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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2018.05.10]

アデュー公演で見事な存在感を感じさせたマリ=アニエス・ジロー

Ballet de l’Opera national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
”Orphée et Eurydice”Pina BAUSCH 『オルフェとユーリディス』ピナ・バウシュ:振付

春のガルニエ宮では3月24日から4月6日までピナ・バウシュ振付の『オルフェとユーリディス』が上演された。この作品はドイツのヴッパタール歌劇場で1975年5月23日に発表されたピナ・バウシュの「舞踏によるオペラ」で、ピナ自身の指導により2005年5月30日にオペラ座のレパートリーに入っている。その後も2008年、2012年、2014年と定期的に再演されてきている。2009年6月30日にピナ・バウシュが亡くなってからは、1975年の初演時にオルフェとユーリディスを踊ったドミニック・メルシーとマル―・エロドが演技指導を行ってきている。

pari1805a01.jpg (C) Opéra national de Paris/ (C)Yonathan Kellerman

2005年からユーリディスを踊ってきたマリ=アニエス・ジローは今回、この作品をアデュー公演(3月31日)に選んだ。2004年にカロリン・カールソンの『シーニュ』でエトワールに任命されて以来、コンテンポラリー・ダンスで活躍してきたダンサーに相応しい選択だったろう。
幕が上がった時、すぐに目に入ったのは舞台左奥に座ったジローの姿だったが、座っているだけで凛とした気品が周囲に漂った。休憩後の第4部「死」でオルフェに見られて命を落とすまで、比類のない存在感が終始一貫して希望の光が見えないピナ・バウシュ独自の世界に重みを与えていた。相手役のステファーヌ・ブリヨンも隙のない踊りでオルフェの悲嘆をていねいに描いていった。愛の神アムールはシャルロット・ランソンだったが、瑞々しい身体を活かし、表情豊かに演じていた。エミリー・コゼットやエヴ・グランステン、ジュリエット・イレールらも緊迫感のある群舞で地獄の神々を演じ、ドラマに奥行を与えた。
なお、今回の10回公演ではユーリディスがマリ=アニエス・ジローとアリス・ルナヴァン、オルフェがステファーヌ・ブリヨン、フロリアン・マニュネ、ポール・マルク、アムールがミュリエル・ジュスペルギとシャルロット・ランソンだった。
4月にはバスチーユ・オペラでサシャ・ヴァルツ振付の『ロメオとジュリエット』が上演されていたが、4月23日に防火扉を調整するための18トンものカウンターウエイトを支えるケーブルが切断するという事故が起こり、安全確保のための点検作業のために4月25日以降の公演は最終日の5月4日まで休演となった。(公演再開は5月13日のワグナー『パルジファル』の予定。)このシリーズでは当初、エトワールのエルヴェ・モローのアデュー公演が、オーレリー・デュポンの特別出演で行われる予定だった。モローの体調が優れなかったために、アデュー公演なしの引退となったのは残念な限りだ。
(2018年3月28日 ガルニエ宮)

pari1805a03.jpg (C) Opéra national de Paris/ (C)Yonathan Kellerman pari1805a06.jpg (C) Opéra national de Paris/ (C)Yonathan Kellerman
pari1805a02.jpg (C) Opéra national de Paris/ (C)Yonathan Kellerman
pari1805a05.jpg (C) Opéra national de Paris/ (C)Yonathan Kellerman

『オルフェとユーリディス』
振付・演出 ピナ・バウシュ
装置・衣装・照明 ボリス・ボルジック
音楽 グルック
マンリオ・ベンジ指揮バルタザール・ノイマンアンサンブル・合唱団
歌手
オルフェ マリア・リッカルダ・ヴァセリング
ユーリディス ユン・ユン・チョイ
アムール キアラ・スケラット
ダンサー
オルフェ ステファン・ブリヨン
ユーリディス マリ=アニエス・ジロー
アムール シャルロット・ランソン