インタビュー&レポート

インタビュー: 最新の記事

インタビュー: 月別アーカイブ

インタビュアー/関口紘一
[2010.10. 1]

来日直前!オーストラリア・バレエ団プリンシパル インタビュー

鮮烈なイメージのマーフィー版『白鳥の湖』と『くるみ割り人形』を上演するオーストラリア・バレエ団、プリンシパル・ダンサーマドレーヌ・イーストーとアダム・ブルに話を聞いた。

1009ab01.jpg

----マドレーヌ・イーストーさん、グレアム・マーフィー版『白鳥の湖』のオデット デビューがロンドン公演だったそうですが、緊張されませんでしたか。

イーストー 役としては前にも踊ったことはあったのですが、ロンドン公演の初日にオデットを踊りました。ロンドン公演の時には、「ダイアナ妃に関連づけて見られることがあるかもしれないよ」と言われていました。私には私の解釈がありますし、そこを大切にしていけばいいなと思いましたが、ロンドンの観客の目はそういう風に向くのだろうなとも思って、緊張感はありました。でも当日は、素晴らしいアイディアに恵まれた作品を非常に良いステージにすることができましたので、とてもいい初日でした。

----英国ならではの反響というものはありましたか。

イーストー ロンドンの反響は大きくて、まずこの有名な作品をこういう風に解釈して上演するのはリスキーなのではないか、と言われていましたけれど、このシーズンが終わった時、成功を確信しました。批評家の方々からもこのようなリスクをとりながら、非常に良い公演だった言われました。

1009ab02.jpg

----アダム・ブルさん、2008年にマーフィー版のジークフリートを踊られてプリンシパルに昇格されたそうですね。

ブル そうです。この作品はまさに自分がバレエ団の中で進んできた道を示すような作品です。初演された02年は私の入団した年ですし、その時、最初にもららった役がウエイターで、第2幕の間中ずっと飲み物を持って立っていて、周りの踊っている人たちを眺めているという役でした。それから昇格するにしたがって見合った役がつき、最終的にジークフリートを踊らせていただきました。その時は自分もダンサーとして成熟してきていましたので、その公演の3ヶ月後にプリンシパルに昇格することができました。

----スピード昇格だったのでプティパ版のジークフリートを、カンパニーに入ってからは踊られていんじゃないかと思いますが・・・。

ブル ええ、まだないです。入団した年からマーフィー版の『白鳥の湖』がたいへん好評だったので、毎年公演予定にあがってきていますから。ただカンパニーとしては、2012年の創立50周年記念公演にトラディショナルな『白鳥の湖』を上演しようとしています。恐らくその時には踊ることになると思います。全幕を踊った経験はありませんが、1幕とか2幕だけを踊ったことはあります。

1009ab05.jpg

----イーストーさんはトラディショナルなヴァージョンも踊られたことはあると思います。

イーストー オデットとしては踊っていませんが、他の役は踊りました。

----『白鳥の湖』に限らずトラディショナルなヴァージョンを踊る場合と、マーフィー版のようなスピーディな展開のあるヴァージョンを踊る場合とでは心構えはどのように違いますか。

イーストー もちろん違いはあります。違いがあることが重要だと思います。ただ両方とも力強さを求めていますので、テクニック的には強いものを必要とされます。マーフィー版を踊る時、私が楽しんでいるのは、ドラマティックなところで自分の解釈を入れて踊れるところです。オデットを演じる時、いつもいつも自分がどういう役作りをしていくか、それが終わることなく続いていくところに、この役のやりがいがあります。そして私は、今、このタイミングでメルボルンで古典の『くるみ割り人形』の公演をしています。そのように両方のレパートリーがあるということは、ダンサーとしても魅力的なことです。

----マーフィー版のオデットはサナトリウムに入ったりまた戻ったり、心理的にも変化が激しいですが、どこが一番難しいですか。

1009ab08.jpg

イーストー 第1幕でいうと、オデットはジークフリードと対等の愛で結婚すると信じている女性から、他の人の存在があるかもしれない、という不安が嵩じ、第2幕で気がおかしくなってしまいます。そこからまたガラッと変わって、幻想の中でジークフリートが自分だけを愛しているという理想を作って、その希望みたいなものをパ・ド・ドゥで表します。3幕では自分に自信を持って、今度は、オデットに対する愛がほんとうに醒めてしまったのかどうか確かめに行こうとして出ていき、その過程の中で本当の愛を見つけていきます。そのように幕ごとにガラッと大きく変化する心理を表現しなければならないことから、非常に気持ちが疲れていくのだと思います。加えて振付が感情を物語るツールになっていますので、観客にストーリーラインを理解してもらう表現を作らなければなりませんから、幕が終わる頃には疲れ切ってしまいます。

----身体的にも精神的にもエネルギーを使い果たして疲れてしまうということですね。

イーストー そうです。ほんとうに力が抜けてしまいます。

----ブルさんは物語がスピーディな展開するマーフィー版を踊られていかがですか。

1009ab09.jpg

ブル マーフィー版『白鳥の湖』はずっと見続けてきたので、他の作品に比べてテクニック的にも芸術的にも体力的にも非常に要求が高い作品だ、ということは身に沁みて分かっていました。この作品の主役を与えられた時にはどうして踊ったらいいんだろかと途方にくれたくらいでした。でもジークフリートのオリジナルキャストだったスティーヴン・ヒースコートが自分と一緒にスタジオで時間を過ごしてくれ、テクニック的にもいろいろなことやアイディアも助けてくれました。オーストラリアのアイコン的ダンサーに直接手ほどきしてもらったので、とても自信になりました。これで十分準備を整えることができたと思っていますし、たいへん感謝しています。この作品はオーストラリア・バレエ団を通じて残していかなければならないものですから、私も次の世代のダンサーに同じように伝えていきたいと思います。

----マーフィーの作品はユニークでアメージングなアイディアに溢れるものですが、振付けを始める時には、まず作品のアウトラインの説明があるのですか。


イーストー マーフィーはまず、メインを踊るダンサーを集めて、主要な場面を話し合います。その時点である程度のストーリーラインは固められていると思います。そして重要なストーリーラインを固めたところから全員のリハーサルになります。リハーサル中はストーリーラインを説明しながら、振りを付け、振りがシーンに合わなかったりすると、ああしようこうしようとチームで共同作業を行いながら創っていきます。マーフィーがダンサーを信頼しているからそういう創り方をししているのだと思います。

----ダンサーはストーリーラインを充分に理解して進行していくわけですね。

1009ab10.jpg ブル 最初にマーフィーからストーリーラインの説明はあります。マーフィーの頭の中にあるアウトラインが伝えられて、そこからアイディアと楽譜を照らしあわせて、先に創ってあるメインの動きを構成していきます。そして抜けている部分をダンサーとの共同作業で少しずつ埋めていく。楽譜に関しても彼がアレンジして持ってきたりする作業もあります。トラディショナルな楽譜の流れで慣れていると、アレンジがされていたりするので、まったく別の作品みたい、と感じることもあります。

----メインの動きはマーフィーが決めているのですか。

ブル だいたいのところは彼が創って振り写します。
イーストー  彼の頭の中では非常にクリアになっています。ダンサーはクリアな動きがもらえて、その中で解釈の違いや実際に動いた時のディテールなど少しずつ変えていくことがあるにせよ、しっかりと自分のやりたいことは決まっていますからクリアです。ですから舞台の流れが一貫しているのです。

----映画『小さな村の小さなダンサー』の中で『春の祭典』のシーンがありましたが、火が走る凄い迫力でしたがあれは・・・

イーストー 私はあのシーンには出演していませんが、撮影の現場は見ていました。ライヴで舞台に凄い火が走ってくるので、出演している人たちは、その時、自分がどこにいなければならないか正確に知らないと、非常に危険です。危険がいっぱいの撮影でした。

----とても日本では上演できなませんね。あの映画のモデルになったリー・ツンシンさんはご存じですか。

イーストー ええ、私が入団した時には、彼はオーストラリア・バレエ団のプリンシパル・ダンサーとして在籍していましたから、彼の舞台も見ましたし、そのバックグラウンドも知っていました。ですからあの映画に、私が出演することが決まったのもある意味運命的といいますか、とても感謝しています。

----実際の舞台で踊る場合と映画の1シーンのためだけに踊るのでは、ずいぶんと違いますか。

イーストー 踊るということがまるで違います。上映時間の関係がありますからオリジナルの振りでは尺に合いません。マーフィーが振りを調整して長さをを変更したヴァージョンで、同じシーンをいろいろなアングルから撮るのです。何度も何度も踊らされてたいへんに疲れました。踊るステージも慣れない硬めのフロアでしたから余計に疲れました。しかしできあがった作品をみたら、あれだけの努力をするのに十分に値する作品だと思い満足することができました。

1009ab04.jpg

----イーストーさんの娘さんはおいくつですか。

イーストー 一歳半です。また日本に連れてきます。

----将来はプリンシパル・ダンサーですか。

イーストー 彼女に決めてもらいます。

----子育てをしながら、プリンシパル・ダンサーを勤めるのはたいへんではないですか。

イーストー ええ、ただ子供を育てているダンサーは私だけではありません。他にも何人かいますから、彼らと経験を共有できるということは恵まれていると思います。仕事を持っている母親が、育児と仕事を両立させることはどんな職業でもたいへんだと思っています。カンパニーのダンサーたちが大きなファミリーみたいに一緒になって育てている感じです。

----素晴らしいことですね。ブルさんは東京のツアーを楽しめそうですか。

ブル 前回、日本に来てから東京に恋してしまいました。カンパニーのみんなも本当に楽しみにしていて、二人が先に東京に行くことがうらやましくて、ジェラシーを感じていると思いますよ。

----本日はお忙しところありがとうございました、私も日本公演をとても楽しみにしています。

Stage Photos Jeff Busby / Jim MacFarlane
※舞台写真は画像をクリックすると、大きな写真をご覧いただけます。

オーストラリア・バレエ団2010年来日公演

●10/9(土)〜17(日)
●東京文化会館
●お問い合せ=NBS http://www.nbs.or.jp/ 

◇マーフィー版「白鳥の湖」

●10/9(土)〜11(月祝)
●開演時間=全日15:00
●出演=[オデット/ジークフリート王子/ロットバルト男爵夫人]
(9・11日)マドレーヌ・イースト―/ロバート・カラン/ルシンダ・ダン
(10日) アンバー・スコット/アダム・ブル/ダニエル・ロウ

◇マーフィー版「くるみ割り人形」

●10/15(金)〜17(日)
●開演時間=15日18:30、16・17日15:00
●出演=[クララ/医師・将校・恋人]
(15・17日) ルシンダ・ダン/ロバート・カラン
(16日) レイチェル・ローリンズ/ケヴィン・ジャクソン

1009ab07.jpg 1009ab06.jpg

The Australian Ballet in Nutcracker The Story of Clara photo by Branco Gaica