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浦野 芳子
[2014.08.20]

ヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞を受賞した、オニール八菜にインタビュー

バレエコンクールやアワードでの日本人の受賞が続々報道される今年。日本人を母に持ち、パリオペラ座バレエ団正式団員となり昨年末にコリフェに昇格したオニール八菜がヴァルナ国際バレエコンクールで銀賞受賞、のニュース。今回は金賞該当者なしでの銀賞だから実質1位というわけである。
その彼女が、ヴァルナでの授賞式を終えてすぐ、来日。チャコット渋谷本店での受賞報告イベントの翌日、メディアの取材に応じた。
短い滞在中に、イベント、取材、さらに撮影(オニール八菜は2014年秋冬のチャコットのカタログ及び広告に登場予定!)と忙しいスケジュールをこなしつつも、終始笑顔で、丁寧な言葉で質問に答えてくれた。
体力も、向上心にも満ち溢れている、期待の21歳だ。

オニール八菜、といえば、ローザンヌ国際バレエコンクールで、シューズのリボンがほどけたのに落ち着いて踊りきった、というエピソードが今や伝説。そんな彼女にとって、コンクールとは何なのか、そこから話を伺ってみた。

スキルアップのために参加したヴァルナ国際バレエコンクール

―ヴァルナに出ようと思ったのはどうして?

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八菜 現在コリフェとして舞台に立っていますが、群舞だとなかなかパ・ド・ドゥを踊るチャンスが無いんです。だからコンクールを通してパ・ド・ドゥで舞台に立つという経験を勉強したかった。ヴァルナ国際バレエコンクールは、参加のしかたをソロとパ・ド・ドゥから選べますから。

―パートナーは、同じオペラ座の仲間ですね。

八菜 はい、ジェレミー・ルー・ケール、私と一緒に入団した同い年の21歳、コリフェです。もうひとり、オペラ座からソロで参加したユーゴ・マルシャンといっしょに銅賞を受賞しました。

―どちらからコンクール出場の相談を持ちかけたのですか?

八菜 去年(2013年)の11月くらいにふたりでそんな話をし始めて、年が明けたころから練習を始めました。

―もしかして、次の昇格試験への影響なども視野に入れていた?

八菜 それは無いです。コンクールの結果は、オペラ座内ではそんなに影響があるとは思えないので……。ただ、ガラ公演などで役がいただけるチャンスは作れるかな、とは考えました。

―それにしても、コンクールもオペラ座の昇進試験にも、実に落ち着いた態度で臨んでいると評判ですよね。出番前にはどんなことを考えているのですか?

八菜 ……特別なことはしていません。もちろん緊張はしますが、私の場合は、舞台に出ていくとただひたすら踊りに集中している、という感じになります。

― オペラ座の昇格試験なんて、ライバルのほとんどはオペラ座バレエ学校出身のバレエエリートたちでしょう? その彼らを差し置いて選ばれる理由を、自分で分析してみたりすることはありますか?

八菜 もしも、私が本番に強いのだとしたらそれは、子供のころからたくさんのコンクールを経験しているから、慣れているせいかもしれません。オペラ座バレエ学校にいると逆に、コンクールに出る機会は少ないと思います。

―そこで度胸が養われた?

八菜 恐らく。でもそれだけでなく、やはりまじめにレッスン、リハーサルに臨むことも大切だと思います。

レッスンは絶対に休まない。

―今回はエトワール達からの指導も受けたと聞きました。

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八菜 はい。オーレリー・デュポンさんからは『グラン・パ・クラシック』と『ドン・キホーテ』を、アニエス・ルテュステュさんからは『ジゼル』2幕のパ・ド・ドゥを指導していただきました。オーレリーさんからはオペラ座らしいクリーンなスタイルについて細かく教えていただきました。特に『グラン・パ・クラシック』のような作品には、お話が無いですからパリ・オペラ座らしいスパイスの効かせ方が大切なんです。それから、音とアクセントの取り方も全部チェックされました。音を細かく聴いて踊ると、以前より踊りがはっきりしてくるのが感じられましたね。アニエスさんからは、役柄の捉え方、考え方について教えられました。他の人の真似ではなく、自分の表現で役柄になりきる、というのは本当に難しいです。

―エトワール達には、自分からお願いして指導してもらったのですか?

八菜 はい。……ただ、オーレリーさんには以前、教室の片隅で自習していた時に声をかけていただき、それ以来機会があるごとにアドバイスをいただいていました。今回のヴァルナでの受賞にも、ヴァカンス先からわざわざおめでとうのメールを送ってくださいました。エトワールというのは、みんなをまとめていく仕事でもあるから、本当に素敵な人が多いです。アニエスさんからも、とても誠実な言葉で、指導していただけたのが嬉しかった。私も彼女たちのようなダンサーになりたい、と思っています。

―オペラ座に入団して困ったこともあったのではないですか? たとえばバレエスタイルの違いとか……。

八菜 はい。私が勉強していたオーストラリアバレエ学校はワガノワスタイルの流れを汲んでいましたから、オペラ座スタイルに慣れるのには少し時間が必要でした。姿勢もパの取り方も違います。一言で言うとオペラ座はシンプルでエレガント。少しでも早くそれを身に着けるために、休日以外、毎日レッスンに出て、さらに個人レッスンもお願いしていました。

月に最低10回のレッスンが、パリ・オペラ座バレエ団団員に課せられるノルマ。団員の中にはぎりぎりの回数しかこなさない人もいる中、八菜さんは日曜以外の毎日、ガルニエのスタジオに通っている。

勝つためではなく、踊りたいという気持ちを大切に。

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―八菜さんは、子供のころからパリ・オペラ座バレエ団に憧れていたと聞きますが、いつかはここに入ろう、と考えていたのですか?

八菜 子供のころにパリ・オペラ座バレエ学校の公演を観たり、映像でオペラ座の舞台を観たりするうちに、私にとってのバレエはパリ・オペラ座バレエ団、ということになっていました。だからなんとかして学校から入りたいとは思っていたのですが、なかなかチャンスがなかったんです。実は学校へビデオを送ったこともありました。

―願いかなって、団員になり、契約ダンサーを2年間経験し、カドリーユからコリフェに昇格しましたね。順調なスタートだと思います。もちろん、これからも順調にキャリアを積んでいかれることを願いますが、不安になったり弱気になったりすることもあるのでは?
 そんなときはどうしていますか。


八菜 コンクールも試験も、“勝つため”ではなく“踊りたい!”という気持ちで臨んでいます。試験で昇格できない年ももちろんあるとは思いますが……やり続けるしかないと思っています。もうスジェで9年頑張っている友人もいますから。

パリ・オペラ座バレエ団の頂点にいつか、流暢な日本語を話す人が立つ日が来ることを、楽しみにしたい。