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関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2017.09.11]

首藤康之とパフォーマンス集団CAVA による秀逸な無言劇『レニングラード・ホテル』を楽しんだ

『レニングラード・ホテル』
丸山和彰(CAVA):作・演出、首藤康之ほか:出演

『レニングラード・ホテル』は、首藤康之とパフォーマンス集団CAVA による無言劇である。作・演出はCAVAの丸山和彰。かつて首藤が『ドン・キホーテ』全幕を振付けた際に、ドン・キホーテ、サンチョ・パンサ、ガマーシュ、キトリの父ロレンツォなどの演技主体の役にパフォーマンス集団CAVAを起用して、クラシック・バレエの名作を活き活きと新鮮な舞台に仕上げて大きな成果をあげた。その時以来、首藤とCAVAは、新作のコラボレーションを企画していたという。バレエダンサーを拠点として、ジャンルを越えた創造を希求する首藤らしい、素敵な舞台となった。

tokyo1709e_MG_8454.jpg Photo: Tokiko Furuta(すべて)

レニングラード・ホテルというタイトルからも感じられる通り、クラシックな雰囲気のホテルが舞台となっている。首藤が演じる支配人セルゲイがこのホテルに帰還してから、立ち去っていくまでを15のシーンとして進行していく。
支配人からポーター、ドアマン、メイドなどの従業員が規律正しくリズミカルに小気味好く働く姿が、機能的で無駄がなくとても心地よく感じられた。しかし、その裏側の隠された人間性が露になるところ、意外なV.I.P.宿泊客とのやりとりなどが、電話のベルとバックミュージック以外は無音の中で、軽快な動きによって演じられた。意外性のある機知に富んだ物語構成もさることながら、首藤の隅々まで鍛えられた美しい動きが際立った。支配人という役どころで巧く活かされいて、魅力的でかつ説得力があった。それぞれのロシア人スタッフを演じた出演者も、微妙に職業的表情をつくりながら動きの中に個性を表し、クラシック・ホテルという、独特の文化的空間を構成していた。
こうしたジャンルを超えた創作活動に積極的に参加することにより、アーティストしてのバレエダンサーの身体表現を深めていくことは、誰の目にも明らかであろう。バレエ界ももう少し、こうした試みに注目すべきである。
(2017年7月8日昼 スパイラルホール)

 

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tokyo1709e_MG_8717.jpg 「レニングラードホテル」Photo: Tokiko Furuta(すべて)