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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2007.01.10]

『くるみ割り人形』:ピーター・ライト卿80歳の年に

 


アリーナ・コジョカル
  12月1日には、既にロイヤル・オペラ・ハウス内はクリスマスを迎える飾付が終わっていた。が、12月13日の夜、ピーター・ライト卿演出、ジュリア・ト レヴェリアン・オーマンがデザインしたセットによる『くるみ割り人形』のカーテンが上がり、漸くクリスマスがハウスに訪れたようだった。
11月にライト卿は80歳の誕生日を迎え、ロイヤル・バレエは今シーズンの『くるみ割り人形』の公演を通して彼の功績を称えている。初日の公演終了後、 シュガー・プラム・フェアリーを踊った、彼の愛弟子である吉田都に手をとられて舞台に上がったライト卿は嬉しさでいっぱいの様子だった。バレエを愛してや まない、またこれからもずっとバレエを愛しつづけていくに違いない彼の喜びを分かち合えたことは、観客、ダンサー、ロイヤル・バレエの関係者にとって素晴 らしいクリスマス・プレゼントだったことだろう。

初日の主要キャストは昨年とほぼ同じ。シュガー・プラム・フェアリーに吉田、プリンスはフェデリコ・ボネッリ。ドロッセルマイヤーはギャリー・エイヴィス、クララにイオナ・ルーツ、そしてハンス=ペーターはリカルド・セルヴェラ。

 セルヴェラとルーツの踊りでの細やかな演技・マイムを見ていると、イギリス で見る『くるみ割り人形』はこうでなければと。特にセルヴェラは、踊りに優美さが備わったようで、成長ぶりが頼もしい。また、エイヴィスは、その演技に更 なる深みが加わり、始まりから終わりまで舞台を引き締めていた。
シーズンが始まって以来、観るたびに確信が深まるが、ボネッリはロイヤル・バレエを代表するダンスール・ノーブルになった感がある。自分を押さえたパー トナリング、端正なステージ・マナー、そして自身のヴァリエイションでの身体の隅々まで細やかにコントロールされた動き。
しかしながら、舞台により一層の輝きをもたらしたのは、吉田都。シュガー・プラム・フェアリーが舞台に居る時間は短い。その短い間に、自分の技術を一気 にピークに持って行く集中力、一つ一つのステップすべてが宝石のようにまばゆい光を放ち、重力を全く感じさせない軽やかな回転、そしてフィニッシュでの、 一人のプリマ・バレリーナとして『くるみ割り人形』の舞台にいる幸せを感じさせる微笑み。バレエ・ファンにとって、これ以上のクリスマス・プレゼントはな い。


イワン・プトロフ
(今回は怪我で降板)

吉田都、フェデリコ・ボネッリ

吉田都


 初日の前日、12日のメトロ紙(ロンドンで無料で配られる朝刊)に吉田のインタヴューが掲載されていた。今 シーズンは、ロンドンと東京で活動は半々だが、来シーズンからは徐々に日本での活動を増やしていくとのこと。「ロイヤル・バレエ」のプリンシパル・ダン サーとしての吉田の舞台が減っていくのは残念だが、少なくとも、今シーズンはまだ彼女の舞台をロンドンで観る機会はある。最近発表された、ピリオド4の予 定では、吉田は、シーズン最後のミックス・プログラムで、フレデリック・アシュトンの『シンフォニック・ヴァリエイションズ』にキャスティングされてい る。6月2日(昼)、4日(夜)そして7日(夜)。


クララのイオナ・ルーツ


 ロイヤル・バレエからの正式発表はないが、最近の一連のインタヴューで、今シーズンでの引退をほのめかし始め たダーシー・バッセル。ドレッシング・ルームを吉田と共有するバッセルも同じプログラムでケネス・マクミランの『大地の歌』に出演予定。6月2日(夜)、 6月6日(夜)と8日(夜)。
先のことを嘆いても仕方ない。ピリオド4の一般発売は、2007年3月6日の午前10時(ロンドン時間)から。
※画像は今回の公演のものではありません。


吉田都、
フェデリコ・ボネッリ