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船引怜美 text by Remi Funabiki 
[2004.06.10]

●ラバン出身のコレオグラファー:ステファニー・ショバー&ダンスカンパニー

ステファニー・ショバーはラバンにて学士課程終了後、2000年よりコレオグラファーとして活動を始め、ボニー・バード・ニューコレオグラフィー・アワード受賞(2002年)の経歴を持つコレオグラファーです。2003, 4年総合文化施設サウス・バンク・センター、ロンドン(SBC)(注1)のレジデント・ダンス・アーティスト/コレオグラファー(注2)に選ばれ、SBC内のパーセル・ルームにて新作『チェンジ』が発表されました(5月6・7日)。

ステファニーの作品はミニマリズムに徹底した舞台空間、美術・音楽効果の中で日常生活から発展したムーブメントが、素早いスピードで切れる間なく繰り返され、展開されていきます。しかしその振付スタイルは “ダンス・テクニック”の発露では決してありません。日常生活の中でいつも何気なくしている動作から(何かを手で払ったり、どこかを潜ったり)発展したムーブメントは、自然に観客に溶け込んでいくように思えます。

『チェンジ』
シ ンプルな舞台構成、ナチュラルなムーブメントから成り立つ密度の高い振付、計算された振付(空間、時間的)構成がステファニー作品の最大の魅力と思いま す。走馬灯のように繰り広げられた作品を観終わった時には虚脱感のようなもの覚えますが、少し落ち着いた頃に様々な印象が甦ってきます。人間関係をテーマ にした新作『チェンジ』でも、息を潜めるほどに静的なスタートから徐々に加速されていくスピード感、圧倒的な振付の密度の高さが印象的でした。2組のデュ エットから構成され、ダンサーひとりひとり、2人、4人の間の関わりの“変化(チェンジ)”していく過程が描かれています。フラグメンツに見えるダンサー それぞれの動きも、それぞれの間には緊密な統一感があり、部分と全体との必然的な関係が振付の空間構成や時間構成に鮮明に見られます。1度の鑑賞ではそれ らの描写や絶妙なバランスを理解することは難しく、「ビデオだったら何度でも巻き戻して観ることが出来るのに…」という思いに駆られます。シアトリカルな 作風や舞台効果(印象的な舞台美術やテクノロジーの駆使など)に重きを置いてテーマを強調するコンテンポラリーダンス作品とは異なり、純粋にダンサーの ムーブメントを通じて作品のテーマやニュアンスを感じ取っていくというのがステファニーの作品だと思います。

ステファニーを含む4人のダンサーはみなラバンの卒業生。日本人ダンサー磯部桂はカンパニー発足時からのメンバー、ムーブメントに対する研ぎ澄まされた感 性を持つ彼女はカンパニー主要ダンサーとして活躍しています。すべてのダンサーの洗練されたムーブメントと繊細な表現力(ハイスピードで繰り広げられる ムーブメント中にも一つ一つのムーブメントの鮮明さ、早いながらにも機械のようには決して見えないコントロールされたムーブメントや動きの細部への意識の 高さ)がとても印象的でした。更なるステファニー、そしてカンパニーの活動が楽しみです
詳細:http://www.stephanieschober.co.uk

注1:ロイヤル・フェスティバル・ホール、ナショナル・シアターなど大小4つの劇場、その他ヘイワード・ギャラリーなどを含む総合文化施設
注2:今後の活躍が期待されるアーティストの公演、活動、がSBCから年間を通じてサポートされます。歴代SBCレジデント・コレオグラファー:ジョナサン・バロウズ、アクラム・カーンなど。
(2004年5月6日、パーセル・ルーム、サウス・バンク・センター、ロンドン)