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インタビュー/関口紘一
[2016.04.18]

『ありか』公演直前 島地保武=インタビュー

----今回の新作『ありか』の公演に際して、ラッパーの環 ROYさんと創作することになったきっかけを聞かせてください。

島地 出会う以前から彼の音楽は聴いていました。2013年に発表した、アルトノイ(酒井はなさんとのダンス・ユニット)の新作で蓮沼執太さんという音楽家に劇伴を依頼したのですが、環 ROYさんは蓮沼さんの友人としてその公演を観に来ていたんです。そこから交流がはじまりました。彼は、多くの人が連想するようなラッパー像と少し違います。かなり繊細な印象があって・・・例えて言うなら金棒を持たないで戦う感じです。ペンを持って戦っているような知的な感じ、そこに惹かれていて普通にファンでした。

----元々ラップはお好きだったんですか。

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島地 黒人音楽は好きなものが多く、若いときからよく聴いていました。卒業論文はファンク・ミュージックについて書きました。でも、音楽は全般的に好きです。クラッシック、雅楽、ロック、電子音楽、いろいろな形式の音楽を聴いて好きなものをみつけていくような聴き方をしています。

----ダンサーとラッパーが対等な立場にたって共同制作をするとききました。

島地 そうです。「僕が踊るからそれに音楽をつけてよ」というような関係ではなく、お互いが対等に意見を交わしながら創作することを目指しています。

----環さんといろいろ練られているのですか。

島地 いま、その最中です。フランクフルトで活動していた時から、メールのやり取りをしていて、興味があることなどを送り合ったりしていました。漫才について話したりしてましたね。

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----漫才ってライブ的な意味でですか。

島地 というより、漫才のルーツについてですね。平安時代からある風習で、そもそもは歌と舞だったらしい。とか、そういうリンクが送られてきたりしていました。

----お神楽とかそういうことですか。

島地 それもありますし、ダンスや音楽の起源に興味があったんです。創作のはじめの方では、イヌイットのおじさんが嬉しそうに太鼓を叩いている映像とかを見ながら「これいいね」とか、言ったりしていました。

----それを踏まえ、二人でどういったものを作りたいと考えていますか。

島地 僕自身がまだ見たことのない、ダンスと音楽の関係性を模索したいと思っています。ダンス公演でもなく、音楽ライブでもないような。うまく言葉にできませんが・・・新しいコミュニケーションを探してます。

----それでこのようステージ(図参照)を構想したわけですね。かなり具体的になっていますよね。

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島地 そうですね。僕はどちらかというと環境から設定することが多いんです。物質に対する身体の変容に興味があります。このステージは、あっちの世界とこっちの世界だったり、橋の部分は伝達や交流の象徴だったり、他者同士が遭遇する道でもあったり・・・そんなふうに考えて構想しました。

----なるほど。島地さんもラップをし、環さんもダンスするとお聞きしましたが。


島地 ラップはやってみたいです。でもそれやっちゃっていいのかなっていう気持ちはあります。でもラップしますし、環くんも踊ります。二人でラップをする、一緒に踊る、そういうシークエンスは作っています。

----ラップは難しいですか。

島地 難しいですね。

----踊りながら喋るって難しいですか。

島地 台詞だったりすると難しかったりするかもしれません。僕は喋りながら踊ったり、声を出して踊るっていうのは結構やっていて、身体が「うっ」ってなったら「うっ」って感じの声になっちゃうし、「ふぉわ」って動いたら「ふぉわ」って声しか出せないですし。そういう身体と声の関係に興味があります。あえてずらしてみようとしたりするのも面白かったりします。こういうことを喋ろうみたいなことはザックリ決めつつ、でも踊りはじめると全然違う方向にいってしまったり、抽象度の高いところで身体と言葉や声の関係性を探りながら遊ぶということもします。たとえば、金柑の話をしようって決めて、奥さんに金柑を買ってきてって頼まれて、それで自転車で隣町にいって、そしたら転んじゃってそのままそこに5年居て、みたいな、こうやって話すとまったく訳がわからないんですけど・・・そういった言葉の飛躍と動きの関係を楽しんでいます。

----ただ、言葉をしゃべり出した途端、観客には意味を考えようとスイッチが入ってしまうのではないですか。

島地 そうですね。僕自身も鑑賞する立場ではそうなってしまいがちです。だからこそ、言葉を意味へ繋げようとする反射を裏切ることにおもしろみを感じているんです。

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----ラップのフリースタイル(即興)とダンスのインプロビゼーションには共通するものがあると思いますか。

島地 僕は似ていると思います。

----島地さんのインプロビゼーションって、フォーサイスがやっていたものの延長線上にあるんですか。


島地 もちろん、彼からの影響は大きいです。彼のもとで、言語ではない音声と身体を使った創作をしました。そのときの経験が強く残っていて、言語ではない音声をあえて言葉、それも日本語にしたらどうなるのだろうと思っていました。

----なるほど、それがラップに。

島地 そうですね。

----フォーサイスとはいつ出会われたのですか。

島地 2006年です。

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----フォーサイスのどういう作品をご覧になって魅了されたのですか。

島地 『ジャスト・ダンシング・アラウンド』ってドキュメンタリーですね。フォーサイスが急にヒップホップのような音楽で踊りだす、その動きを見て魅了されました。もちろんほかのダンサーも「すげー!」って思ったんですが、フォーサイスのその動きは何かノリがヒップホップというか、そう感じました。

----フォーサイス・カンパニーへの入団のきっかけを教えてください。


島地 20代の中盤頃からヨーロッパでダンスをしたいと考えていました。Noismでの経験を経て、年齢的にも今だなと思い、思い切ってフォーサイスに会いにいき、プライベートオーディションを受けさせて貰いました。受かるはずもないと思っていたんですけどね・・・自分の心臓がバクバクしている音を聞きながら踊ったことを憶えています。その日は、踊りを見てもらえただけで満足して帰ったんです。その後、フォーサイスカンパニーに所属していた安藤洋子さんから電話かかってきて、フォーサイスがすごく気にしてるよ、もう一回来てみたら、と言われて「はい、行きます」って感じで行って、カンパニーメンバーみんなの前で踊りました。その後、紆余曲折を経て、正式に入団することになりました。入団してからはとても大変でしたね(笑)。歴然としたレベルの違い打ちのめされることも何度もありました。いま振り返ると、そのことが、成長の糧になるいい経験だったんだと思います。

----そうだったんですね。本日は、いろいろとお話をおうかがいできて楽しかったです。『ありか』の公演に期待しております。お忙しいところありがとうございました。

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島地保武×環ROY 新作公演「ありか」

●愛知県芸術劇場小ホール(愛知芸術文化センター地下1階)
●2016年4月22日(金)20:00、4月23日(土)15:00、4月24日(日)15:00
※各回30分前開場
※23日 公演後出演者によるアフタートークあり
※3歳以下入場不可
※車椅子でご来場の方は事前にお問い合わせください。
●一般 3,000円/学生席(25歳以下) 1,000円
※全席自由・整理番号付き
※10名以上の場合は団体割引あり。詳しくはお問い合わせください。

●主催・お問い合わせ
主催・企画・制作:愛知県芸術劇場
http://www.aac.pref.aichi.jp
公演特設サイト http://shimaji.jp/arika/