マルチストーリーの新作「NORA」公演直前インタビュー=DAZZLE ⻑谷川達也

----これまでにも様々な形態で作品を作ってこられていますが、3月に上演される新作「NORA」の特徴を教えてください。

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長谷川達也

長谷川達也 今回の特徴は何と言っても、マルチストーリーを取り入れている事です。以前、『鱗人輪舞(リンド・ロンド)』という作品で、休憩中にお客様にエンディングを選んでもらうマルチエンディングに挑戦しましたが、すごく好評で。僕らも手応えを感じ、それをもっと進化させたいと思うようになり、今回は物語の中で何箇所もお客様に選んでもらう分岐点が出てくる作品を作ろうと思いました。

----「NORA」はマルチストーリーで観客参加型ステージ、ということですが、観客は自分のストーリーをどのようにして選ぶのでしょうか。

長谷川 会場でマルチストーリーを選択するための装置を有料で貸し出します。ご希望のお客様には劇中に登場する分岐点で[RED or BLUE]を提示して登場人物の行動を選択してもらいます。

----新体操グループ BLUE TOKYO を共演に迎えられますが、これもマルチストーリーを作ることと関係ありますか。

長谷川 BLUE TOKYOは世界最高峰の身体能力を誇る男子新体操グループなのですが、彼らの驚異的な身体能力が加わることによって、ヴァーチャルという非現実世界を表現する幅が広がり、今回の劇中にマルチストーリーを取り入れる作品『NORA』が実現したと思います。

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----近未来の東京のオンラインゲームの中の世界、という設定です。かなりハードな内容になるのでしょうか。一番の見どころを教えてください。

長谷川 一番の見どころは、やはりマルチストーリー。お客様の選択次第で物語の進行が変化していく体験を是非劇場でして頂きたいです。細かく分けていくと20パターン以上あるんですよ。選択によってはできないシーンもあるかもしれない・・と思いながら今は制作していますが、本番中リアルタイムにどんな選択がされるのか、僕らも毎公演ドキドキしながら踊ることになると思います。
あとは、BLUE TOKYOの驚異的な身体能力。ゲームの非現実的な世界に登場するキャラクターにハマっていて、よりハードな世界感になっています。

----音楽に林ゆうきさんを選ばれた理由はどういうところでしょうか。

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林ゆうき

長谷川 彼とはもう10年来の付き合いなのですが、僕がBLUE TOKYOの振り付けを担当したショーを観に来ていて、紹介してもらったのがきっかけです。
彼自身も男子新体操をやっていた経験があるので、僕らが踊るときの身体感覚だったり、取りたい音やテンポを外さない楽曲作りをしてくれるのがすごく助かります。それに、すごく勘がいい人なので、僕は音楽を発注する時は「ここはこういう感情だから、こうしたい」とかなり細かく伝えるのですが、それを汲み取ってくださり、仕上がってきた音楽が予想を超えたクオリティになっている。毎回、DAZZLEの作品の世界観を一緒に作り上げてくれる、僕らにはなくてはならない存在です。
今回も、現実の世界とヴァーチャルの空間の違いの音作りは素晴らしいです。

----演出・脚本の長谷川達也さんはアジアやヨーロッパ、中東などから招聘されるなど国際的に活躍されています。海外のダンスもいろいろとご覧になっていると思いますが、日本のダンスと比べていかがですか。

長谷川 以前、ルーマニアのシビウ国際映画祭(2011年に「花ト囮∼Misty Mansion∼」で参加)や、中東のイランで踊った時の事が印象に残っています。僕らは海外からのカンパニーという事で公演ができたのですが、こういった国々は宗教の問題で歌ったり踊ったりすることが原則として禁止されていたり、その時の国の政権者を讃える作品しか上演できなかったりする。すごく抑圧されていて、表現者が自由に表現できない。
それに比べて、日本は舞台上で服を脱いでもいいし、フィクションとして人を傷つける事もできるし、基本的には演出で何をやっても許される。表現者にとって、恵まれた環境の国なんだということを実感しました。
ただ、恵まれている環境だからいい作品を生み出せるという事ではない。
抑圧された制限があるからこそ、タブーな要素をできる限りのもので表現し、その結果、力強い、素晴らしい作品が生まれていることも事実。
人が何かを表現する時、一人でたった1つのスポットライトの中で語る、身体を動かすだけで観客を魅了させる事ができるという、本来の人間が持つ力の凄さを海外に行くとものすごく感じます。表現者として一番大切なことは、与えられた環境、ステージの上でどれだけ人間力を発揮できるかだと思います。

----今回の新体操もそうですが、ダンス以外のジャンルとのコラボレーションについてはどのようにお考えでしょうか。

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© 飯野高拓

長谷川 僕やDAZZLEのスタイルは、ジャンルに頓着していない。僕らはDAZZLEの活動を始めた時からダンスに言葉をアテたり映像を使う事に抵抗はなかったんですが、それをナンセンスだという人たちもいた。その意見も理解した上で、僕は人の心が動くことであれば何でも取り入れたらいいんじゃないかと思う人間なので、それを軸に考えた時にジャンルの重要性は全くなくなるんです。どんなジャンルであっても、ダンスと絡めてDAZZLEと絡めて、これは面白くなるなと思うことであれば、何でも積極的にコラボレーションしたいと思っています。ただ、それは痛みを伴う事でもあって。自分たちがやりたいと思うことと違う表現が入ってくると、別の主張が加わることになり・・そこの摩擦が苦しいこともあるし、でも、その苦しみがあるからこそ新しいことが生まれる可能性もある。
新しいものを作る事は凄く価値がある事だと思っているので、常にチャレンジしていきたいです。

----今後のDAZZLEの活動について、お話いただける範囲で教えてください。

長谷川 2021年1月に大阪で開催する日本博の大型ダンスプロジェクトを上演する為に、日本各地やアジア各国のダンサーと1つの物語を作っていくことに挑戦します。
あとはやはり、イマーシブシアターをもっともっと突き詰めていきたい。最近、体験型の舞台はどんどん増えてきていますが「イマーシブシアターならDAZZLEだよね!」と言われるように、どんどん極めていきたいですね。

物語の中にマルチストーリー を取り入れた舞台は、ダンスの公演では初めてだと思うので、今回の新作公演『NORA』を是非、劇場に体験しに来てください!

----公演直前のお忙しい中、本日はありがとうございました。マルチストーリーの新作を楽しみにしております。

▼公式サイト DAZZLE新作公演「NORA」中止のお知らせ
https://nora-dazzle.tokyo/dazzlenora

公演概要「NORA(ノラ)」新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため公演中止

公演日時:2020年3月5日(木)〜8日(日) 全6回公演
会場:東京建物 Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)

お問い合わせ・予約:キョードー東京 0570-550-799(平日 11 時-18 時/土日祝 10 時-18 時)
主催:キョードー東京 企画・制作:DAZZLE

物語の行く末に参加するかどうかは、お客様の自由です。参加希望の方は、当日会場で有料貸し出しする、自らの意志を示すための装置を劇中で使用して頂く形を予定しておりま す。

演出・脚本:長谷川達也 振付:DAZZLE 音楽:林ゆうき
出演:
DAZZLE (長谷川達也、宮川一彦、金田健宏、荒井信治、飯塚浩一郎、南雲篤史、渡邉勇樹、高田秀文、三宅一輝)
BLUE TOKYO(石塚智司、大舌恭平、佐藤喬也、椎野健人、石井侑佑、植野洵)

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