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ダンスで物語を綴る『ダンスカンタービレ2025 ~VIOLET~』を手がける中塚皓平にインタビュー

インタビュー&コラム/インタビュー

パフォーマンスグループDIAMOND☆DOGSのメンバーで、近年ダンサーとしてだけではなく振付や構成・演出の場でも活躍する中塚皓平が手がける新作『ダンスカンタービレ2025 ~VIOLET~』が、元宝塚男役スター彩凪翔を迎え博品館劇場で上演される。
彩凪のほか、泉まいら、留依まきせ、有栖妃華、音波みのり、沙弥音、白峰ゆりの宝塚のOGたちと、ダンサー篠本りのと松本ユキ子、そして中塚自身が出演。一部の回には東山義久がゲスト出演する。
稽古開始直前の中塚皓平が、新作にかける意気込みを語ってくれた。


――2年ぶりのインタビューとなります。
その間に所属されているDIAMOND☆DOGSは休止期間を経て、新体制となりました。グループとしての変化について教えてください。

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中塚 グループとしてはTeam Novelというとびっきり若い五人が加わったことが大きな変化です。オーディションという形でメンバーが一人一人を選びましたが、"選ぶ"ということを今までやったことがなかった、初めてのことでした。もちろん参加者も緊張してますが、こちらも緊張するんですよ。20歳くらいの子たちの人生を決める、なかなか責任があるなと。
二次も三次も最終も見て、それぞれの成長の過程も見られたので、この子だったらこういう場面が似合うのかなとか、こういう子にはこういうものを作って欲しいとか、そういった視点が新たに増えたことがグループとしては一番大きいです。

――オーディションの時には先のビジョンが見えたということでしょうか。

中塚 五人が集まったらこういうことができるんじゃないか、という話はよくしていましたね。

――新メンバーが加わった公演、『White Valentine Show 2025 connect』を観させていただきましたが、これまでの良さや持ち味を残しつつ、新メンバーを迎え良い方向に進化していると感じました。

中塚 本当ですか、よかったです。新メンバーは若いですからエネルギーがありました。5人増えて、久々の博品館で人数多くて男ばっかりで「せまっ!」ってなりましたね(笑)。迫力はあったと思います。

――「ダンスカンタービレ」はダンスで物語を綴る舞台として、森新吾さんが立ち上げたシリーズですが、初演、再演から続く3回目の上演です。

中塚 初演は観に行って、再演はゲストで出させていただきました。その再演からもう七年経ちます。この「ダンスカンタービレ」の冠を大事にしつつ、今の自分にできるものを引き出して作りたいなと思っています。

――初演の時の感想はいかがでしたか。

中塚 正直、羨ましかったです。DIAMOND☆DOGSリーダーの東山さんがBOLEROを作って、(森)新ちゃんがダンスカンタービレを作って、あと近い存在ですと長澤風海くんも自身のカンパニーを作っています。自分がやりたいこと、自分の夢を形にするカンパニーを作れるということは、やっぱり羨ましくて。いつか自分もやりたいなと思っていたところ、今回こういう機会をいただけました。

――今回はその「ダンスカンタービレ」を構成・演出・振付されるわけですが、どのように取り組まれていますか。

中塚 初演と再演がジャック・ザ・リッパーやロンドンがテーマの洋風だったので、今回は真逆にしようと思って和をテーマにしました。僕、戦国時代が好きなので、信長や秀吉、家康などある程度皆さんがご存知だと思う歴史を題材にしています。僕以外のキャストが全員女性ということなので、僕の好きな小説「女信長」を下地にして作れば、男一人である意味もできるかなと思いますし、男役さんが格好良く見えて、娘役さんが可愛く、綺麗に見えるように作れるかなと思って構成しました。

――宝塚歌劇団OGの方たちは男役、娘役という要素があるんですね。

中塚 はい、あります。格好良い女上司といいますか、そういった要素があります。ある程度の構成はできたので、あとは振付家の先生とお話しながら進めていきます。

――2018年の再演の時にインタビューさせていただいているのですが、森さんの舞台にかける想いをひしひしと感じました。中塚さんにも受け継がれているものは大きいと思いますが、何か森さんの「教え」のようなものはありますか。

中塚 僕が今も大事にしている教えが「質問されたら10秒で答えろ」です。振付で入った時、構成や演出をする時、共演者の先輩という立場だった時、どんな時でも何か聞かれたら10秒で答えられるようにしなければいけない。それくらいじゃないと、みんなが頼れないじゃないですか。なのでそれは今も大事にしています。

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――副題に「荒ぶるクールビューティ vs いぶし銀のつわもののいくさ場 桔梗の花咲き乱れ」とありますが、どのような舞台を構想されているのか、お話できる範囲で教えてください。

中塚 これから作っていきますが、皆さんに格好良くいて欲しいんですよ。自立した女性、といいますか。そこで僕が翻弄されたり。クールビューティの彩凪さん、僕がいぶし銀(笑)、桔梗は明智の家紋から来ています。

――殺陣もありますか?

中塚 いえ、ある意味ファンタジー作品なので、殺陣をしてしまうと現実味がありすぎると思うので、殺陣ではなく踊りで作るつもりです。

――今回は中塚さんの他は宝塚OGの方と女性ダンサーの出演です。男性ダンサーに振り付けるのと、何か違いや気をつけている点などありますか。

中塚 体つきや筋肉のつき方がまず違うので、無茶な動きは入れないようにしています。衣装的にも今回しっかり作っていただいているので、フロアでの無理な動きはないようにしています。あと、皆さん品を大事にされているので、品格を落とさないようにしたいなと思っています。男の子だったらもっと力強くとか、野生味溢れた感じにしたりしますけれど。

――振り付けはどのようにされていますか。

中塚 その曲の意味から、例えば手を取る時にもどちら側から取るかなど、お芝居をしながらということを大事にしています。オープニングは顔見せの意味もあるので、それぞれの良さや得意なことを見せる。そういう風に見せる時とお話の部分と、分けて考えています。

――完全に踊りだけで構成されていますか。

中塚 いえ、歌もあります。やはり知っている話でも踊りだけでは伝わりづらい部分もあるので、歌が得意な方には何曲か歌ってもらって、また違う華を添えていただけたらと思っています。

――中塚さんはモダンバレエの出身なので、踊りのみで物語を伝えることの大変さはよくご存知ですね。

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中塚 本当に。こちらは伝えているつもりなのになんで伝わらないのかな、ということもありました。

――観る側には想像の余地があると言いますか、前回の「ダンスカンタービレ」も色々な解釈の仕方があってそれも楽しめました。

中塚 そうですね。そういう部分も残しつつ、最後見終わった後に「あ、よかった」って思ってほしいので歌も入れています。

――物語の着地点は明確なんですね。

中塚 一応はあります。どうなるか・・!

――観る側が、しっかり受け取れるかですね。

中塚 怖いなあ(笑)。でも単純なんですが、この人たち格好良かった!とかでも全然いいんです。

――中塚さんは宝塚歌劇団でも振り付けをされていますが、その際の経験は今回も生かされていますか。

中塚 活かせるようにがんばります(笑)。宝塚で振付をした時にいたメンバーも今回結構いるので。

――その時の彩凪さんの印象はなにかありますか。

中塚 初めて僕が宝塚で振付をした時にいらしたのですが、本当に凛とした方でした。セリ上がりで舞台上に出てくるのですが、立ち姿がもう凛としていて、後ろに大きなオーラが見えるくらいで、この人すごいなって、とても印象的で覚えていていました。初めて振付をした組だったというのもあるかもしれませんが、それもあって今回信長をぜひお願いできたらな、と思い声をかけた次第です。

――宝塚をご覧になる様になったきっかけは何かあるのでしょうか。

中塚 僕が18歳の時に「RED SHOES, BLACK STOCKINGS」という舞台に出演したんですが、その時の主演が大浦みずきさんだったんです。大浦さんが網タイツに赤いピンヒール、いわゆるダルマ姿で椅子に座ってフィンガースナップで音を鳴らしているのを見て、なんだこの人!ってなりました。それまでは宝塚自体の存在は知っていましたが、女性だけの劇団というだけで、どんなことをしているのかは知らなかったんです。それから興味が湧いてビデオテープを借りて見たりしました。なので大浦みずきさんがきっかけです。

――大浦さんは本当に屈指のダンサーでしたね。

中塚 本当に。その時に風花舞さんも出演されていたんです。お二人が川崎悦子先生の振付で踊っているのを見て、なんなんだこの人たちって思いましたね。
その後DIAMOND☆DOGSで大浦さんと共演した時も、ちゃんと覚えていてくださって、ありがたかったです。この時、大浦さんをリフトすることになるなんて。とんでもないことでしたが、光栄でした。

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――ダンサーのお二人も、バレエだけではなくさまざまな経験をされている方ですね。

中塚 そうですね、バレエだけでなくジャズもできますし、ミュージカルにも出演していたり。めちゃくちゃ身体が利くので、とことん踊ってもらいます。!

――バレエ出身の方がミュージカルに出演されたり、ダンスの多様化といいますか、色々なジャンルの幅が広がってきている様にも感じます。

中塚 そうですね。でもダンス公演って、クラシックはバレエ団があるけど、ジャズダンスなんかは教室の公演とかが多いと思うんです。オリジナルの舞台も自主制作だったり。そんな中で、こういう機会をいただけたのは本当にありがたいことだなと思います。

――DIAMOND☆DOGSもまさに多様化、というグループですね。

中塚 僕たちは昔から何でもやりますから(笑)。入りたての頃は楽器もやらされました!3週間で楽器弾けるかっていう話なんですが(笑)。

――今回もノンジャンルですか。

中塚 そうです。振付の先生が何人かいらっしゃって、梅棒の楢木和也さん、先日万博でも振り付けされていた西川卓さん、宝塚出身の百花沙里さんです。西川さんと百花さんは宝塚歌劇団で振り付けもされています。楢木さんは同い年で、外の現場で一緒になったことがあるんです。
音楽は奥村健介さんと、小川優さんに作ってもらっています。今も舞台俳優をされている小川優さんが、今回初めて舞台の音楽を作るんですよ。あと初演の時に使った楽曲を何曲か使用したいので、音楽協力でTAKAに入ってもらいます。初日を観た時に「あ、あの時の曲!」ってなっていただけるかなと思って。

――物語の見どころはどんなところでしょうか。

中塚 彩凪さんが信長、僕が明智でこの二人が柱となっています。女信長と男明智で、明智は女上司に対しての尊敬もありますし、信長からしても優秀な部下だというのがあります。それが友情なのか、それとも男女だからもしかしたら恋に発展するのか、で、なんで本能寺?!というように、二人の絆を描きながら歴史も交えています。周りの人たちがみんな女性で、女家康とか女秀吉、もちろん濃姫も。信長と濃姫の間に僕が絡んで、明智なんなの!という三角関係のようなものがあったり、信長、家康、秀吉の三英傑の戦いなども見せられたらと思っています。

――ゲスト出演の東山義久さんはどんな役どころなのでしょうか。

中塚 リーダー(東山)は、あるものの擬人化として、ある意味僕の背中を押してくれる存在であり、道を示してくれる存在という役どころですね。
この先リーダーと二人きりで踊ることってなかなかないと思うので、今のうちですよ!二人のデュエットを見たいという方は(笑)。あと何年もしたらリフトなんて老々介護になっちゃいますからね(笑)。艶のある僕たちの踊りを見たい方はぜひ今のうちに!(笑)

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――最後に、舞台に向けての意気込みや一番の見どころなどをお願いします。

中塚 作曲の奥村さんとだいぶ前にやりたいことを色々と話していたら、オープニングだけで9分になっちゃったんですよ(笑)。それを明日から三日間振り付けるんですけど、多分一番の見どころだと思います。序盤でこんなに大丈夫?!ってお客さまが思うかもしれませんが、ダンス公演なので幕開けからエネルギッシュに、1曲目からメイク落ちるんじゃないかっていうくらい汗をかいて「こんな世界です!皆さまどうぞよろしくお願いします!」という風に、そこから物語に入っていけたらな、と。そして、本編の最後にちょっとしたショーを構成として組み込んで、そこでは役とは違ったご本人の笑顔や格好良さで魅せられる場面を作っているので、そこも見どころの一つかなと思います。
また、僕がDIAMOND☆DOGSに入ってそろそろ20年になるんですが、本当にその間色々な舞台を経験させてもらいましたし、色々な踊りのジャンルの方たちと共演させてもらいました。振付もそうですし、踊りだけではなく、芝居も音楽もたくさんの経験を20年の間にさせていただいたので、その集大成として蓄えてきたものをこの舞台でしっかり発揮できるようにしたいと思っています。このダンスカンタービレというのは森新吾が命をかけて作った作品ですので、泥を塗らない様に、きっとどこかで見てくれていると思うので喜んでもらえるように、と思っています。
暑い夏、冷房の効いた劇場ですけれど、お客さまも汗をたくさんかいて、いっぱいエネルギーをもらったと喜んでいただけるような作品を作っていきたいと思いますので、ぜひとも劇場へ足をお運びください。

――今日はお忙しい中ありがとうございました。本番を楽しみにしています。

ダンスカンタービレ 2025 ~VIOLET~

2025年7月30日(水)~8月6日(水)
博品館劇場
https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/pr_2025_07_30

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