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船引怜美 Text by Remi Funabiki 
[2005.05.10]

●ノーザン・バレエ・シアター デヴィット・ニクソン振付・演出『ピーターパン』

次々に新しい物語バレエを創作しているノーザン・バレエ・シアター(NBT)が、2004年のクリスマス・シーズンに新作『ピーターパン』を発表。ロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場では3月31日~4月10日のイースター期間に上演されました。

『ピーターパン』と言えば、最も重要なのは空を飛ぶと言うこと。この振付・演出上困難がなかなかバレエ作品として実現されなかった理由かもしれません。 NBT芸術監督デヴィット・ニクソン手がける『ピーターパン』の演出・振付はその問題点を見事に解決しました。使用されていた宙吊りのシステムは、東京 ディズニーシーのマーメイド・ラグーン・シアターで見られるような、空中での宙返りが可能で自由に宙を飛び回ることの出来るシステム。現実的なことを言っ てしまえば、ピーターパンを演じているダンサーの背中にワイヤーがいつ取付けられて、いつはずされているかを観客が察することは可能ですが、その取付け/ 取外しのすばやさと動きの自然さは、本当に空を飛べるのだ!という錯覚を覚えるほど。ピーターパンを演じたクリスチャン・ブルームホールとウェンディーを 演じたピッパ・モーアの伸びのあるジャンプ力は常にワイヤーがついているのではと思えるほど非常に優れていました。ピッパ演ずるウェンディーには少女と女 性の両面を持ち備えた魅力があふれ、彼女の演技力の高さが印象に残りました。

ネバーアイランド島の動物、海辺のマーメイドやフック船長との船上の決闘シーンなどには『ライオン・キング』などのミュージカルやディズニーランドの ショー的なイメージを覚えますが、目の前で繰り広げられる世界はまさに大人でも子供に戻ってネバーランドに飛んでいくことが出来る、そんな夢を見ることが できる世界でした。

音楽には、映画『恋におちたシェイクスピア』や『リトル・ダンサー』の作曲家として有名なスティーヴン・ウォーベックがニクソンの依頼を受けて初のバレエ音楽を作曲。バレエのクラシック音楽では味わうことの出来ないスペクタクル性に富んだ音楽が心を高揚させました。
その他特筆すべき点として、ネバーアイランド島で迷子になっていた子供たちの一人ニブスを演じていた高橋宏尚のまさに少年に見える自然な演技力、そしてカンパニー全体の連帯感と動きの質の高さが挙げられるでしょう。
(2005年3月31日、サドラーズ・ウェルズ)