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[2008.11. 8]

白井剛インタビュー

淡い緊張感がツアーを回っていくうちになじんできました。

2006年初演のアルディッティ弦楽四重奏団と白井剛さん共演の公演『アパートメントハウス1776』が3度目のツアーを行うことになりました。 他の公演では観ることのできない、コンテンポラリーダンサー白井剛さんと「世界最高の現代音楽カルテット」と評されるアルディッティ四重奏団とのコラボレーションをまた目にすることができます。 この公演に先がけて、ダンスキューブでも2年ぶりに前回と同じ東京・森下スタジオにて白井剛さんにお話を伺うことができました。

---今回『アパートメントハウス1776』は再演になると思うのですが、前回と何か変わるところがありますか?

白井 まだ練習を始めてはいないのですが、今のところ変えたくないなと思っています。踊り始めたら微妙に変わるとは思っていて・・・お客さんが観てわかる程度の変化かどうかはまだ不確かですが。 踊り的にはちょっとシンプルにしてもいいかと思います。基本的な設定は変わりません。

------録音された音楽で踊るのと違い、生の音楽とそれを演奏する人のいる舞台を作られた訳ですがいかがでしたか?

白井 一人で全部やろうとしなくでもいいんです。 彼らの生演奏を聴いて観ているだけでも充分満足できる舞台である中で、ジョン・ケージの音楽ですし。 尊敬できるふたつの固まりが舞台上にすでにあるので、僕がソロのダンスでやろうというよりは、ジョン・ケージの音楽とアルディッティ四重奏団の演奏があっ て、その隙間に僕の身体があって揺れている感じでした。やっている方としては短く感じましたし、楽だなあと思いました(笑)。

---大変だったことはありましたか?

白井 大変だったことは・・・リハーサルを彼らとずっとやってきたわけではなく、初演の2日前くらいに初めてそれまでは頭の中で考えたり、連絡しあったりしていたものを一緒にあわせました。 ツアーを周りながらどんどん向こうも僕らの感覚がわかってきた感じです。 距離感が作品に出ていたこともあって、仲間同志が舞台にいるのではなくて 異国からやってきたアルディッティ四重奏団と日本の白井剛という人が舞台上で出会って何が起こるのか、 淡い緊張感がツアーを回っていくうちになじんできました。 たぶん観ていてわかる緊張感もあったのではないかなと思います。

---私は前回の公演で初めてジョン・ケージの曲を聴きました。音楽に明るくない者としては思い描いていたクラシックとだいぶ違うように感じました。『アパートメントハウス1776』という曲と共演していかがでしたか?

白井 隙間がある曲です。 元々アメリカ建国200周年みたいなことで依頼されて作られた曲らしいのですが当時のアメリカのクラシック的な音楽の展開を採集してきて音符を消していくような感じで作られているようです。 原曲の雰囲気が残りつつ、でも染まらないような、うまく消えていくようなイメージ。 「白鳥の湖」とかイメージが曲にこめられていてそれを全て受け止めなくてはいけない、という曲ではなくて どうにでもしてよっていう音楽のなかに空間が広がる曲で、それがやりやすいところでもあるし、逆に難しいところでもあります。

---今回もつくば、東京、福岡、愛知のツアーとお聞きしています。舞台が変わると公演そのものに変化がありますか?

白井 音って劇場によって違うものだなと感じました。どこもコンサートホールなんですけど、それぞれに特徴があって大きさ、広さも違います。 同じ演奏を同じミュージシャンで聴く機会もそんなにないと思うんですけど、僕はミュージシャンが移動していくホールについて行き、ホールでの音の違いを聞く体験ができました。 ホールによって音の響きが違って、やはりミュージシャン達のノリも少し違うなと感じました。 (客席との)距離感は離れすぎず近づきすぎずでいられると一番作りやすい。でもお客さんからそういう風に見えればいいので、空間の使い方を微調整してました。 体感としてはやはり津田ホールの空間が基準です。

---音楽のファンであるお客さま、ダンスのファンであるお客さまの両方が存在する公演になると思いますが、何か感じるものがありましたか?

白井 少しだけ意識はして作っていまして、ダンスを観たことない人にとってもよくわからないコンテンポラリー・ダンス というものを観たという体験だけではなくて、何かしら自然に音楽と一緒に観られたというものであってほしいと。今までもダンスのお客さんに対しても平等に 考えているつもりではあったのですが(笑)。 すんなり届くように考えて作っていったら、ごちゃごちゃアイディアを盛り込まずに本当にシンプルになって行きました。 観たことのない人には難解だと言われるコンテンポラリー・ダンスと、聴いたことのない人には難解だと言われる現代音楽が混ざって、なぜかとっつきやすいや わらかいものができたのではないかと思います。 外国人と話すときはシンプルな言葉で話し合うと逆にデリケートは深いところまでよくわかったりするような・・・結局異文化コミュニケーションでしたね。

---コンテンポラリー・ダンスもいろいろな見方があるようですが、音楽もそうなんですね。

白井 音楽こそそうですね。

『アパートメントハウス1776』は楽譜がすかすかであんなに音符が少ない楽譜は珍しいそうです。 その音楽を普段は超絶技巧、たくさんの音を奏でる技術のある彼らが、この曲では一音に技術を込めて、隙間も音楽にする。それが素晴らしいとのこと。

---これから振付家、ダンサーとしての白井さんが目指していらっしゃるところをよかったら教えて下さい。

白井 年齢を重ねて、踊っている人たちはかっこいいと思うのでそういうふうになれたらいいなと思います。何かしら自分 の中でやっぱりこれかな?とか、なんでダンスやっているんだろ?といろいろ考えながら考えながら来ているんですけど、一番はじめに考えていた所から、自分 がだんだん離れていっている気はしていて。 遠くから眺められるようになるのではないかな、これから。そういうふうにしないといけないなと思っているところです。

---これから公演を観るのを楽しみにしている方におっしゃりたいことはありますか?

白井 音楽が好きな人、ダンスが好きな人も劇場やホールにあまり来られない人も、気楽に観られる演目でもあると思います。音楽を聴きにきたと思ったら踊りが付いてたとか、ダンスを見に来たらすごい演奏が付いてたとかそういう風に、観ていただくのもいいかと思います。
 又、今回は各地で音楽とダンスのコラボレーションワークショップが行われました。 インタビューは前日に津田ホールでのワークショップが終わったばかりの日。 津田ホールの舞台上で行われたこのワークショップは音楽家中川賢一さんのピアノと白井剛さんと参加者のダンスのコラボレーション。生ピアノの響きを感じながら踊る、贅沢なワークショップだったそうです。 音楽家とのコラボレーションは言葉でイメージを伝えなくても、音が聞こえてくると動けで説明が少なくてすみ、ティッシュを落とさないように歩いたり、相手に渡したりすることで身体が動き出したり・・・。2時間はあっという間に過ぎていったとのこと。

・津田ホールでのワークショップの模様はこちらから
http://tsudahall-backstage.blog.so-net.ne.jp/

 愛知芸術文化センターでのワークショップでは、中川賢一さんはもちろんのこと、さらに多数の音楽家達が参加しそれぞれの楽器を持ち寄って、大人のダンスと共演した日、小学生を対象にした日と、特色のあるワークショップが連日行われたそうです。

・愛知芸術文化センターでのワークショップの模様はこちらから
http://blog.aac.pref.aichi.jp/aac/

 11月からスタートするこの公演。それぞれのホールで、すこしずつ違う舞台。4ヶ所のホールでどのような変化を見せてくれるのでしょうか?楽しみです。
アルディッティ弦楽四重奏団(音楽)×白井 剛(ダンス)
アパートメントハウス1776/ジョン・ケージ >>> 発売中

●演目=J.ケージ/I.アルディッティ編曲「44のハーモニー(ダンスヴァージョン)~アパートメントハウス1776より」
●演出・振付・映像=白井剛
●出演=アルディッティ弦楽四重奏団/白井剛
●お問い合せ=テレビマンユニオン 03-6418-8617

<茨城>
●11/26(水)19:00開演
●つくばノバホール
●4,000円、学生3,000円
●お問い合せ=つくば都市振興財団 029-856-7007

<東京>
●11/28(金)19:00開演
●津田ホール
●5,500円/ペア10,000円/学生2,500円
●お問い合せ=津田ホール 03-3402-1851

<福岡>
●11/30(日)15:00開演
●北九州市立 響ホール
●全席自由3,000円、学生1,500円
●お問い合せ=北九州市芸術文化振興財団 音楽事業課 093-663-6661

<愛知>
●12/3(水)8:45開演
●愛知県芸術劇場コンサートホール
●S席3,000円/A席2,000円、学生席(A席相当)1,500円
●お問い合せ=愛知芸術文化センター 052-971-5511
http://www.aac.pref.aichi.jp/