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インタビュー/浦野芳子
[2010.03. 4]

英国ロイヤルバレエ団サラ・ラム&エドワード・ワトソン インタビュー

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英国が誇るふたりの巨匠の作品を携えた
来日公演を前に、
ふたりのプリンシパルがその熱い胸の内を
日本のファンに語りました。

今回の来日では英国ロイヤル・バレエ団を代表する二大巨匠の作品を上演!
中でも「うたかたの恋」の他にはない個性に注目。

----今回は、英国ロイヤル・バレエ団が誇る巨匠ふたりの傑作を携えての来日公演ですね。とくに「リーズの結婚」は、サラ・ラムさんにぴったり、との評価も高い作品です。
 

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サラ・ラム(以下S) そうですね。「リーズの結婚」は(フレデリック・)アシュトンの最高傑作と言われる偉大なバレエです。お金持ちとの結婚を進められているリーズが、母をいかにして出し抜いて、恋人・コーラスと結婚するか策略を練る、ラブ・コメディーです。にぎやかで、ユーモアに満ちて、おまけに動物まで登場しますから、大人から子供まで、幅広い方に楽しんでいただけると思います。

----ー方で「うたかたの恋」は日本ではまだあまり知られていない作品です。振り付けは「ロミオとジュリエット」のケネス・マクミランですが、この作品同様、ドラマチックな内容なのでしょうか。

エドワード・ワトソン(以下E) 歴史に裏付けられた、重厚で知的な作品です。物語は、ハプスブルグ家最後の皇帝の跡取り、ルドルフ皇太子の波乱に満ちたエモーショナルな人生を題材にしています。政治的なドロドロとしたドラマと狂気に彩られ、決してハッピーエンドでもロマンティックでもないので、覚悟して観てくださいね(笑)。ただ、ロイヤル・バレエのプリンシパルがたくさん登場して、見どころも満載です。

S 歴史とバレエが合体した、マクミランの作品の中でも特別なものだと思います。日本のお客様は知的好奇心も高いので、こうした作品もうんと楽しんでいただけるのではないでしょうか。

----他のマクミラン作品とは、どんなところが違いますか?

E おもなバレエ作品では女性が主役に描かれますが、この作品ではルドルフ皇太子という男性の人生を中心に物語が進行する点です。しかも常にアンビリバブル!

S かつてバランシンが“バレエは女性のものである”と言ったように、確かに「眠れる森の美女」や「白鳥の湖」など古典作品では女性がシンボルです。また同じマクミランの作品でも「マノン」や「ロミオとジュリエット」では女性が中心に描かれています。しかし「うたかたの恋」ではパ・ド・ドゥにおいても男性にキャラクターが与えられているんです。つまり、この作品は男性を主役にした、はじめての作品だと言えるのかも知れません。

古典作品に求められる“客観性”
ドラマティック作品に求められる“エモーション”

----古典作品と、ドラマティックな作品を踊るのにはどのような違いを感じていますか。

S 古典作品ではテクニカルパートを強く意識します。例えば「眠れる森の美女」にはローズアダージォ、「白鳥の湖」なら湖畔のアダージォなど、それぞれ見せ場があり、完璧にこなさなければなりません。正確なポジションとテクニックを流れるようなステップでつなぐ、そこに培われてきた美の世界があるからです。一方でドラマティック作品は、その役に入り込みキャラクターの性格や心情を表現することが求められます。同じバレエでもアプローチはまったく違うんです。古典作品では役柄に入り込むなんてもってのほかで、自分が今どう見えているか客観性が必要ですが、ドラマティック作品ではとにかく役にのめりこむんです。…ですから、時折ドラマティック作品を踊ることで、アーティストとして表現が膨らみ、充実感を味わうことができますね。

E 私はサラとは違い、普段からドラマティックな作品を踊ることが多いのですが、こういう作品を踊るときは物語の背景や役柄に関してより深い理解が必要だと思っています。たくさんの本を読むことも必要ですし、また、振付を忠実に身体に叩き込むことで、そこから役柄についてさらに深い理解に至ることもあります。すべては、自分で見つけ出さねばなりません。

----ダンサーは、身体性だけでなく、精神性や知性も求められる職業ですね。
 

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E その通り!ダンサーはテクニックだけでなく、知性、感性をフル活動させなければいけない。観客も、テクニックだけを観にくるのでなく、感情的に共感・共鳴することを期待していると思うから。

もちろん才能は大事。
でもどれだけ成長できるか
それがダンサーの人生を左右する。

----ところで、おふたりともプロのバレエダンサーになろうと思ったのはいつ頃でしたか。

S 10〜12歳の頃だったと思います。当初は、多くの女の子たちがそうであるように、私にとってもただの夢でしかありませんでした。でも、本気でプロになろうと思った時には、覚悟はできていました。プロへの道は困難に満ちたものだ、って。多くの時間と、努力が必要で、それだけつぎ込んでも、プリンシパルになれるとは限らない世界だってことも。

E 僕もまったく同じです。でも、もしもバレエダンサーを夢の世界だと思っていたら、今は無かったかも知れないね、僕も、サラも。アーティストが住むのは、それに接する人が好き嫌いという主観を持って接してくる世界です。簡単に歩むことはできない、でも希望を持って進むしかない、そういう道だと、知っていました。

S すぐには役をもらえなかったり、理解してもらえなかったり、傷つくこともたくさんあります。とくに若いころはね。そのすべてを受け入れられたわけではありませんが、大人になった今は大丈夫。15歳から20歳の間はほんとうにいろいろありました。でも、そこでいろいろなことを積み上げることができて本当によかったと思っています。若いダンサーには、才能はとても大切だけれど、どれだけ成長できるか、それがもっと大事だと伝えたいと思います。

E 大切なのは、受け入れる勇気だよ。それは自分とは違う他人の考え方を受け入れることでもあるし、同時に人とは違う自分を受け入れることも意味する。いろんなスタイル、いろんなパートナー、いろんな振付。受け入れることから、人としての自信が育っていく。

S バレリーナはひとりひとりが個性、特徴をきちんと持っていなくてはいけないと思います、それがダンサーの“シグネチャー”なのだと思います。

----シグネチャー、つまりその人らしさの証、そういうことですね。「眠れる森の美女」や「白鳥の湖」などの古典作品が100年の時を超え、さまざまなダンサーたちにより踊り継がれ、新たな感動を与えているのはその“シグネチャー”があるから、なのですね!!

S ええ。そして、その独自性を、知性を持ってアプローチできなければ人を感動させることはできないのだと思います。それにはやはり、先ほども話に出た“自分を知る客観性”を持つことが大切ですね。そして、あとは情熱だと思います。

E まったくそのとおり。とくにプリンシパル・ダンサーの仕事は、体力的にはもちろん、評価もハードだからね。心も身体も、トレーニングを続けなくては務まらないよ。

S ええ!自分の手足の角度などは、鏡がなくても、今客席からどう見えているか、身体の感覚から想像できるくらいにならなくてはいけませんから。

私たちの愛する日本。それは、
真のバレリーナ“吉田都”そして、“チャコット”!

----ところで、今回の来日公演のトピックスのひとつが、プリンシパルを長年務めてきた吉田都さんが英国ロイヤル・バレエ団で最後に踊ることですね。

E 「オンディーヌ」の公演の時、主役のひとりが怪我をして、その代役として僕に声をかけてくれたのが彼女。この作品を踊ったことで僕はプリンシパルに昇格、生涯忘れないビッグチャンスをくれたのが、都その人です。

S 真のダンサーと言うのは、ダンサーとしてだけでなくひとりの人間としても美しいものです。都は、常に高い尊敬の念を持ちバレエに接していて、それが都自身を美しくしているのだと思います。学ぶところが大きい、真のバレリーナです。

E 彼女の踊りは本当に音楽性が豊かで繊細。日本の至宝、と言われていますがそれは英国でも同じ、英国の宝物です。

S どうしていつも、あんなに落ち着いていられるのか、不思議なくらいなの。「リーズの結婚」のとき、ジャンプのバリエーションを終えた私は幕間でいつもぜいぜい、はぁはあ、しているというのに彼女はレッグウォーマーをはいた脚をきちんと揃えて落ち着いて椅子に座っているの…あれを“瞑想”っていうのかしら?

----バレエ・ダンサーってほんとに大変な仕事ですね…だからこそ、客席にいる私たちにとっては憧れの、輝いた存在なのですね。ふだんはそんな風にストイックでハードな生活をしているお二人ですが、長い休みが取れたら何をしたいですか?

S どこか、ビーチに行ってのんびりしたいかしら…実は4年前に結婚したんですけれど、何もセレモニーをしていなくて、、、

E うーん、やりたいことはいっぱいあるよ、映画、お芝居、コンサート、友人と新しいレストランで食べまくるのもいいね!

----今回(取材のために訪れた1月)の東京でのフリータイムのご予定は?

E よく聞いてくれたね、この取材が終わったらチャコットで買い物さ!!

S 私はレオタードとニット、レッグウォーマーと、松やにスプレーを絶対ゲットする予定。チャコットのウェアは大好きだし、松やにスプレーは世界中探してもここしか知らないわ!

E 僕は新しいタイツを手に入れなくちゃ。それにしても東京は、何度来てもエキサイティングな場所だね。町中が忙しいよ。でも、人々はとてもフレンドリーで、ダンスに対しても温かい反応なのが嬉しい。でもいつも、短い間の滞在なのが残念だよ!

※この取材のあと、ふたりはタクシーを飛ばして閉店間際のチャコット渋谷本店に無事駆けつけました!
 

英国ロイヤル・バレエ団 2010年日本公演

●6/19(土)〜6/29(火)
●東京文化会館
●お問い合わせ=NBS 03-3791-8888 http://www.nbs.or.jp

◇「リーズの結婚」全2幕
●振付=フレデリック・アシュトン
●出演(予定)=
[リーズ/コーラス]
6/19(土)13:00 ロベルタ・マルケス/スティーヴン・マックレー
6/19(土)18:00 マリアネラ・ヌニェス/ティアゴ・ソアレス
6/20(日)15:00 サラ・ラム/イヴァン・プトロフ

◇「うたかたの恋」全3幕
●振付=ケネス・マクミラン
●出演(予定)=
[ルドルフ皇太子/マリー・ヴェッツェラ/ラリッシュ伯爵夫人]
6/22(火)18:30 カルロス・アコスタ/タマラ・ロホ/マーラ・ガレアッツィ
6/23(水)18:30 ヨハン・コボー/リャーン・ベンジャミン/ラウラ・モレーラ
6/24(木)18:30 エドワード・ワトソン/マーラ・ガレアッツィ/サラ・ラム

◇「ロミオとジュリエット」全3幕
●振付=ケネス・マクミラン
●出演(予定)=
[ジュリエット/ロミオ]
6/26(土)18:00 アリーナ・コジョカル/ヨハン・コボー
6/27(日)13:00 マリアネラ・ヌニェス/ティアゴ・ソアレス
6/27(日)18:00 吉田都/スティーヴン・マックレー
6/28(月)18:30 リャーン・ベンジャミン/エドワード・ワトソン
6/29(火)18:30 吉田都/スティーヴン・マックレー

※出演者は2010年3月4日現在の予定です。


Livespire「WORLD CLASSICS @ CINEMA」
英国ロイヤルバレエ団の「くるみ割り人形」と吉田都、エドワード・ワトソン主演「オンディーヌ」を全国の映画館で楽しむことができます。他にもマリインスキー・バレエの「白鳥の湖」やオペラ作品をラインナップ。
ダンスキューブでもご紹介しています。
http://www.chacott-jp.com/magazine/dance-library/cinema/1002cinema.html