White Valentine Show開幕直前! DIAMOND☆DOGS 東山義久インタビュー

インタビュー&コラム/インタビュー

坂口 香野 Text by Kaya Sakaguchi

ダンサーでミュージカル俳優の東山義久をリーダーとする男性7人のユニット、DIAMOND☆DOGS。メンバーはいずれも第一線の舞台でダンサーやヴォーカリストとして活躍、ジャズ、コンテンポラリー、タップ、ストリート...と、様々なジャンルを踊りこなす。2003年の結成時メンバーには、島地保武や辻本知彦らも名を連ねている。以後もメンバーが入れ替わりながら歌とダンスが中心のショースタイルで、多彩な舞台をつくりあげてきた。

そんなDIAMOND☆DOGS(以下D☆D)によるWhite Valentine Showが、3月12日に東京・博品館劇場で開幕する。リーダーの東山義久に、ショーの見所とD☆Dのクリエーションの様子や今後について聞いた。

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――はじめまして。実はD☆Dの舞台を拝見したのは、昨年12月の『夜想曲〜ノクターン』が初めてだったのですが、スリリングな物語に歌と鮮やかなダンスシーンがたっぷり盛り込まれた舞台、ものすごく引き込まれました。

東山 ありがとうございます。ストレートプレイの中にショーナンバーを組み込む、ショーアクトというスタイルは初めての試みでした。脚本・演出の宇治川まさなりさんやメンバーとアイデアを出し合って、のたうち回りながら作ったんですよ(笑)。

――メンバーの方々のエネルギーが、客席に向かってストレートに飛んでくる。まるで様々なカッコ良さをシャワーのように浴びている気がして、本当に贅沢な時間でした。さて、今回のWhite Valentine Show の見どころについて教えてください。

東山 第一部は、とある男性が一人の女性と出会い、恋に落ちて告白するまでを歌とダンスでつづる、オムニバス形式のショーになっています。"ひとめぼれ"のシーンをストリート系のダンスで見せたり、相手に気持ちをうまく伝えられないもどかしさを歌うナンバーがあったり。遠距離になってしまった彼女への思いを描いたダンスシーンは、音楽監督の楠瀬拓哉さんにベートーヴェンの「月光」の編曲をお願いしていて、コンテっぽい振付になる予定です。「彼女も同じ月を見ているだろうか」というイメージですね。

――女性役は登場しないんですね。

東山 お客様自身、あるいはお客様のパートナーや恋人を想定してもらえれば。気持ちを伝えるまでの様々な状況を描いていくので、どこか共感していただけるシーンがあるといいなと思っています。
後半は打ってかわって「ライブ」。4人のバンドメンバーを加えて全編生演奏、歌あり踊りありの"宴"ですね。ヴァレンタイン・ショーは毎年恒例で、今回が10回目になりますが、以前はドラムやピアノとダンスの対決みたいなダンスバトルをやっていたんです。それが、最近はちょっとしたストーリーがあるほうが面白いということで、「ダンスコント」みたいになって、今回もタライが落ちてきたり(笑)。「前半であれだけカッコつけてた人たちが、こんなにバカなこともするんだ」っていうくらいの落差が見どころかと。

――展開はメンバーの皆さんで考えるのですか?

東山 「ノクターン」のように外部から構成・演出家やゲストを招くこともありますが、基本的には演出も構成も振付も、ほぼメンバー全員でやっています。たとえばHomerはHIP HOPやブレイクを踊れるだけでなく振付も指導もできるので、ストリート系ダンスシーンの振付全般を担当。ヴォーカルの(新開)理雄は、自分の歌はもちろん、ほかのメンバーの歌詞も全部書けるし、TシャツやCDジャケットのデザインもやってます。(廣瀬)真平はタップが得意なダンサーですが、音楽や動画の編集もその場でできる。この3人は2019年に入った新しいメンバーなんですけど、適材適所で演出担当、衣裳担当など、自然に担当が決まって。第二部については、2月21日にアイデアを持ち寄ってガチャッと合わせるので、今それぞれの頭の中にいろんな構想が膨らんでいると思いますよ。

――「メンバー全員でつくりあげる」というスタイルはD☆D結成当初から?

東山 そこは当初から変わらず。ゼロからメンバーでつくりあげるのは今も大変ですけど、そのこと自体が僕ら自身の力になっている。D☆Dの原動力といってもいいかもしれません。

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――東山さんは1998年、大学卒業と同時に舞台デビューされ、ミュージカルを中心に様々な舞台で活躍されていますけれど、もともと俳優やダンサーを目指されていたのですか?

東山 いえ、全然。大学は経済学部でしたし、ダンスを小さい頃からやっていたわけでもないんです。

――でも、スポーツがお得意だったとか?

東山 いや、中高時代の部活は囲碁将棋部とか馬術部とかで、体育も得意じゃなかったです(笑)。ダンスと出会ったのは大学のダンスサークルでした。サークルの先輩が『レ・ミゼラブル』のチケットがあるからと誘ってくれて、一緒に帝国劇場に観に行ったんですけれど、これはすごいなと。舞台に興味をもったのはそれが最初で、本格的にダンスを始めたのは22歳とかなり遅いんです。卒業が近づいても就職したくなくて、3年間だけ思い切り好きなことをやろうと決めた。その頃はチャコットさんの後藤早知子先生のバレエクラスや、まだ改装前の「新宿村」のダンスクラスに通ったりして、とにかく毎日踊っていました。振付家の香瑠鼓(かおるこ)さんのカンパニーで森山開次さんと知り合い、一緒にニジンスキーをテーマにした作品をつくったこともあります。

――2003年にD☆Dを旗揚げされたのは、どのようなきっかけで?

東山 今もお世話になっているプロデューサーさんと出会ったのも大きかったですね。初めて博品館劇場に出演させていただいたのが、その方が企画したジャズのスタンダードナンバーを聴かせるショーで、僕はバックダンサーとして出ていたんです。その時に「君と何か舞台をつくりたいな」と声をかけてくださったんですが、僕はその頃、舞台をやめて地元の大阪に帰るつもりでした。

――2000年、『エリザベート』のトートダンサー役ですでに大きな注目を集めていらっしゃいますが、それでも?

東山 舞台は「3年間限定」と決めていましたからね。でも、まだ何も成し遂げていない。機会をいただけるなら、何かもう一発面白いことをやりたいと思いました。バレエダンサーやロックダンサー、ジャズやR&B、全員ジャンルが違うメンバーでショーをやってみようと。

――当初から「ソング&ダンス」というスタイルを貫いていらっしゃったのですね。

東山 ショーって無条件に楽しい。舞台も客席も一緒に高揚していく感じが素敵だなと思う。その一方で、当時は僕もとんがっていたので、先輩のお姉様の後ろで踊るバックダンサーでいることにフラストレーションも溜まってて、「カッコいい男たちだけでやったほうが絶対に面白い!」と考えてたんですね(笑)。メンバーで演出も振付も全部考えて、女性はゲストとしてお呼びするスタイルもその時からです。

――これまでに、安寿ミラさん、大浦みずきさんなど宝塚出身のスターや、バレリーナの若生加世子さんなど、錚々たる方々がゲスト出演されていますよね。
そもそも「DIAMOND☆DOGS」の名前の由来は?

東山 「Backstreet Boys」ってバンドがありますけど、それに近い、ちょっと泥臭いイメージですね。七人のメンバー一人ひとりが「ダイヤモンド」だけど「野良犬」みたいな。旗揚げ公演のタイトルは『未完成』でしたけど、「ダイヤモンドはダイヤモンドでしか磨けない」というニュアンスも込めています。僕は26歳で最年長だったけど、歌も歌ったことがなかったし、振付も構成のしかたもわかっていなかった。無我夢中で勉強させていただいて今があると思います。

――一般人の年齢感覚からすると、大学卒業と同時にダンサー・俳優として「就職」され、社会人4年目くらいに自分の会社を立ち上げた、みたいな感じですね......。

東山 今考えるとアホちゃうかと思うんですけど、怖いもの知らずだからできた面もあった。そして「人」に恵まれていましたね。メンバーにも外部の演出家や脚本家の方々にも。
僕自身はダンス一本でやってきたダンサーほどには踊れないし、最初の頃は歌もまったく歌っていなかった。でも、D☆Dや様々な舞台で経験を積んできたおかげで、やりたいことを表現するための選択肢はたくさんもっていると思います。今回のような舞台を構成するときも、ここはダンスナンバーの予定だったけど、流れから考えてここは歌でたっぷり聴かせるほうがいいとか、しっかり台詞で伝えたほうがわかりやすいとか、臨機応変に対応できる。歌でいくとなったら、メンバーの誰かが歌詞を書いてくれる。

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――メンバー全員が、歌も歌うし様々なスタイルのダンスを踊りこなしていらっしゃいますが、日ごろのトレーニングはどのように?

東山 D☆Dが始まってからは、メンバー全員が先生でしたね。日々のリハーサルがそのままレッスンになっています。歌は(咲山)類や(新開)理雄に教わるし、ストリート系のダンスはHomerが、バレエはD☆Dの公演によくゲスト出演してくれている準メンバーの様な存在の長澤風海が教えてくれる。コンテやモダンなら僕や(中塚)皓平が振り付けて教えるし。みんながみんなの先生なんです。お互いまったく遠慮がない関係なので、「リーダーなんもできてないよ」ってすぐ言われてしまうから、プレッシャーはありますよ。でもそこがD☆Dらしさかな。メンバーだけでやっていると、表現が自分たちのできるだけにおさまってしまうから、年に一度は外部の演出家や脚本家の方を招いて、新しいことに挑戦しています。そんな時、僕がメンバー一人ひとりの"トリセツ"をいちばん把握しているので、「ここが彼の突出した部分だから、是非彼に任せてください」というふうに提案するのが僕の役目だと思っています。

――そんなふうに進化し続けてきたD☆Dも、今年で20年目になるんですね。ずっと突っ走ってこられた印象ですが、オフの日はどう過ごされているのでしょうか。

東山 これまでオフってほぼなかったんです。2020年4月に、緊急事態宣言で出演予定だった『ミス・サイゴン』が公演中止に決まったときはやむをえずオフになりましたけど。

――『ミス・サイゴン』は、2年越しで今年7月からの上演が決定しましたね。緊急事態宣言中はどうされていたのでしょうか。

東山 あのときは3月に稽古が始まっていて、5月に初日の予定、その後半年間続くはずだった公演がまるまる中止になったので。オフの使い方がわからなくて何もしませんでした。20代のころから舞台が止まったことはなかったので、ショックでしたね。自分に仕事があるのは当たり前だと錯覚していた部分もあったけれど、全然当たり前じゃなかった。舞台がなければ自分には何もできないんだと痛感しました。劇場があって、そこに足を運んでくださるお客様がいることがどれだけありがたいことなのか、めちゃくちゃ考えさせられました。

――舞台を観られる幸せが「当たり前じゃなかった」ことは、私たち観客も痛いほど感じています。今回のWhite Valentine Showも、とても楽しみです。

東山 こんな時だからこそ、心から楽しんでほしい。明日への糧になるような何かを、ひとつでもふたつでも持ち帰っていただければと思っています。絶対楽しいショーにしますので、劇場でお待ちしています!

White Valentine Show

●2022年3月12日(土)〜16日(水)
●博品館劇場
https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/white-valentine-show

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