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守屋光嗣 text by Koji Moriya 
[2005.11.10]

●23年ぶりのパリ・オペラ座バレエ、ロンドン公演

  パリでのシーズン開幕作品『ル・パルク』を引っさげて、パリ・オペラ座バレエが23年ぶりにロンドンを訪れた。ここで『ル・パルク』の説明を改めてする必 要はないであろうから、『ル・パルク』初心者としての感想を少し。(サドラーズ・ウェルズ劇場、10月14日、15日、16日)

数シーズン前、ロイヤル・バレエがこの『ル・パルク』を上演予定とアナウンスするまで、このバレエも、振付家のプレルジョカージュについても全く知らな かった。その時の案内に掲載されていた舞台写真から真っ先に思ったのは、アラン・レネの『去年、マリエンバートで』だった。以来、想像を膨らませていたの だが、実際に舞台に触れ、ダンサー、振付、音楽、そしてセットから刺激され膨らむイメージは、自分の中の記憶をくすぐられるようで大変面白かった。

『ル・パルク』


『ル・パルク』
  4人の庭師が醸し出す雰囲気からは、全く脈絡なく映画の『未来世紀・ブラジル』を想起した。この庭師の存在は、特に非現実・現実の境界をあらわしているよ うに思えた。同行した、やはり『ル・パルク』初心者の友人から「彼らは庭師?僕は天使だと思ったよ」といわれて、第3場の始まり「ドリーム」の場面で何故 主役の女性が彼らを踏み台にして「地上」に降りてくるのか、そして最後のパドドゥがどうして「Abandonment(放棄)」というタイトルなのかが、 理解できた気がした。庭師がしているゴーグルが、「Love is Blind(愛は盲目)」というのは深読みのし過ぎだろうか?

そしてグラン・パ・ド・ドゥ。背景に広がる、まるで嵐の後の空に残る大きな雲、その隙間からさす光のような照明からは、舞台は一転して海辺になったよう だった。眼前に静かに広がる主役二人の他に誰も居ない海辺で始まるパ・ド・ドゥ。あれほど官能的なパ・ド・ドゥは、他に幾つもないだろう。


想像力を駆り立てられ、そこからまた別のイメージが舞台から膨らむ。自分の感性を総動員するようなバレエは久しぶりだった。

主役は、オレリー・デュポン/ロラン・イレールの組み合わせと、レティシア・ピュジョル/ヤン・ブリダールが2回ずつ。どちらのカップルも熱演だった が、デュポンとイレールのほうから振付自体の「意思」をより鮮明に感じた。また、初日のカーテン・コール時に、プレルジョカージュも舞台に現われ盛大な拍 手を浴びていた。

惜しかったのは、観客の入り。「パリ・オペラ座」だからか、それとも「プレルジョカージュ」だからなのか、はたまた、サドラーズ・ウェルズ劇場の最寄駅 「エンジェル」が初日と二日目に閉鎖されてしまったからか、完売には至らなかったようだ。それでも観客の反応は熱く、盛大にブラヴォーが飛んでいた。レ ヴューなど気にしないで、20年後といわず、すぐにでもロンドンに戻ってきて欲しいものだ。