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三光 洋 Text by Hiroshi Sanko 
[2017.10.10]

オペラ座が『ジュエルズ』で開幕、プジョルのアデュー公演、ガニオ、ジルベール、ウルド=ブラーム、アバニャート、オニール 他が華やかに踊った

Ballet de l’Opéra national de Paris パリ・オペラ座バレエ団
“Joyaux” George BALANCHINE
『ジョワイヨー』(ジュエルズ)ジョージ・バランシン:振付

パリ・オペラ座バレエ団の新シーズンがバランシン振付の『ジョワイヨー(ジュエルズ)』で始まった。1967年4月13日にニューヨーク・シティ・バレエ団がニューヨーク・ステート・シアターで初演した。フランスの舞踊ジャーナリスト、デルフィーヌ・ゴアテル女史の舞踊、音楽の総合インターネット誌「レスミュジカ」の記事によると、2000年12月19日にパリ・オペラ座のレパートリーに入った際に、装置と衣装がクリスチャン・ラクロワに依頼され、作品の名前もフランス語の『ジョワイヨー』と改められたという。
幕が上がり、巨大な宝石のレプリカを天井から吊り下げた舞台にストラス(絹くず)と宝石を散りばめ、光を反射する晴れやかな体にぴったりした衣装をまとったダンサーたちがずらりと並んでいるのが見えると、客席からかすかなどよめきと拍手が沸き起こった。

pari1710a_emeraudes.jpg 「エメラルド」(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis.jpg 「ルビー」(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis04.jpg アリス・ルナヴァン
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

「エメラルド」「ルビー」「ダイヤモンド」という三つの宝石はフランス、アメリカ、ロシアの異なるダンスの伝統を持つ三か国を象徴している。
第1部「エメラルド」の9月24日には当夜で引退するエトワールのレティシア・プジョルが登場した。フォーレの『ペレアスとメリザンド』組曲の流麗な旋律によく乗って、「プレリュード」のデュオをマチュー・ガニオをパートナーに優雅に踊るとともに、「ラ・フィルーズ」では年を経ても衰えていない抜群のテクニックを見せてくれた。
「シシリエンヌ」のソロはエレオノーラ・アバニャートだったが、イタリア人らしい妖艶さと余情が感じられた。24日はミリアム・ウルド=ブラームが抜群の音楽性と個性的な詩情にあふれる演技を見せた。実に軽い身ごなしは弦楽器のピチカートの伴奏でフルートとハープが奏でる曲と一体となっていた。第2のパ・ド・ドゥでオードリック・ブザールにリフトされている時の軽い羽が宙に浮いているような感じは他のダンサーにはなかった。
オニール八菜、セ・ウン・パク、アルチュス・ラヴォーの期待の若手三人がそろったパ・ド・トロワ(23日)も華やぎに満ちていた。オニール八菜は翌日は「ルビー」に出演し、舞台狭しと跳躍するフランソワ・アリュ、ヴァレンティーナ・コラサントとともにソリストを務め、バランシンにふさわしい華やぎとダイナミックさとを舞台にもたらしていた。この女性二人は太陽のようなオーラのあるオニール八菜、月の光を思わせるようなロマンチックな雰囲気のあるセ・ウン・パクと対照的だが、これからのパリ・オペラ座バレエ団のスターとなる女性ダンサーだろう。アリュがコラサントと縄跳びをする場面でみせた茶目ったたっぷりな表情も忘れがたい。

ストラヴィンスキーの『ピアノとオーケストラのためのカプリッチオ』をバックにした「ルビー」はアメリカのダンスへのオマージュだが、技術の確かさと華やぎという点で23日のレオノール・ボーラック、ポール・マルク、アリス・ルナヴァンの三人よりも、翌24日の組み合わせのほうが身体の切れ味が良かった。この三人ではエネルギッシュな動きを見せたアリス・ルナヴァンに拍手が集まっていた。レオノール・ボーラックは独特の魅力があるダンサーだが、この作品には今一つ合っていなかったのかもしれない。

pari1710a_rubis05.jpg オニール八菜
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis02.jpg ヴァレンティーヌ・コラサント、フランソワ・アリュ
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis03.jpg ヴァレンティーヌ・コラサント、フランソワ・アリュ
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis06.jpg レオノール・ボーラック、ポール・マルク(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
pari1710a_rubis07.jpg レオノール・ボーラック、ポール・マルク(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou pari1710a_rubis08.jpg レオノール・ボーラック、ポール・マルク(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
oari1710a_diamants01.jpg アマンディーヌ・アルビッソン
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

ロシア・バレエの特徴を凝集した「ダイヤモンド」ではアマンディーヌ・アルビッソンとユゴー・マルシャンの若手エトワールカップルがパ・ド・ドゥで安定した端正な踊りを見せた。24日は当初リュドミラ・パリエロとジェルマン・ルーヴェが予定されていたが、直前になってセ・ウン・パクとフロリアン・マニュネに代わった。パリエロの安定した技術と優れた表現力が見られなかったのは残念だったが、パクの愁いを帯びた表情や視線は音楽によりそって見る人に語り掛けてくるかのようだった。マニュネはマネージュの最後で袖に入る直前でバランスを崩してしまい、前日のマルシャンのダイナミックかつ安定した踊りには遠く及ばなかった。
いずれにせよ『ジョワイヨー』(ジュエルズ)を通して見ることで、フランス、アメリカ、ロシアのバレエが輝きを競い合って、改めてバランシンならではの華麗さが結晶した魅力に酔うことができた。

oari1710a_diamants03.jpg アマンディーヌ・アルビッソン、ユーゴ・マルシャン
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
oari1710a_diamants04.jpg アマンディーヌ・アルビッソン、ユーゴ・マルシャン
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
oari1710a_diamants05.jpg セ・ウン・パク、フロリアン・マニュネ
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou
oari1710a_diamants06.jpg セ・ウン・パク、フロリアン・マニュネ
(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

23日のプジョルのアデューはデフィレの後という珍しいプログラムだったが、オペラ座ダンサーがずらりと揃った今までにないものだった。今シーズンはプジョルにつづいて、2018年3月31日にマリー=アニエス・ジロがピナ・バウシュ振付の『オルフェとユーリディス』で、エルヴェ・モローがサシャ・ヴァルツ振付の『ロメオとジュリエット』で2018・19年シーズンにはカール・パケットがヌレエフ振付『シンデレラ』でアデュー公演を行う。そして世代交代が終わり、新しい時代を迎えることになる。
(2017年9月23日・24日 ガルニエ宮)

pari1710a_defile.jpg 「デフィレ」(C) Opéra national de Paris/ Julien Benhamou

『ジョワイヨー』(ジュエルズ)
「エメラルド」

音楽 フォーレ『ペレアスとメリザン』」組曲『シロック』(抜粋)
衣装・装置 クリスチャン・ラクロワ
照明 ジェニファー・ティプトン
ダンサー(23日/24日)
プレリュード レティシア・プジョル、マチュー・ガニオ/ドロテ・ジルベール、ユゴー・マルシャン
ラ・フィルーズ レティシア・プジョル/ドロテ・ジルベール
シシリエンヌ エレオノーラ・アバニャート/ミリアム・ウルド=ブラーム
パ・ド・トロワ オニール八菜、セ・ウン・パク、アルチュス・ラヴォー/マリオン・バルボー、レティツィア・ガローニ、ジェレミー=ルー・ケール
第1パ・ド・ドゥ レティシア・プジョル、マチュー・ガニオ/ドロテ・ジルベール、ユゴー・マルシャン
第2パ・ド・ドゥ エレオノーラ・アバニャート、ステファーヌ・ブリヨン/ミリアム・ウルド=ブラーム、オードリック・ブザール
スケルツォ 全員
モルト・アダージョ オニール八菜、セ・ウン・パク、アルチュス・ラヴォー/マリオン・バルボー、レティツィア・ガローニ、ジェレミー=ルー・ケール
「ルビー」
音楽 ストラヴィンスキー『ピアノとオーケストラのためのカプリッチオ』
ピアノ演奏 ミッシェル・ディートラン
衣装・装置 クリスチャン・ラクロワ
照明 ジェニファー・ティプトン
ダンサー レオノール・ボーラック、ポール・マルク、アリス・ルナヴァン他/ヴァレンティーヌ・コラサント、フランソワ・アリュ、オニール八菜 他
「ダイヤモンド」
音楽 チャイコフスキー『交響曲第3番』作品29
衣装・装置 クリスチャン・ラクロワ
照明 ジェニファー・ティプトン
ダンサー アマンディーヌ・アルビッソン、ユゴー・マルシャン 他/セ・ウン・パク、フロリアン・マニュネ 他

『シルヴィア』(9月23日アデュー公演のみ)
音楽 レオ・ドリーブ
振付・装置・照明 ジョン・ノイマイヤー
装置・衣装 ヤニス・ココス
ダンサー レティシア・プジョル、マニュエル・ルグリ

「デフィレ」
(9月23日)
音楽 ベルリオーズ『トロイアの人々』から行進曲
ヴェロ・ペーン指揮 パドルー管弦楽団