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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2018.04.10]

米沢唯が静謐でクールな美しさを格調高く踊った、アリーエフ版『ライモンダ』

日本バレエ協会
『ライモンダ』エルダール・アリーエフ:新振付・演出、マリウス・プティパ:原振付

2018都民芸術フェスティバルに参加したバレエは3公演で、バレエ協会はエルダール・アリーエフの新振付による『ライモンダ』を上演した。アリーエフはキーロフ・バレエ(現マリインスキー・バレエ)のプリンシパルとして踊り、現在は、ウラジオストークのマリインスキー劇場プリモルスキー分館バレエ団首席バレエマスター。現役ダンサーの時には、キーロフ・バレエのコンスタンチン・セルゲイエフ版の『ライモンダ』を踊っていた。今回の新振付もセルゲイエフ版に基づいている。
ライモンダは下村由理恵、米沢唯、酒井はな、ジャン・ド・ブリエンヌは橋本直樹、芳賀望、浅田良和、アブドゥルラクマンは三木雄馬、高比良洋、福岡雄大という3組のキャストが組まれた。私は米沢唯、芳賀望、高比良洋という組み合わせで観た。
幕開きはこの幕の終わりに描かれる夢のシーンを暗示するように、シルエットを生かしたストップモーションだった。

tokyo1804b01.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬

米沢は登場人物の基本的な心情をしっかりと表し、少し抑えめの表現を一貫して見せていた。出陣するジャン・ド・ブリエンヌとの別れも、一人で愛する人を想い案じながらリュートを奏でるシーンでも、うちに秘めた情感を静かに染み入るように表そうと努めていた。そして微睡んだ夢の中で愛するジャン・ド・ブリエンヌと会ってしばし安らぐが、不意に乱入した異民族の男性に驚く。心細さをこらえて懸命に平静を保とうする健気さも上手く表していた。ジャン・ド・ブリエンヌに扮した芳賀もまた、邪念のない愛をライモンダに表して踊った。
第2幕では、アブドゥルラクマンに扮した高比良洋と米沢ライモンダの気持ちの入ったやり取りが、なかなか興味深かった。高比良の熱っぽい演技と米沢の1幕から続くクールな表現が行き交い、セリフでやりあうよりも、身体で表す「気」の投げかけ合いがとても実感的で、観客も身体で感じ取る、といった趣が生まれた。もしかするとこれは、プティパの晩年の塾成がもたらしたものなのかもしれない。
第3幕はライモンダとジャン・ド・ブリエンヌの結婚式。豪華なハンガリアン・ダンスが舞台いっぱいに繰り広げられる。ここではやはり、吉田都の名演舞が印象に残っている。しかし、米沢のライモンダもまた、いつもの弾けるようなエネルギーを内に収め、静謐でクールな美しさを表し、格調高く踊りきって見事だった。
(2018年3月11日昼 東京文化会館)

tokyo1804b02.jpg 撮影/スタッフ・テス中岡良敬