「SAMBA NIGHT 2022」開幕直前!中塚皓平:インタビュー

インタビュー&コラム/インタビュー

インタビュー・写真=上村 奈巳恵

コンテンポラリー、ジャズ、タップ、ストリートと様々なダンスを得意とするダンサーとヴォーカルで構成される7名の男性グループDIAMOND☆DOGS(以下、D☆D)。ショー、ライブ、ストレートプレイなどこれまでにも独自のスタイルでオリジナル公演を数多く上演してきたD☆Dの次回作「SAMBA NIGHT 2022」の稽古が始まった5月、メンバーの中塚皓平に話を聞いた。

――「SAMBA NIGHT」2度目の再演を控えた2020年に新型コロナウィルスの感染拡大による公演の延期が決まりました。ちょうど2年前の今頃だったと思いますが、当時はだいぶ準備も進んでいたのでしょうか。

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中塚 そうですね。上演が決まって稽古に入る前に、まずは音の準備が始まっていました。初演や再演時の曲も使用する予定だったのですが、なにせ初演は2009年なので今とは使っている機材が違いますし音質も違うので、まずは音楽を変えていこうとスタートしていて、8割方できたところで延期となりました。

――では今回はその時に準備されていたものを持ち越しての再スタートとなっているのですね。

中塚 そうですね。持ち越した部分もありますし、前回は分からなかったり見えなかった部分を、メンバーと話してブラッシュアップしたり新しく作ったりしています。

――その後は舞台の中止も多く、ダンサーや舞台関係の方たちにとっては不安な時期が続きました。2020年以降、緊急事態宣言下などで活動ができない期間はどのように過ごされていましたか。

中塚 体は一応は動かしていましたが、外に出て動けないですしスタジオもやっていなかったので、自分の引き出しを増やすために、映画見たり小説を読んだりしていました。ありきたりかもしれませんがそうやって知識や知恵を身につけようと思いまして。

――忙しかった頃にはなかなかできなかったことをしたわけですね。

中塚 そうですね、今は全く見れません!見たいなあ(笑)。

――その間に培った部分は今回の公演には活かせそうですか。

中塚 活かせてるかな、活かせられていたらいいと思ってはいます。2020年の時は現在のメンバーが揃ってまだ1年くらいだったのが今は3年経って、活動できなかった期間にはメンバーと結構密に連絡を取り合ったり相談したりもしましたし、よく話し合ったことで2020年の時よりもお互いのことが分かってきたので、このメンバーにはこうさせたらいいかな、この人はこうさせたら面白いかなといったような発見が、2年前に比べたら段違いにたくさんあります。

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「SAMBA NIGHT 2022」舞台稽古より SHOW 1

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SHOW 1 常川藍里、咲山類

――2020年にもし上演していたとしたら、今回とはだいぶ違うものになっていましたか。

中塚 全然違ったと思います。それぞれに任せるポジションも違っていたかもしれません。

――今回の公演はD☆Dリーダーの東山義久さんが不在で、メンバーの中塚さんと咲山さんが中心になると伺っています。立ち位置といいますか、どんな役割を担っているのでしょうか。

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中塚 最近のD☆Dの公演では、僕は稽古場での進行を取りまとめるような裏番長といいますか(笑)、そんな役割で、表番長の東山さんがいないので今回の表番長は陽気な咲山くんにお願いしようかと(笑)。そういった感じで普段のD☆Dの公演の作り方とあまり変えていないですね。振付をHomerにお願いしたり、音楽面は咲山くんに任せたり、他のメンバーも積極的に動いてくれているので、それぞれに任せる部分はお願いしています。
リーダーがいない、って初めはちょっとどきどきしましたけど(笑)。

――では続いて中塚さんご自身のことも伺いたいと思います。ダンスを始められたきっかけは何でしたか。

中塚 僕の1つ上のいとこの女の子が4歳の時に踊りを習いたいけど一人じゃ嫌だと言って、3歳の僕は稽古場に行ったらお菓子がもらえると聞いて一緒に行ったんです。そして稽古に行ったら本当にお菓子をもらえたから楽しくなって、そのままそこのモダンバレエ教室に入りました。

――小学生の頃からコンクールでも結果を残されていますね。

中塚 5歳で初めてコンクールに出たのを覚えています。もう30年くらい前のことですから、当時は小さい男の子が珍しかったんです。当時の僕はそんなこと分かりませんでしたが、舞台袖で見ていた人がたくさんいたと先生にあとで聞きました。今回の「SAMBA NIGHT 2022」でご一緒する沙月愛奈さんもコンクールで一緒だったんです。5歳で人前に出てよかったのかなとも思いますが、懐かしいな。

――コンクール同世代の方たちとは何度も顔を合わせることもあったと思いますが、印象に残っている人はいますか。

中塚 少し学年は離れるのですが、男性でこの人かっこいいなと思ったのは上原かつひろくん。かっちゃんは3〜4歳上だったと思います。あとは、彼と同じ教室の双子の姉妹も印象に残ってます。

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Sapphire Moonチーム

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Sapphire MoonのHomer、宇月 颯、廣瀬真平、木戸邑弥

――全国舞踊コンクールの過去の受賞記録を見ますと、沙月さんと中塚さんが現代舞踊部門で一緒に受賞されている年もありました。同じ年のクラシック部門では、昨年モーリス・ベジャール・バレエ団の来日公演に出演されていた大貫真幹さん、ブノワ賞受賞の木田真理子さん、新国立劇場バレエ団の米澤唯さんや奥田花純さん、菅野英男さん、BRBの平田桃子さんら、現在もご活躍されている方々が他にもたくさん名前を連ねておりました。授賞式は錚々たる顔ぶれだったわけですね。

中塚 表彰式でご一緒だったわけですね。当時はそれよりも賞をいただけたら、夏のコンクールといったら埼玉でしたが、会場があった南浦和の駅前のデパートでお子様ランチを食べられる!とコンクールに参加していた記憶があります(笑)。
あとコンクールですごく覚えているのは、東京新聞(全国舞踊コンクール)で3位の時だったかな、初めて母と叔母に帝国ホテルのレストランに連れて行ってもらったんです。ご褒美で。そこにシャンパンのシャーベットっていうのがあって、それを一口、二口食べて、何を思ったのか「ぼく酔っ払った」って言ったことを覚えています、アルコール分は飛んでいるからそんなわけはないのに(笑)。

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Sunny Rubyの米原幸佑、和田泰右、中塚皓平、新開理雄

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jewel 沙月愛奈

――そういった学生時代を経て、高校を卒業されてすぐにプロのダンサーとなったわけですね。

中塚 そうです。中学・高校の頃にも年に1、2回舞台には立たせてもらっていましたが、高校を卒業してからはきちんと事務所に所属しました。

――そしてその後D☆Dに加入されたのが20歳の頃でしょうか。

中塚 はい20歳の時、2007年です。

――そこから15年、濃厚な日々だったと思いますが、これまでを振り返ってみていかがでしょうか。

中塚 とてつもなく濃厚な時間でしたね。中学生を15年間やってきたような感じです(笑)。中学生って多感な時期で刺激も多いじゃないですか。

――プロのダンサーになろうと決意したきっかけなどは何かあったのでしょうか。

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中塚 僕、ダンスをやりかったので本当は高校にも行きたくなかったんですよ。小さい頃からずっと踊ってきたので普通の職に就くことはないと思っていて、文化庁の支援で1年間海外で研修を受けられる制度に応募しようと思って、先生方に手紙を書いていただいたりもしていたのですが、親に「高校くらいは出なさい!」と言われ、まあそうだよな、と思って。そして万が一海外に行けることになった場合を考えて、英語とフランス語を専攻しているような高校に行くことにしたので親も納得してくれました。

――これまでずっと踊りが中心の生活だったわけですね。

中塚 そうですね、部活も入っていなかったですし。

――本当に踊りがお好きなんですね。

中塚 何ででしょうね(笑)。

――誰かの踊りを見て憧れた、とかでもなくその熱意が継続してきたのはすごいことですね。

中塚 小学生くらいの時、父にジョルジュ・ドンの「ボレロ」は見せてもらいました。
シンプルな振りだけれども、大人になってもあの振りは覚えているくらい当時小学生の僕にとっては衝撃的でした。一挙手一投足目が離せない舞神がそこにいた。

――D☆Dに新メンバーが加入し今の体制になって、各自の役割などもだいぶ変化があったかと思います。

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宇月 颯、中塚皓平

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「SAMBA NIGHT 2022」舞台稽古より SHOW 1


中塚 リーダーも話していましたが、それまでにもメンバーが一人変わったりしたことは僕も経験しましたが、2019年は3人も変わって組織的にもごそっと入れ替わったので、いわゆる中堅といわれるようになった僕と咲山、和田の3人がどうやって引っ張っていこうかとすごく悩みましたし考えましたし、リーダーとも相談しました。ある意味、自覚はすごくレベルアップできたと思います。和田なんて特に、それまで一番下だったのが急に3人新しく入って来ましたし。僕らも急成長しないといけない、というのは今も日頃から考えています。

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「SAMBA NIGHT 2022」舞台稽古より SHOW 1

――いい意味で新メンバーに押し上げられた形になったのですね。この3年ほどで新メンバーのみなさんもすっかり馴染んだ印象を受けています。

中塚 そうですね。D☆Dの公演でショーももちろん大事ですけど、お芝居を何本かやったことでメンバーの人となりが演じるキャラクターから出ていたこともよかったと思います。この経験があって、この子はこういう作り方をするんだとか、この子はこういうキャラクターを違和感なくできるんだ、といった事が見えきて、話し合いも多くできたので。

――実際に舞台を経て、ギャップのある新メンバーはいましたか。

中塚 廣瀬は子どもの頃から舞台の経験があるので、やっぱり舞台の居方や作り方は分かっていましたね。Homerはお芝居は初めてとか2回目とかなのに、全然違和感がなくてそこはびっくりしました。理雄は普段は割とおとなしいタイプなんですが、お芝居になってキャラクターが入ったら芝居の捉え方がおもしろくて、もうちょっと掘り下げたら芝居畑で色々できるんじゃないのかな、と思いましたね。

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「SAMBA NIGHT 2022」舞台稽古より SHOW 2

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宇月 颯、沙月愛奈

――宝塚歌劇団で振り付けもされています。女性だけでの劇団で人数もとても多いので、普段の環境とは異なる部分が多かったと思いますがいかがでしたか。ご苦労などあったかと思います。

中塚 全然ちがいましたね。D☆Dで振付をする時は、お互いのことをよくわかっているので多少辛辣でも大丈夫なんですが、宝塚ではそうもいかないですし。13時から稽古だったら、もう13時ぴったりには全員が並んでいるんですよ。あれだけの女性がずらっと並んでいるので、僕最初は目を見られなかったです(笑)。皆さん宝塚音楽学校を卒業されているので規律正しくて、礼儀、礼節を守っていらっしゃる方たちなので、そこはやりやすいですが、なんかこう女子校に紛れてしまったみたいな居心地の悪さといいますか、そういうものはありました。

――宝塚のOGの方たちとの共演も多いですね。

中塚 そうですね、D☆Dとしても外部に個人で出演した時などもご一緒させていただいています。ただ、共演したOGさんは男役スターさんが多かったので、皆さんさっぱりとした方で先輩男子と話しているような感じでしたが、劇団には若い子も多いですし、娘役の方もいらっしゃるのでそれまでとは違いましたね。

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――以前の公演では元宝塚トップ娘役の舞羽美海さんと、トップコンビのようなシーンを踊られていましたね。

中塚 あれは最初は僕ではなくてリーダーが踊る予定だったのですが、直前の出番で間に合わないから「皓平やれ!」ってなったんです。

――中塚さんの夢を叶えられた、とかではなく。

中塚 みんなに職権乱用だって言われましたけど違うんですよ(笑)。本番では大丈夫でしたけど、稽古中は恥ずかしかったです。周りのメンバーから野次が飛んでましたし(笑)。

――3度目の上演となる「SAMBA NIGHT 2022」ですが、今回の公演はどのようなスタイルの公演でしょうか。

中塚 これまでの「SAMBA NIGHT」の基本的なストーリーの幹の部分は変わりません。元々は1つのチームが宝石を盗みに行く過程で失敗や挫折をして、それを乗り越える自分がいて、助ける仲間がいて、とD☆Dのメンバーのキャラクターを活かしてやってきましたが、今回はゲストの方がたくさんご参加くださるので2チームにしました。それぞれのチームカラーがあって、赤いチームは陽気なチームで、青チームは軍隊じゃないですけど規律を大事にしているIT系とかというように。それぞれが盗みに入った時に出会ってしまってどうなるか、グループの中でちょっと不器用な子が失敗した時にそのチームはどうフォローするのか、そのキャラクターたちが落ち込んだ時にどう復活するのか、ということを人数も増えたのでやってみようかな、というのが1幕です。

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――キャラクターについては当て書きをされたのですか。

中塚 そうです。この子は2枚目が似合うから、クールなナンバー2の役がいいかなとか。和田だったら、米原幸佑くんとは外の現場でも一緒だったので2人はセットで陽気なキャラがいいかな、とか考えましたね。歌は類と常川藍里くんにお任せして、物語を見ている2人がいたずら天使なのかいたずら悪魔なのか、という風に。

――今回は初めて女性の方が加わり、男性ゲストの方も5名。今まで一番出演者が多いですね。
宇月颯さんは昨年『ODYSSEY 2021』で共演されてみて、どんな印象を持たれましたか。

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中塚 前回は初めてだったので、宇月さん自身も緊張されていたと伺っていますが、蓋を開けてみたら笑いのツボが浅いというか(笑)、すぐに打ち解けてくださって、本当に気さくな方でした。今回は2回目ということで、より話もできて相談もできるなと思っています。「こうしたいんだけどいけるかな?」と相談すると、すぐに「いけます、いけます!」と言ってくださったり、無理な場合は「うーん」となったり。色々と相談ができるので一緒に作りながらできているな、と今回は思っています。

――沙月愛奈さんは2018年に宝塚歌劇団の雪組公演『Gato Bonito!』を振付けされた時にご一緒でしたが、共演は初となりますね。宝塚を退団されたばかりと伺っています。

中塚 退団されてからこういった舞台は最初になるかと思います。宝塚在団中から、身体がきく方というのはすぐに分かりました。雪組さんの『ファントム』を観に行った時も、男役さんの中に混ざっていても誰よりも大きく踊っていて存在感がすごかったです。今回ご一緒して、他のメンバーも稽古中にすごく見てるんですよね、「うっわ、めっちゃキレイ」って。そんな方なので、沙月さんに関しても色々と欲求が出てきてて。たとえばリフトなんかでも「こうしよう、ああしよう」と欲求がどんどん高くなって。この間も「階段上で、ここに乗って反ってみたら?」って言ったら「やったことないです!」って(笑)。

――お二人ともモダンバレエの出身なので、体の使い方などが共通していてやりやすいのでしょうか。

中塚 そうですね、一緒にユニゾンで踊っていてもすぐ覚えてものにしてくれます。あと沙月さん自身は他のジャンルのダンスもいろいろ挑戦したいというチャレンジ精神がある方で、ヒップホップもやってみたいとおっしゃっていますが、そこは今回の「SAMBA NIGHT 2022」であるのかないのか、お楽しみにということで。

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中塚皓平

――チラシにも「サンバ、ラテン、タンゴ、jazz、クラブビート、バレエ...」と、たくさんのジャンルが書かれています。

中塚 どれが本当に盛り込まれてくるのか今の段階ではまだ分からないですが(笑)、2幕はサンバカーニバルとして各々の力を存分に発揮していただけたらなと。それぞれの得意ジャンルで、色々な他ジャンル同士がぶつかる時に生まれるエネルギーを皆さまに楽しんでいただけたらと思っています。

――中塚さんご自身の一番の見せ所は。

中塚 2幕の最後の方に、D☆Dのメンバーと出番の間に合う出演者で、男性ばかりの力強い踊りを踊ってみようかなと思っています。今日、この後その場面の振付けです!

――毎公演、割とタイトなスケジュールですごい量のナンバーを作って覚えてと、皆さん本当にすごいと思います。

中塚 ある意味挑戦ですね。僕もそうですし、振付けをするメンバーや木野村温子先生もですが、今日作ったけど明日もまた作るんだという日々が続くので。それを超えたら次の公演の時にはもっともっと早くできるようになるし、もっと引き出しも増えるんじゃないかなと。僕らにはそれがチャレンジです。

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沙月愛奈、小寺利光/宇月 颯、中塚皓平

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沙月愛奈、宇月 颯、小寺利光

――最後に、公演に向けての意気込みをお願いします。

中塚 2020年にできなかった悔しさもありますが、そこから2年、僕らの勉強時間、引き出しを増やす時間をいただけて今回ができることをすごく良かったと思えています。色とりどり技も華も持っているゲストの皆さまと、まだ稽古中ですが千秋楽の夢をみたりするので、いける、大丈夫!と勝手に思っています。皆さまに観ていただいて、心の栄養剤、活力剤になればと、絶対に損はさせない舞台にしたいと思っておりますので、是非ともお楽しみにしていてください!

――本日はお忙しい中、お時間いただきありがとうございました。「SAMBA NIGHT 2022」の開幕を楽しみにしております。

「SAMBA NIGHT 2022」は2022年5月24日から29日まで、銀座・博品館劇場にて上演の予定。

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「SAMBA NIGHT 2022」舞台稽古より SHOW 2

SAMBA NIGHT 2022

●2022年5月24日(火)〜29日(日)
●博品館劇場
https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/samba-night-2022

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