの気持ちだったので、自分が第一キャストに選ばれたとき、「えっ、私!」って、まずアジア人だしって思いました。私、外国人の顔してないし、いいの? って。でもクリスに言われたのは、「君が僕の思い描いているアリスの役を一番理解してくれていたし、それを表現していた。だから君にアリスをやって欲しい」と。
それで自分の解釈は間違っていなかったんだって、これからもっと極めていこうと思いました。驚いたのもありましたし、光栄だったのと、もっと頑張ろうと思いました。

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モスクワの救世主キリスト聖堂前で

----ヴィクトリア朝時代の衣装や舞台美術の中で、アジア人である近藤さんのアリスがとても自然に舞台に溶け込んでいたのが強く印象に残っています。どのように役作りをされたのですか。

近藤 自分の性格がアリスと似ているところがあるので、それもあったのかもしれません。今回アリスをすることになって、クリスと一緒にたくさんリサーサルをできたので、それがすごく助かりました。自分なりの表現をして、ちょっと違うと思うところは、彼が見本を見せて直してくれます。彼はなんでもできちゃう、凄い人です。お互いに模索しながら、話し合いながら、彼が私だけのアリスを作ってくれた、というのはありますね。クリスの中にヴィジョンがあって、それを二人で作り上げていった、だから舞台に出てコスチュームを着てもそれがフィットしていた。私には何となくイメージはあったけれども、彼には完璧なイメージがあります。

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『不思議の国のアリス』アリス ©Daniel Boud

----客席から観ていて、ジャックが解雇された時、あまり大きな感情表現をされなかったので、アリスはさっぱりした性格なのかなと思いました。その後不思議の国に迷い込んで、必死でジャックを救おうとして、3時間という舞台が終わったら、とても成長した別人のようなアリスに感じました。

近藤 そういうことも言われました。アリスの成長を描いているストーリーだからって。良かったです。それが伝わって嬉しいです。

----クリストファー・ウィールドンは近藤さんにとってどのような人でしょうか。

近藤 以前『DGV』(Danse à Grande Vitesse=「高速のダンス」)を踊った時に、彼と一緒に仕事をするのが好きでした。自分の表現したいことをわかっていて、ダンサーに任せるのではなく、ちゃんと伝えてくれます。だからといって押し付けずに、ダンサーの言うことも主張しつつ融合しながら一緒に作り上げていく振付家です。それはダンサーにとっては自分のためになることだし、表現力も磨かれていきます。特に『アリス』は私にとってキャリアの分岐点、キャリアハイライトでもあると思っていますので、すごく大切で、この機会をくれた彼に感謝しています。今回の『不思議の国のアリス』では、かなり一緒にリハーサルできましたので、それは良かったと思います。たまに振付家とあまりリサーサルしないまま舞台にでてしまう時があります。クリスも、アレクセイ(ラトマンスキー)にしても、やっぱりその人のスタイルってあるから、振付家と一緒に仕事をするのが一番大切だと思うし、その人が思い描いている世界観を出すっていうのが一番大切だと思います。彼は2週間オーストラリアにいたんですね。その前にも2週間くらい来て、オーディションを7人のアリス全員、ひとりずつ踊らせたんです 全員見ました。バレエスタッフの意見も何も聞かずに、自分が見て、それで亜香のアリスって。里奈(根本)ちゃんも踊ってます。それで里奈ちゃんもステージに出ていいよって決まりました。自分の世界観を表現してくれている人は誰だろう、と一人ずつちゃんと見る、言われたがままじゃなくて。その時、この人本当に凄いなって思いました。

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ジャック役のTy King-Wallと

----『不思議の国アリス』はかなり展開の速い作品で、小道具もたくさん使われています。苦心されたことや、他のバレエと異なったことなどありますか。

近藤 シーン展開もかなりあるのですが、アリスはどのシーンにもでているので、最初はスタミナが特にきつかったです。特に1幕が長くて、プロローグで3回まずクイックチェンジするんですよ。オフしている間も何かを用意してるというので、とにかくずっと忙しくて、舞台に出てる間は踊っているか表現しているか。ですので、そこが新しいチャレンジでした。初めてランスルーした時は1幕だけで、バテてしまいました。ロレーン(カスバートソン)がたまたまいたので、「ロレーン、なんでこんなきつい役にしたの〜」って、ちょっと文句じゃないけれど言ったら、「私もよくわからないんだけど、出来上がったらこんな大変な役になっていた」って言ってました(笑)。最初はペース配分がわからなくて、ガンガンとやっていてきつかったです。アリスってそういう役だから、エナジー、エナジーでいってたのですけれど、それでは3幕はもたないんです。表現していても、身体の力は抜いておくことや、いろいろなところでオンオフをつくって、ずっと全力でなくてもいいんだなとか、スタミナを調整することを学びました。

----メルボルン公演のリハーサルではロレーンも来ていて、彼女からもアドバイスをもらいましたか。

近藤 そうですね、彼女がオリジナルキャストなのでロレーンのリハーサルを見たり、それからコスチュームもできていたので、そうすると「こういうことか!」みたいにすべてが見えてきました。百聞は一見にしかずで、彼女がいたことは私たちダンサーにとってとても助かりましたね! 

----シドニー公演では1つのプログラムが終わると、次のプログラムの開幕まであまり日にちがありません。『不思議の国のアリス』の時は、『眠りの森の美女』最終日から約1週間後の開幕でした。リハーサルはどのようにされていたのですか。振付をまちがってしまうことなどありませんか。
近藤: リハーサルは、『眠れる森の美女』の公演が始まるとまず、昼の『不思議の国のアリス』のリハーサルが始まります。今もそうですが、夜はスティーブン・ベインズを踊りながら、昼は『眠れる森の美女』のリハーサルなので(注:7月のアデレード公演)、振りを間違えることはないですね、曲も違いますし。夜『眠れる森の美女』の公演をしながら、昼は『不思議の国のアリス』のリハーサルなので、ちょっと疲れはします。どちらも全力でやらなくちゃならなので。でも、公演がある日は必ず3時で終わって休憩があるので、そこで身体を回復して、頭もリセットし直して、じゃあ今から『眠れる森の美女』をやります、ってやっていれば大丈夫です。慣れですね。もともとオーストラリア・バレエは公演数が年間200回あるので、入った当初からこういう生活というか、昼は違うバレエ、夜は公演っていうのが、自分のルーティンになっているので大変ではないです。私たちからしたら当たり前な感じです。それでもよく言われます「振付けまちがえないの」って。身体に浸み込んでいるので、ぜんぜん大丈夫です。

----『不思議の国のアリス』のリサーサルや舞台で、何かエピソードがあったら聞かせてください。

近藤 マメがいっぱいできました。これはアリスやった人全員です。やはりポワント履いている時間が長くて、『眠れる森の美女』でもそこまでポワント履いてないです。舞台に出てる、踊っている量が今までやったバレエの中で一番なのです。ずっとポワントを履いているので、汗をかくから湿ってきて、皮が柔らかくなっちゃうのです。3幕の終わりとかに皮がベロンとむけていたり・・・。だからマメの予防をするのにとにかく時間がかかりました。

---- 次の『不思議の国のアリス』出番までに快復するのですか。

近藤 しないです。今日もここだけテープでガンガンとカバーして、それで足の先を守ります。

----7キャストが必要だったということですか。

近藤 7キャストは要らなかったかな。でもクリスが選んで、これだけの人にアリスをやってもらいたいということで最終的に7キャストになったのですけれど、大変なバレエなので、最終的には助かったと思います。ストーリー性もあるし、楽しいし、良いバレエなので、踊っている最中はあまり疲れてないんですが、体力を使うバレエです。終わって家に帰るとどっと疲れがきます。

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近藤さんのアリス出番最終日に共演者たちと

---- 2015年に、オーストラリア・バレエ団初の日本人プリンシパルになって3年になります。またチェンさんとご結婚されて半年ですね。この間ご自身でダンサーとして変わったと思うことはありますか。

近藤 プリンシパルになってからは、自分の表現したいことをもっと極めようと思っています。当たり前のことですが、それ以前は、言われるがままにやっていたというところが少しありました。プリンシパルになってからは、例えばアリスであっても、「私はこう表現したい。それが嫌いな人がいるかもしれないし、好きな人がいるかもしれない、でもそれが芸術だから」という考えが持てるようになりました。今は自分にしかできない踊りを極めていきたい、っていうのがあります。それが逆に自信にも繋がって、責任感もありますが、今はダンサーとしては、自分が最大にできる一番いい踊りをしているって思っています。生活では彼と結婚したのもあるし。彼も怪我をしていて、最近やっと復帰したんですが、一緒に踊れない期間が8か月くらいありました。彼が復帰して改めて、いつものパートナーと踊るってこんなに気持ちがいいんだ、って気づきました。一緒に『眠れる森の美女』を踊り、あと『メリー・ウィドウ』も一緒に踊ったのですが、結婚している旦那さんでもあるし、踊りやすいというのもあって、その時に彼の大切さを知りました。今は順調に自分のバレエ人生を楽しんでいる感じです。大変なこともありますけれどね。でもそれはバレエにはつきものですから。

----踊ることも含めて、プライベートでも何か辛いことや困難に出会った時、どのように気持ちを切り替えてますか。例えば誰かに電話するとか、何かすることなどはありますか。

近藤 そうですね、一番わかってくれる旦那さんがいるので、嫌なことがあったら泣いて、嫌なこと全部言って、彼は聞いてくれます。やはり職業上同じ立場なので、気持ちはわかってくれるし、ポジティブに的確なアドバイスをくれるので、彼に相談するのもあります。あとはワンちゃんに癒される。チョコとテディの2匹に癒されて、たまにはバレエのことは忘れる、ということも大切かな。仕事と私生活のオンオフをはっきりつけることを自分の中で大切にしているので、だから私はあまり落ち込みませんね。やはりバレエってもともと大変な仕事なので、バレエを毎日のように私生活の中にもちこんでしまうと、それで落ちこんじゃうこともあるかと。それはしないように私は心がけています。

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日本での結婚式

----プリンシパルになる前年、奨学金を取られてパリ・オペラ座バレエや英国ロイヤル・バレエなどを見てこられましたね。また海外公演や客演などの経験をされて、オーストラリア・バレエ団を外から見る機会も多いかと思います。オーストラリア・バレエ団はどのようなカンパニーでしょうか。また、ダンサーにとってバレエ団の環境はどうですか。

近藤 オーストラリアの国自体もそうですが、国際色豊かなバレエ団というのがあって、さっきも言ったように、私がアジア人でも『アリス』の第一キャストに抜擢してくれたりします。ダンサーとしてクオリティが良かったら、どんな人種でも、どんな文化でも、どこの出身でも、肌の色も関係なしに役に抜擢してくれるのは、私はオーストラリア・バレエのすごく良いところだと思ってます。ディレクターのディヴィッドはそういうところは気にしません。スカラシップの研修で海外をまわった時に聞いた話だと、こういうバレエはアジア人は使われないとかを耳にして、けっこう衝撃を受けたことがありました。私たちにとってはアジア人というハンデがあるので、そういうことがない素晴らしいカンパニーです。皆もとても仲良しですし、家族みたいな、アットホームなバレエ団なのもいいです。それからメディカルチームです。ディヴィッド・ホールバーグのこともあって最近は有名になってきました。メディカルチームのサポートの良さ、ステージ・マネージメント、カンパニー・マネージメント、事務の方のサポートなどです。この前シドニー公演の『火の鳥』の時、病気になったじゃないですか。体調崩した時も事務からのサポートも素晴らしくて! 改めてちゃんとしたカンパニーで、私はこのカンパニーにいて良かったと思ってます。ダンサーを支えることが組織として本当にしっかりしています。

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オーストラリア・バレエ団の中国ツアー、チェンさんと

---- 仕事がオフの時の楽しみは何ですか。

近藤 ワンちゃんと公園に行ったり、最近はお買い物はしなくなりましたが、美味しいレストランに行ったり、カフェ巡りやカフェでブランチしたりとか・・。メルボルンって美味しいカフェがいっぱいあるので、バレエじゃないことをすることですね。

----お料理はされますか。

近藤 忙しいとぜんぜんできませんが、忙しくない時はします。掃除とかお料理したりとか、家事をするだけでも気分転換になります。私、掃除やりだすと止まらないんです。

----得意料理はありますか。

近藤 何だろう、彼に聞きたいです(笑)。二人とももともとアジア食が好きなので、日本食か中華料理かをメインで食べてます。いつも白いご飯は一緒にっていう感じです。それはいつも心がけている、私たちのご飯の食べ方です。コシヒカリを毎日食べるんですよ。

----チェンさんがお好きで?

近藤 そうなんです! 大好きになっちゃって。だからお米にはこだわりたいって言いだして。日本の炊飯器でコシヒカリです。ぜんぜん違うのでもう戻れなくなっちゃいました。白いご飯食べるときはおかずとそれに決まっています。

----オーストラリア・バレエ団には演目によって海外から、ウィールドン、ウエイン・マクレガー、ジョン・ノイマイヤー、デヴィッド・ビントレー、スタントン・ウェルチなどの振付家がリハーサルに来られますね。今までに近藤さんはそのような振付家から大きな影響を受けたことはありますか。

近藤 スタントンと初めて仕事をしたのは2014年の『ラ・バヤデール』でガムザッティを踊った時ですが、皆からかなりこわいらしいって聞いていてびびっていたんです。実際に彼はビシバシ仕事をしますが、ダンサーの最大限の力を出してくれるっというか・・けっこう私、彼にびっくりしました。ガムザッティを一緒にリハーサルして「もっと出来るでしょ、もっと出来るでしょ」と言って、私の最大限までプッシュしてくれるのが良かったです。あまりそういうふう言われたことがなかったので、初めて「あ、私ここまで出来るんだ」と思いました。男性もビシビシやられてて「もう1回!」とか、スタミナつけるためにねとか。うちのカンパニーとはちょっと違っていました。私は彼のリハーサルの仕方も、一緒に仕事するのもとても好きでした。あとはウエイン・マクレガーのリハーサルの仕方もみんなとぜんぜん違う感じです。まず全員で集まって「今日はどういう目標で頑張る」という最初に目標セットします。例えば「空間を感じよう、音を感じよう、息遣いをどのようにしよう」ということを皆一人ずつ言ってから、その日のリサーサルを始めます。それがまた違ったやり方で、いつもにない感じで、「彼の考え方はこんな感じなんだ」・・ それが自分の中で、リハーサルに入る前にひとつの目標をたててからリハーサルをしよう、という考え方に変わりました。その二人のちょっと変わったリハーサルの仕方から、刺激を受けました。

----今後、踊ってみたい作品や振付家などありますか。一緒の舞台に立ちたい、またはパートナーを組んでみたいダンサーはいますか。

近藤 ずっと昔から踊ってみたいのはケネス・マクミランの『ロミオとジュリエット』です。それが今は一番やりたい! ここのカンパニーはクランコ版なのですが、私はマクミランが凄くやりたくて。あとは『オネーギン』のタチアナ、これはクランコです。その二つは、ドラマを表現するバレエなので踊りたい、その二つは本当に踊りたいですね。パートナーは誰だろう。考えたことないですね。でもディヴィッド・ホールバーグと踊れたらいいかな(笑)(注:昨年オーストラリア・バレエ団はホールバーグをレジデント・ゲストアーティストと発表した)チェンと踊るのが本当に好きなんです。一緒に踊っていると、自分が一番よく見えて、自分の一番良いところがでていると、自分でも思うので。

----今後の展望と言いますと。

近藤 これからもっとオーストラリア・バレエ団を世界に広めていきたいです。ブノワ賞も含めて、研修や外の世界をみて、世界のいろいろなダンサーと知り合って、自分の環境ってすごく良いんだなって。オーストラリア・バレエはちゃんとした、本当に素晴らしいカンパニーだと私は思っているのです。このカンパニーはこんなにいいんだよ、ってもっと知ってもらいたいのです。代表して踊って行けたらなあという願望は、今すごくあります。どこかに行こうというのではなく、このカンパニーをリーディングして世界中に広められたらと思っています。

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チェンさんと愛犬チョコとテディ


2018年6月28日 メルボルンのオーストラリア・バレエセンターでインタビュー

(写真提供/近藤亜香)

近藤亜香プロフィール

名古屋市出身、3歳の時にバレエを始め、バレエスタジオ主宰者、金澤志保のもとで学ぶ。ユース・アメリカ・グランプリでオーストラリア・バレエスクールの奨学金を獲得。2010年にオーストラリア・バレエ団に入団、2015年に同バレエ団初の日本人プリンシパルに昇格。2017年オーストラリア・ダンス・アワードで、年間に最も傑出した女性ダンサー賞を受賞。『不思議の国のアリス』タイトルロールで、2018年ブノワ賞最優秀女性ダンサーにノミネート。

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