関口 紘一 text by Koichi Sekiguchi 
[2007.02.10]
[韓国]

ソウルのユニバーサル・バレエ『くるみ割り人形』公演

昨年の暮れに、ソウルで上演されたユニバーサル・バレエ団の『くるみ割り人形』を観てきた。
成田・金浦空港間ではシャトル便が飛んでいるので、ほんの一飛び、機内食を食べるのも慌ただしい感じである。思ったよりは温かだったがソウルの街に立つ と、日本のように軽自動車が走っていないためだろうか、大通りの光景が異なって見え、大陸に来た、という感慨が沸いてくる。

  ユニバーサル・バレエの本拠地、世宗(セジョン)会館は繁華街の真ん中、ヒュンダイなどの大企業の建物と肩を並べ、李氏王朝の正宮だったキョンボックン (景福宮)に向かう大通りに建っている。ソウルには、国立バレエ団とユニバーサル・バレエ以外にはあまり大きなバレエ団はない、と聞いた。
会場はロビーも広くとってあり、1階席のそれぞれの椅子の背にはモニターが付いていて、字幕を読みとれるようになっている。劇場関係者は「ここはビジネスクラスだ」と言っていた。

へキョン、チューディン

へキョン、チューディン
  ユニバーサル・バレエは、1984年にダニロワ、ジョフリー、チューダーなどに薫陶を受け、ABTで活躍したエイドリアン・ダラスを芸術監督に迎えて設 立。第1回公演では今は団長であるジュリア・ムーンとやはりABTのパトリック・ビッセルが『シンデレラ』を踊ったそうである。その後、1998年に5代 目の芸術監督として、オレグ・ヴィノグラードフが就任し今日に到っている。

『くるみ割り人形』は1986年から毎年上演さてれいるそうだ。今年は12月20日から25日まで6日間昼夜2回の12公演が行われた。振付はワイノーネン、演出にヴィノグラードフ他、美術・衣裳にはヴィルサラーゼ他がクレジットされていた。
美術も衣裳もマリンスキー・バレエ版に近く遜色ないくらい良くできている。ただ衣裳には、ダンサーたちのフィッテイングの感じがやや異なる印象はあっ た。クララはイム・へキョンとファン・ヘミン。王子はセミョン・チューディンとオム・ジェヨンというキャストで観た。ヘミンは昨年のユニバーサル・バレエ の『沈清』公演で主役の沈清を踊ったスリムなプリマ。セミョン・チューディンは同じ舞台で龍王子を踊った長身のダンサーである。また、へキョンは松本道子 バレエ団で『バフチサライの泉』を踊ったこともあるという美しいダンサー。ジェヨンは04年の日韓合同バレエ公演で『眠れる森の美女』の王子役を踊ってい る。


へミン、ジェヨン(20日)

へミン、ジェヨン

ダンサーはみんなスタイルが良く、ロシア系のダンサーも混じっていたが体型的にはうまく均整がとれている。運動能力も優れているように見えたし、表情が 大きくはっきりとしている。身体を使った表現の細やかさやコール・ドの一体感にはもっと気を配ったほうがいいのかもしれないが、ロシア・バレエの良い点を 見事に吸収している点には大いに感心させられた。
  この『くるみ割り人形』の舞台でも子どもたちが大活躍だったが、ユニバーサル・バレエ団はバレエ教育に力を注ぎ、ソウルとワシントンにワガノワ・スタイル のアカデミーをもっている。近年の国際バレエ・コンクールでは、韓国人の入賞者が増えていると思われるが、そうした成果が顕著に現れて始めているのではな いだろうか。
クラシック・バレエだけでなく、ナチョ・デュアトの『ナ・フロレスタ』などもレパートリーになっているというので、次に機会があったらコンテンポラリー・ダンスの舞台もぜひ観たい、と思った。

ユニバーサル・バレエ・
アカデミー・ソウルの子供たち