【大人のダンス〜 特別編 〜 】『怠惰に始めるストレッチのススメ~座って&寝て行う負担の少ないストレッチ』ー 前編 ー

大人からはじめたダンサーに、長くダンスをたのしんでもらえるよう、ダンサー KaQがとっておきのコツを教えます♪』

さまざまなダンスを踊るダンサーKaQだからこそ伝えられる効果的なストレッチ方法や身体づくりに役立つ情報をおとどけします。

 

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「ストレッチはできれば毎日やったほうがいい」


よく聞く言葉ですね。私もストレッチについて聞かれたときはよく使います。
ストレッチの強度にもよりますが、負荷の少なめなストレッチは毎日行ったほうが身体によいです。
身体をいろんな方向に動かそうとすることで、血の巡りがよくなり新陳代謝が促進されるからです。
じっとしているよりも、身体を適度に動かしたほうが健康によいということなので、もちろんウォーキングなどでも効果がありますが、ダンスレッスンを定期的に受けている方にとっては、ヨガマット1枚でできるストレッチはより気軽に行えるのではないでしょうか。

でも、「毎日」と心に決めてもなかなか続かず3日坊主になってしまうもの。
それも仕方のないことです、にんげんだもの(笑)

ダンスのレッスンで教わるようなストレッチは、"整える"よりももうちょっとハードな、"パフォーマンスを上げる"ためのストレッチなので、家でリラックスしているときに始めるには、少し重たいかもしれません。
ですので、気軽に、かんたんに行えるストレッチも知っておくと、「毎日」のストレッチが続けやすくなりますね。

今回はそんな内容です。

『怠惰に始めるストレッチ』


このストレッチはこんなシチュエーションを想像しています。

『3日連続でハードな仕事が続いてやっと帰宅、
ありあわせでご飯を食べてなんとかお風呂に入る、
ベッドの上に寝転んだらもう一歩も動けない...』

ここからベッドを降りてヨガマットを敷き直すのも至難の業。
だから寝た状態から始めます。
※説明については「ベッド」ではなくて「床」と表現しています。

深呼吸をしてリラックス

まず呼吸を整えます。
呼吸法は以前のコラムで紹介しているのでそちらをご参考ください。

参考:Vol.2『どうして呼吸が大事なの?』

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寝て行うときはお腹の上に手のひらを置いて、
頭→肩→腕→背中→腰→脚 という風に上から順番に力を抜いていくイメージを持ちながら、お腹を上下させて複式呼吸を行うとリラックスしやすいです。

(ここから先の姿勢はすべて深呼吸4回分を目安にキープします)

股関節のストレッチ

寝て行うストレッチはまず股関節から始めるのがオススメです。
腰から下の、股関節、膝、足首などはいつも身体を支えるために力が抜けない場所です。
寝て行うことでやっと重力から解放してあげることができるのです。

やってみよう!


(1)片膝を抱き寄せる

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まずは片脚ずつ、なるべく腕の力を使って胸の上まで引っ張り上げます。膝は曲げてその上から両手を重ねます。


そこで深呼吸4回分キープ。
最初はあまり上下方向に伸ばそうとはせずに、
脚と重ねた両手の重さで膝が自分の方に落ちてくるようにイメージしましょう。
その姿勢で一度リラックスをするのが大事です。
その姿勢のままで気持ちよくなってきたら少し負荷をかけます。

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抱き寄せている膝 → 頭の方向
伸ばしている反対の脚 → つま先の方向に伸ばそうとしてください。


自分の身体を上と下に引っ張り合うイメージです。
これで股関節周りの筋肉を上下方向に引き伸ばすことができます。


(2)左右方向に伸ばしていく 

そのまま今度は両手の重さをかける方向を内側と外側に交互にかけていきます。
股関節は"回す"関節なので上下だけでなく左右にも伸ばす必要があります。

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内側にかけるときは腰が床から浮かないようにしましょう。


腕の力を少し使って内側に倒しつつ、寝転がってる身体は、
正中線をまっすぐ保つようにします。
やり過ぎても関節に良くないので倒すのは気持ちよく感じる角度までにしましょう。
キープしながらお尻の外側が伸びていくのを感じてください。

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外側にかけるときはターンアウトを意識します。


外側に倒している膝に同じ側の手の重さをかけつつ、
まっすぐ伸びてる脚(軸足)は反対方向に外旋させようと意識します。
がんばりすぎて身体が外側に倒れていかないように気を付けましょう。
こちらも正中線をまっすぐ保つようにします。
おヘソの下から股間節にかけてが気持ちよく伸びるのを感じてください。


(3)両膝を抱き寄せる  

片膝ずつ胸に近づけるストレッチが終わったら今度は両膝を抱き寄せます。
ここでは2つの力の使い方を身に着けましょう。

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1つは腕の力を使って膝をぎゅっと抱き寄せます。


腰が少し浮いて、仙骨の周りやお尻の外側などが伸びていきます。
頭も膝に近づけて体全体を丸めましょう。股関節周りだけでなく、首から背中にかけても伸ばすことができます。

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もう1つはぎゅっと抱き寄せたら力を抜いて
後頭部~背中~腰までがすべてベッドについている状態にします。

背骨を上下方向に伸ばそうとしながら腕の力だけを使って、膝を胸に引き寄せながらお腹の引き上げも意識!腹筋の奥の方の筋肉が伸ばされるのを感じるはずです。


(4)股関節を開く

抱き寄せた両膝を真ん中から両手で割って、外側にどちらも倒していきます。
上から見たときにM字になるように。
この姿勢でお腹を引き上げると股関節を開く方向に、周りの筋肉が引き伸ばされていきます。
慣れるととても気持ちのいいストレッチです。

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さてさて、ここまで真面目にストレッチができていたら、ちょっと身体を伸ばすのが楽しくなってきていませんか?
そうやって気持ちがもし上向いていたら少しだけ負荷のかかることをしてみましょう。

(5)膝を伸ばす
M字に両膝を開いた状態で、膝の後ろに手を差し込んで支えます。
そして膝を伸ばしていきます!
伸ばしきれたら最高です!でも伸ばしきらなくても自分の限界までいければいいです。

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4秒間かけて伸ばし、4秒間かけてまた曲げていきます。
曲げ伸ばししてる間、手で支えている膝の位置が変わらないように努力しましょう。
1セットする度に、つま先が少しずつ遠くまで伸びるようになるはずです。
いつも少し遠くを目指しながら4セット行いましょう。

捻るストレッチ

ここからは身体を捻るストレッチになります。まだまだ寝た状態で怠惰に行なえます。
右側で説明していますが、同じことを左右置き換えて必ずやってください。


(1)片膝立て捻り 

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右足の膝を立て、膝が床につくように左側の床に倒していきます。

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その状態を維持しながら胸は天井を向くように戻し、

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右の肩と右腕を右側の地面に近づけていきます。

右膝を床につけたまま右肩を床につけられたらかなり柔軟性がありますね。
右肩は少し浮いてしまってもいいので、なるべく床に近づけるように意識し続けます。


(2)腕回し 

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片膝立て捻りの状態で腕を回していきます。
時計回りに4回、反時計回りで4回。

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ポイント:「肘を曲げない」

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ポイント:「床と平行に回す」


腕を回していくと、時計でいうところの9時~12時のところで自然に肘を曲げてしまうのですが、ここで肘を曲げないように回すとふだん使えていない方向まで、肩周りの筋肉を伸ばすことができます。

そして床と平行に回そうとすることでお腹から胸にかけての捻りをしっかりとつくることができます。
ゆっくりでもいいので2つのことを意識した上で行いましょう。
しっかりやればお腹、背中、胸、肩までをバランスよく伸ばすことができます。


いかがでしょうか?
ここまで試してみて、やる気がでてきたら、少し負荷の高いストレッチもしていくのがオススメです。
というわけで続きは次のコラムで! 
Message


Chacott『大人のダンス』連載をお読みいただいている皆さま、いつもありがとうございます。
皆様も日々感じていると思いますが、世界が2ヶ月前からは想像もできないような状況になっています。
好意的に書くと毎日がまるで日曜日か年末年始のよう!
Studio ENTRADAのある森下駅周辺はすっかり車通りも少なくなり、ふだんは聞こえてくる子どもたちの遊んでいる声などもなかなか聞こえず、街がめっきりと息を潜めています。
これが終わるのがいったいいつになることやら。
先の見通しが立たないのが一番つらいですね。
さて、自分がダンスを生業として始めてからしばらくして、
だんだんとわかってきたこと、今では自分の信念になっていることがあります。
『自分の身体は最後まで残る自分の持ち物』
ということです。
今のようにいろんな物事がオンラインに置き換わっても、それを受けたり発信したり感じたり処理したりするのは、結局自分の身体のどこかです。

椅子に座ってばかりで肩こりがひどくなるのも、寝る前にストレッチをしてスッキリするのも、全て身体を通して起こる現象ですね。
これだけオンラインになっても身体の重要性というのは1mmも変わりません。
そして『ダンス』というのはそれだけ重要な身体を、『五感全部を使って動かして磨いていく行為』だとも思っています。
もし今、時間の余裕ができていたら、ひょっとしたら今まであまり顧みてあげられなかった身体を、愛おしんで慈しんで動かしてあげて欲しいです。
大きなスタジオでめいっぱい身体を動かすことはできなくても、室内でできるストレッチやヨガ、バーレッスン、自重トレーニング、少し外に走りに行くのもいいかもしれません。

動かしてあげることで筋肉や関節、身体の隅々までに血やエネルギーが巡るようになり、身体が喜んでいるのを感じられるようになりますよ。
「やり過ぎないこと」「身体に意識を集中すること」
がコツです。
そうやって最後まで自分の『意識』と一緒にいてくれる『身体』のことを、
意識して手入れしてあげる、そんな期間にできたら、このStayHomeな状態もきっと楽しい時間に変わります♪
そしてぜひ一生続けられる習慣にしていって欲しいです。
最後になりますが、
最前線で働いている医療関係者の皆様、エッセンシャルワーカーの皆様へ
最大の感謝を表したいと思います。

Studio ENTRADA
KaQ

ライター: KaQ / 羽祢田核(はねだ かく)

国立大学生物学科在学中にダンスにのめり込み卒業後、ダンサーとして大手テーマパークで活躍。
その後は舞台やコンサートに出演し2014年『ブエノスアイレス午前零時』出演を機に、2015年よりアルゼンチンタンゴを本格的に始める。
現在は清澄白河でStudioENTRADAを主宰し、キッズダンス・大人向け各種クラス・アルゼンチンタンゴなどを、4歳から74歳まで幅広い世代に向けて教えている。
ジャズ・ヒップホップ・サルサ・タンゴなど様々なジャンルの経験と理系的なセンスで組み立てたレッスンは、わかりやすく他にはない独特の切り口を持つ。

日本アルゼンチンタンゴ連盟認定インストルクトール
江東区立深川小学校HipHop講師
2017年Chacottダンスキューブ勝どきスタジオパフォーマンス出演


StudioENTRADA公式Webサイト

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